上 下
8 / 19

第八話

しおりを挟む
馬車に乗ってから数分後。 
宝石店の前に馬車がキィィっと止まると、私たちは馬車をおりた。 

「さて、いこうか」 

「うん」 

私は彼と一緒に店の中に入ると、店員に案内され奥へと進んだ。 
道中大きなショーケースの中に並べられている数々の宝石を見て感嘆のため息を漏らす。 

「すごい……綺麗……!」 

「気に入ったものはあったかい?」 

「ええ、どれも素敵で迷っちゃうわ……」 

そう言って私はキョロキョロと店内を見回す。 
すると一つのネックレスが目に入った。 
そのネックレスはダイヤがあしらわれており、シンプルだがとても美しいデザインをしていた。 

「これ、いいかも……!これにするわ!」 

「お、決まったかい?どれどれ」 

彼が横から覗き込んでくる。 

「ほう、なかなか良いものを選べたようだね。君に似合うと思うよ」 

「本当!?」 

彼に褒められ、嬉しくてついはしゃいでしまう。 

「ふふ、本当に君は可愛いなぁ……よし、買ってあげよう」 

「ありがとう!」 

「……では、こちらへどうぞ」 

店員に連れられ会計を済ますと出口へと向かう。 

「じゃあ、次は服屋にでも行くかい?」 

「ええ、いいわね」 

と楽し気に話していたその時。 

「あれ?ジェームズぅ?」 

後ろから声が聞こえ振り向くと、そこには綺麗な服の可愛らしい女性が立っていた。 

「ソニア!?」 

ジェームズは驚いたようにそう言うと、彼女に駆け寄っていく。 

「久しぶりだなソニア!元気してたか?」 

「うん!ジェームズこそ……すごくカッコよくなったね!」 

「はは、ありがとう!」 

親しげに会話を弾ませる二人。 

「お知り合い?」 

私が尋ねると、ジェームズは一瞬困った顔をした。 

「ああ、彼女は俺の幼馴染なんだ」 

「そうなのね、初めまして。私は妻のエマです」 

「あ、えっとぉ、初めまして……私はソニアっていいます。よろしくお願いしまーす」 

若干つまらなそうに挨拶をする彼女だったが、先ほどの会話を見るに人懐っこそうで明るい感じの子だ。 

「それで、今日はどうしてここに?」 

ジェームズが尋ねると、ソニアの顔がばっと明るくなる。 

「どうしてだと思う?」 

いたずらっ子のように笑う彼女に、ジェームズは笑顔を浮かべていた。 

「もしかしてデート?」 

「ううん、不正解!正解はお買い物でした!ジェームズって昔からクイズ出来ないよねぇ!」 

そう言いながら、ソニアはジェームズの腕にしがみついた。 

「え?あ、いや……」 

「……だめ?」 

「……いや、別に俺は……」 

「やったぁ!」 

「ダメです!!!」 

私は二人を無理やりに引き離す。 
そしてジェームズをキッと睨みつけると、腕を引いた。 

「行くわよ、ジェームズ!」 

「あ、ああ……じゃあまたなソニア!」 

そしてそのまま不気味に笑うソニアに背を向け、足早に店を出たのだった…… 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

これでお仕舞い~婚約者に捨てられたので、最後のお片付けは自分でしていきます~

ゆきみ山椒
恋愛
婚約者である王子からなされた、一方的な婚約破棄宣言。 それを聞いた侯爵令嬢は、すべてを受け入れる。 戸惑う王子を置いて部屋を辞した彼女は、その足で、王宮に与えられた自室へ向かう。 たくさんの思い出が詰まったものたちを自分の手で「仕舞う」ために――。 ※この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

伯爵令嬢の受難~当馬も悪役令嬢の友人も辞めて好きに生きることにします!

