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第十二話
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実家の屋敷に帰ると、私は父の書斎の扉を叩いた。
「入りなさい」
中に入ると、父は書類仕事をしていた。
「父上、少しよろしいでしょうか?」
「どうした?」
「本日の舞踏会ですが……急遽中止となりました」
「ああ、聞いている」
「それで……あの……アルスフィーヌは一体何者なのですか?そもそもなぜ彼女のような子供が舞踏会に?それにアルスフィーヌったら自分の魔法で舞踏会を中止にしたとか言って……」
「ま、待ってくれ!」
質問の嵐に父が手を上げる。
「えっと……何から説明したものか……」
父はそう言うと、考えるように顎をさすった。
「まずあの子はあれでいてかなり優秀な魔法使いだ。彼女が作った魔法道具が数々の賞を受賞しているし、その功績が称えられて舞踏会に招待されたのだ。まあ推薦したのは私だが……」
「そうだったのですか……」
もしかしたら私の想像よりもよっぽど凄い人なんじゃない?
「推薦した手前面倒を見ることになったのだが、彼女はまだ子供だ。こんなおじさんなんかより君の方がいいだろう」
父の悲しそうな目に思わず笑いそうになる。
「……というわけだから。これからも仲良くやってくれ。もちろんロイとの生活もあるだろうから出来る範囲で構わないが」
「はい、頑張ります」
なんかすごい爆弾を抱えてしまったような……。
私は父の部屋を出ると、大きなため息をついた。
*
後日、私がアルスフィーヌの部屋を訪れると、彼女は本を読んでいた。
「こんにちわ、アルスフィーヌ」
「……」
アルスフィーヌは本に夢中で私に気づかない。
「……ねえ、アルスフィーヌ?」
「……」
「アルスフィーヌったら」
「……ん?」
ようやく気づいたみたい。
「ごめん、気づいてなかった。なに?お母さん」
「お母さんじゃないわよ」
アルスフィーヌが楽しそうにケラケラ笑う。
「それより、何を読んでいるの?」
「うーん、魔法大辞典第三巻・古代魔法の解除方法と魔法陣の生成……だよ」
「……は?」
「この本によるとね、『この世に存在するあらゆるものは魔力によって成り立っている』らしいよ」
「へぇ~」
なんだか難しそう……。
……あっ、そういえば一つ気になることがあったわ。
「ねぇ、アルスフィーヌ」
「なに?」
「あなたって今何歳?」
アルスフィーヌはまだ小さい子供だ。
それなのにさっきの本みたいな高度な古代語まで読めて、しかも大人顔負けの知識を持っている。
とてもじゃないけど普通とは言えない。
「私?私は十一歳だけど?」
「えっ?本当に?」
「そんなに驚くことかなぁ?」
「え、だって……」
やはりそのくらいだったのか……。
「それより、オルガ。これみてよ!」
アルスフィーヌはそう言うと、机の上に置かれていた魔法の瓶を私に見せた。
「これ私が作ったんだよ!」
「入りなさい」
中に入ると、父は書類仕事をしていた。
「父上、少しよろしいでしょうか?」
「どうした?」
「本日の舞踏会ですが……急遽中止となりました」
「ああ、聞いている」
「それで……あの……アルスフィーヌは一体何者なのですか?そもそもなぜ彼女のような子供が舞踏会に?それにアルスフィーヌったら自分の魔法で舞踏会を中止にしたとか言って……」
「ま、待ってくれ!」
質問の嵐に父が手を上げる。
「えっと……何から説明したものか……」
父はそう言うと、考えるように顎をさすった。
「まずあの子はあれでいてかなり優秀な魔法使いだ。彼女が作った魔法道具が数々の賞を受賞しているし、その功績が称えられて舞踏会に招待されたのだ。まあ推薦したのは私だが……」
「そうだったのですか……」
もしかしたら私の想像よりもよっぽど凄い人なんじゃない?
「推薦した手前面倒を見ることになったのだが、彼女はまだ子供だ。こんなおじさんなんかより君の方がいいだろう」
父の悲しそうな目に思わず笑いそうになる。
「……というわけだから。これからも仲良くやってくれ。もちろんロイとの生活もあるだろうから出来る範囲で構わないが」
「はい、頑張ります」
なんかすごい爆弾を抱えてしまったような……。
私は父の部屋を出ると、大きなため息をついた。
*
後日、私がアルスフィーヌの部屋を訪れると、彼女は本を読んでいた。
「こんにちわ、アルスフィーヌ」
「……」
アルスフィーヌは本に夢中で私に気づかない。
「……ねえ、アルスフィーヌ?」
「……」
「アルスフィーヌったら」
「……ん?」
ようやく気づいたみたい。
「ごめん、気づいてなかった。なに?お母さん」
「お母さんじゃないわよ」
アルスフィーヌが楽しそうにケラケラ笑う。
「それより、何を読んでいるの?」
「うーん、魔法大辞典第三巻・古代魔法の解除方法と魔法陣の生成……だよ」
「……は?」
「この本によるとね、『この世に存在するあらゆるものは魔力によって成り立っている』らしいよ」
「へぇ~」
なんだか難しそう……。
……あっ、そういえば一つ気になることがあったわ。
「ねぇ、アルスフィーヌ」
「なに?」
「あなたって今何歳?」
アルスフィーヌはまだ小さい子供だ。
それなのにさっきの本みたいな高度な古代語まで読めて、しかも大人顔負けの知識を持っている。
とてもじゃないけど普通とは言えない。
「私?私は十一歳だけど?」
「えっ?本当に?」
「そんなに驚くことかなぁ?」
「え、だって……」
やはりそのくらいだったのか……。
「それより、オルガ。これみてよ!」
アルスフィーヌはそう言うと、机の上に置かれていた魔法の瓶を私に見せた。
「これ私が作ったんだよ!」
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