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第十六話
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今リリアナって言った?
「あっ……ごめん、俺、そういうつもりじゃなくて……」
ロイが慌てたように口早に言う。
反対に私は頭がさぁーっと白くなる感覚に襲われた。
「大丈夫。気にしないで……」
「そ、そう?」
「えぇ……」
私たちはぎこちなく笑い合った。
「そろそろ帰ろうか」
彼が私に提案してきた。
「そうね」
断る理由もない私は小さく返事をする。
家に帰る道中、私たちは会話をすることはなかった……。
*
家に帰ると、早々に夕食を済ませ、私たちは眠りについた。
隣で眠るロイが今日はとても遠くに感じる。
目を閉じてもなかなか眠れず、ベッドの中で何度も寝返りを打つ。
そして気が付いたら朝になっていた……。
「おはよう、オルガ」
「……おはよう」
「昨日の夜はよく眠れなかったのかい?」
「え、えぇ……ちょっと色々考えてしまって……」
「そっか……」
それから朝食を食べ終えると、ロイは仕事に向かった。
その後、私は部屋に戻り、服を着替える。
今日は何を着て行こうかな。
クローゼットの前で服を選ぶ。
と、その時ふとアルスフィーヌから貰った魔法薬のことを思い出した。
そういえば昨日は飲んでいなかった、そのせいもあって眠りづらかったのかもしれない……。
「せっかくくれたのに、もったいないよね……」
キッチンへ行くと、魔法の小瓶を開け、中身を口に含む。
すると甘い味が口に広がった。
「美味しい……うん、まだ飲めそうね」
もっと飲みたい……でも、夜まで我慢しなきゃね。
私はそれに蓋をして、また元の場所にしまった……。
それから数日、ロイは家に帰ってこなかった。
仕事が繁忙期に入り、彼は忙しかったのだ。
(寂しいな……)
「はぁ……会いたい」
つい声に出てしまって自分で驚く。
「いけない……こんなことを思ってしまっては……ロイだって忙しいのに……」
そんな風に自分に言い聞かせてみるものの、やはり彼のことが恋しく思ってしまう……。
私は気分転換も兼ねて外に出ることにした。
「うぅ……少し肌寒いかも」
季節は秋へと変わっていた。
(早く暖かい服装にしておかないと風邪を引いてしまうわね)
そんなことを考えながら歩いていると、前方から来た人と肩がぶつかってしまった。
「あっ、すみません!」
「いえ、こちらこそ……」
謝られたため、私も頭を下げて謝罪する。
「っ!!」
相手を見た瞬間、私は思わず息を呑んだ。
「ロイ……?」
そこには仕事をしているはずのロイの姿があったのだ。
その後ろに綺麗な女性を連れて……。
「あっ……ごめん、俺、そういうつもりじゃなくて……」
ロイが慌てたように口早に言う。
反対に私は頭がさぁーっと白くなる感覚に襲われた。
「大丈夫。気にしないで……」
「そ、そう?」
「えぇ……」
私たちはぎこちなく笑い合った。
「そろそろ帰ろうか」
彼が私に提案してきた。
「そうね」
断る理由もない私は小さく返事をする。
家に帰る道中、私たちは会話をすることはなかった……。
*
家に帰ると、早々に夕食を済ませ、私たちは眠りについた。
隣で眠るロイが今日はとても遠くに感じる。
目を閉じてもなかなか眠れず、ベッドの中で何度も寝返りを打つ。
そして気が付いたら朝になっていた……。
「おはよう、オルガ」
「……おはよう」
「昨日の夜はよく眠れなかったのかい?」
「え、えぇ……ちょっと色々考えてしまって……」
「そっか……」
それから朝食を食べ終えると、ロイは仕事に向かった。
その後、私は部屋に戻り、服を着替える。
今日は何を着て行こうかな。
クローゼットの前で服を選ぶ。
と、その時ふとアルスフィーヌから貰った魔法薬のことを思い出した。
そういえば昨日は飲んでいなかった、そのせいもあって眠りづらかったのかもしれない……。
「せっかくくれたのに、もったいないよね……」
キッチンへ行くと、魔法の小瓶を開け、中身を口に含む。
すると甘い味が口に広がった。
「美味しい……うん、まだ飲めそうね」
もっと飲みたい……でも、夜まで我慢しなきゃね。
私はそれに蓋をして、また元の場所にしまった……。
それから数日、ロイは家に帰ってこなかった。
仕事が繁忙期に入り、彼は忙しかったのだ。
(寂しいな……)
「はぁ……会いたい」
つい声に出てしまって自分で驚く。
「いけない……こんなことを思ってしまっては……ロイだって忙しいのに……」
そんな風に自分に言い聞かせてみるものの、やはり彼のことが恋しく思ってしまう……。
私は気分転換も兼ねて外に出ることにした。
「うぅ……少し肌寒いかも」
季節は秋へと変わっていた。
(早く暖かい服装にしておかないと風邪を引いてしまうわね)
そんなことを考えながら歩いていると、前方から来た人と肩がぶつかってしまった。
「あっ、すみません!」
「いえ、こちらこそ……」
謝られたため、私も頭を下げて謝罪する。
「っ!!」
相手を見た瞬間、私は思わず息を呑んだ。
「ロイ……?」
そこには仕事をしているはずのロイの姿があったのだ。
その後ろに綺麗な女性を連れて……。
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