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第十三話

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「貴様は……ワグナー……どうしてここに……」 

ロイがワグナーを睨みつける。 

「手紙で教えてくれた者がいてね……」 

そう言うとワグナーがシーナをチラッと見る。 

「君がシーナかい?」 

「はい……本当にありがとうございます……来てくれて……うぅ……」 

顔を腫らしながら涙を流す。 
どうやら彼に手紙を送ったのはシーナみたいだ。 

「ロイ……君は日頃から一部の使用人相手に暴力行為をはたらいていたそうだね。そしてそれはレイナと婚約した後も続いていた……そうだろ?」 

「くくっ……正解だよ、このストーカー野郎。海を越えて来てもらった所悪いが、それを知られた以上どうなるかは分かっているよな?」 

ロイはそこまで言い切ると、ワグナーに向かって突進した。 
しかしワグナーはそれを華麗に避けると、ロイの背中に拳をめり込ませた。 

「ぐうっ……」 

「まだまだ……」 

次いでロイの腹に思い切り膝を突き出すと、最後に顔面を勢いよくパンチした。 

「うぅぅぁぁ!!!」 

ロイの体が吹っ飛び、壁に叩きつけられる。 
そしてそのまま気絶してしまったように動かなくなった。 

「ふぅ……こんなもんかな……」 

一瞬の出来事に呆気に取られていると、一連の騒動で目を覚ましたのか、他の使用人たちが部屋の前に集まり始めていた。 

「大丈夫ですかシーナ!?」 
「この男は誰ですか?」 
「ロイ様……これは一体……」 

ワグナーは騒ぎ出す使用人たちを手を制すと、事の次第を丁寧に説明した。 

その後、ワグナーが呼んだ警察が屋敷へ到着しロイは連れていかれた。 
最後まで言葉にならない何かを叫んでいたが、その姿が見えなくなるころには声も聞こえなくなっていた。 

「レイナ様、私がもっと早くに行動していれば……こんなことには……」 

シーナはそう言って涙を流していたが、私はそんな彼女をそっと抱きしめた。 

「私の方こそごめんね……気づかなくて……ごめんね」 

シーナはロイの暴力に怯え、屋敷を一度は抜け出したらしい。 
しかし私の身を案じ、一緒に逃げるため、またここに戻ってきてくれたのだ。 
その際、私とロイの会話で耳にしたワグナーという男性に助けを求めたという。 

その後、私は屋敷を離れ、実家へ戻ることになった。 

ワグナーに連れられ家に帰ると、事情を知った両親が温かく迎えてくれた。 
両親はワグナーに何度も頭を下げ、泣いて謝っていた。 
そんな二人にワグナーは微妙な笑みを返すだけだった。 

それから数日が経ち、心の傷が癒え始めた頃。 

ワグナーが私の家を訪れた。 
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