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第十二話

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実家の屋敷に帰ると、私は父の書斎の扉を叩いた。

「入りなさい」

中に入ると、父は書類仕事をしていた。

「父上、少しよろしいでしょうか?」

「どうした?」

「本日の舞踏会ですが……急遽中止となりました」

「ああ、聞いている」

「それで……あの……アルスフィーヌは一体何者なのですか?そもそもなぜ彼女のような子供が舞踏会に?それにアルスフィーヌったら自分の魔法で舞踏会を中止にしたとか言って……」

「ま、待ってくれ!」

質問の嵐に父が手を上げる。

「えっと……何から説明したものか……」

父はそう言うと、考えるように顎をさすった。

「まずあの子はあれでいてかなり優秀な魔法使いだ。彼女が作った魔法道具が数々の賞を受賞しているし、その功績が称えられて舞踏会に招待されたのだ。まあ推薦したのは私だが……」

「そうだったのですか……」

もしかしたら私の想像よりもよっぽど凄い人なんじゃない?

「推薦した手前面倒を見ることになったのだが、彼女はまだ子供だ。こんなおじさんなんかより君の方がいいだろう」

父の悲しそうな目に思わず笑いそうになる。

「……というわけだから。これからも仲良くやってくれ。もちろんロイとの生活もあるだろうから出来る範囲で構わないが」

「はい、頑張ります」

なんかすごい爆弾を抱えてしまったような……。
私は父の部屋を出ると、大きなため息をついた。



後日、私がアルスフィーヌの部屋を訪れると、彼女は本を読んでいた。

「こんにちわ、アルスフィーヌ」
「……」

アルスフィーヌは本に夢中で私に気づかない。

「……ねえ、アルスフィーヌ?」
「……」

「アルスフィーヌったら」
「……ん?」

ようやく気づいたみたい。

「ごめん、気づいてなかった。なに?お母さん」

「お母さんじゃないわよ」

アルスフィーヌが楽しそうにケラケラ笑う。

「それより、何を読んでいるの?」

「うーん、魔法大辞典第三巻・古代魔法の解除方法と魔法陣の生成……だよ」

「……は?」

「この本によるとね、『この世に存在するあらゆるものは魔力によって成り立っている』らしいよ」

「へぇ~」

なんだか難しそう……。
……あっ、そういえば一つ気になることがあったわ。

「ねぇ、アルスフィーヌ」

「なに?」

「あなたって今何歳?」

アルスフィーヌはまだ小さい子供だ。
それなのにさっきの本みたいな高度な古代語まで読めて、しかも大人顔負けの知識を持っている。
とてもじゃないけど普通とは言えない。

「私?私は十一歳だけど?」

「えっ?本当に?」

「そんなに驚くことかなぁ?」

「え、だって……」

やはりそのくらいだったのか……。

「それより、オルガ。これみてよ!」

アルスフィーヌはそう言うと、机の上に置かれていた魔法の瓶を私に見せた。

「これ私が作ったんだよ!」
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