ユウ
恋愛
生前気苦労が絶えず息をつく暇もなかった。 侯爵令嬢を親友に持ち、婚約者は別の女性を見ていた。 所詮は政略結婚だと割り切っていたが、とある少女の介入で更に生活が乱された。 聡明で貞節な王太子殿下が… 「君のとの婚約を破棄する」 とんでもない宣言をした。 何でも平民の少女と恋に落ちたとか。 親友は悪役令嬢と呼ばれるようになり逆に王家を糾弾し婚約者は親友と駆け落ちし国は振り回され。 その火の粉を被ったのは中位貴族達。 私は過労で倒れ18歳でこの世を去ったと思いきや。 前々前世の記憶まで思い出してしまうのだった。 気づくと運命の日の前に逆戻っていた。 「よし、逃げよう」 決意を固めた私は友人と婚約者から離れる事を決意し婚約を解消した後に国を出ようと決意。 軽い人間不信になった私はペット一緒にこっそり逃亡計画を立てていた。 …はずがとある少年に声をかけられる。

愛することはないと言われて始まったのですから、どうか最後まで愛さないままでいてください。

田太 優
恋愛
「最初に言っておく。俺はお前を愛するつもりはない。だが婚約を解消する意思もない。せいぜい問題を起こすなよ」 それが婚約者から伝えられたことだった。 最初から冷めた関係で始まり、結婚してもそれは同じだった。 子供ができても無関心。 だから私は子供のために生きると決意した。 今になって心を入れ替えられても困るので、愛さないままでいてほしい。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

溺愛されて育った夫が幼馴染と不倫してるのが分かり愛情がなくなる。さらに相手は妊娠したらしい。

window
恋愛
大恋愛の末に結婚したフレディ王太子殿下とジェシカ公爵令嬢だったがフレディ殿下が幼馴染のマリア伯爵令嬢と不倫をしました。結婚1年目で子供はまだいない。 夫婦の愛をつないできた絆には亀裂が生じるがお互いの両親の説得もあり離婚を思いとどまったジェシカ。しかし元の仲の良い夫婦に戻ることはできないと確信している。 そんな時相手のマリア令嬢が妊娠したことが分かり頭を悩ませていた。

社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ~【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 俺は社畜だ。  ふと気が付くと見知らぬ場所に立っていた。  諸々の情報を整理するに、ここはどうやら異世界のようである。  『ジョブ設定』や『ミッション』という概念があるあたり、俺がかつてやり込んだ『ソード&マジック・クロニクル』というVRMMOに酷似したシステムを持つ異世界のようだ。  俺に初期スキルとして与えられた『ジョブ設定』は、相当に便利そうだ。  このスキルを使えば可愛い女の子たちを強化することができる。  俺だけの最強ハーレムパーティを築くことも夢ではない。  え?  ああ、『ミッション』の件?  何か『30年後の世界滅亡を回避せよ』とか書いてあるな。  まだまだ先のことだし、実感が湧かない。  ハーレム作戦のついでに、ほどほどに取り組んでいくよ。  ……むっ!?  あれは……。  馬車がゴブリンの群れに追われている。  さっそく助けてやることにしよう。  美少女が乗っている気配も感じるしな!  俺を止めようとしてもムダだぜ?  最強ハーレムを築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!  ※主人公陣営に死者や離反者は出ません。  ※主人公の精神的挫折はありません。

虐げられてきた身代わり神子は、蛇神様に護られ愛を知る【短編2日間連載】

カミヤルイ
BL
数霊術が盛んな国カスパダーナ。この国では誕生日の数字が個人の運命を左右する。 しかし、亡くなった娼婦を母に持つラプシ(名前の意味は「捨て子」)は生まれた日が不明で、義理の兄であるアルフレードの身代わりに、カスパダーナを守護する白蛇神の神子(生贄)として育てられ、虐げられて生きてきた。 そして生贄になる日、白蛇神の湖上の神殿に行ったラプシは人型に変化した白蛇神と対話し、思わぬ事実と誕生日プレゼントを授かることになる。 *BLoveさんの人外コンテストに参加していた作品です

処理中です...