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第六話
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それから二週間後。
まるで私の願いが叶ったかのように、ロールスは再び私の元を訪れた。
「やあエリザベス、会いに来たよ」
そう言って優しい笑顔を向けるロールス。
ギルバートには悪いが、私はこの時はっきりと彼に恋心を抱いてしまっていた。
心臓が脈打ち、緊張で彼の目を見られなくなる。
「ロールス……あ、そういえば仕事はいいの?」
「今日と明日は休みなんだ。だから今度は時間を気にすることなく君と話せるね」
「そうなんだ……良かった」
幸か不幸かこの日も父は仕事で家にいなかった。
ロールスを部屋に入れると、自然と話題は私の婚約のことになった。
「そろそろ結婚式なんだっけ?」
「ええ、残念ながらね」
「……そっか……もう、変えられないんだよな?」
「うん……」
ロールスの問いに悲しそうに私は頷く。
もう何かを変えることは出来ないだろう、私はこのままギルバートと結婚をするのだ。
分かってはいたものの、気づいたら私の両目からは静かに涙が流れていた。
「あれ?どうして私……え?」
自分でも止めることが出来ないその涙に困惑する私。
そんな私の肩にロールスは優しく手を置いた。
「エリザベス、もし君に婚約者などいなければ……僕が奪い去っていたのに……」
「え?」
私がロールスの顔を見るも、彼は恥ずかしそうに目を逸らした。
しかし彼の頬は赤らんでおり、緊張の色が見える。
私が口を開こうとするも、先に言葉を発したのはロールスだった。
「でも……君の婚約者のギルバートはアイリッシュのことが好きなんだろ?ちゃんと話し合えば婚約も解消することが出来るんじゃないか?」
「そ、そんな……無理よ……」
「でもやってみなきゃ分からないだろ?きっと彼も心のどこかでアイリッシュと一緒になりたいと思っているはずさ。理想は一致しているんだ、何とかなるさ」
今度はキラキラとした目で私を見つめるロールス。
私は黙ってコクリと頷いた。
「よし決まりだね。それじゃあ早速彼の家に行こう!」
「え?今から?」
「ああ、善は急げさ。大丈夫だよ、僕もついていくから」
結局彼に促されるまま、私はロールスと共にギルバートの屋敷を訪れた。
突然の訪問だったが若い使用人が出迎えてくれる。
「エリザベス様とそのお連れ様、ようこそお越しくださいました。ギルバート様は自室におられると思います。案内致しますか?」
「いや大丈夫よ、場所は分かるから。ありがとね」
そう言うと使用人は丁寧にお辞儀をしてその場を去っていく。
それを見届けると、私とロールスは早速ギルバートの自室へと向かった。
「広い屋敷だね……」
「うん、そうね……」
婚約してからこの屋敷へは度々訪れていた。
そして毎回のようにギルバートに罵られていた。
それだからか彼の自室へ向かう時はいつも胸が張り裂けそうな思いになる。
しかし今回はロールスが隣にいてくれる。
私は勇気を振り絞ると、歩みを進めた。
程なくしてギルバートの部屋の前に到着する。
中からは何かの物音がしているようで、人がいるのは明らかだった。
私は深呼吸をした後、扉を優しくコンコンとノックした。
そして扉をゆっくりと開けた。
「……え?」
しかし目の前に広がる光景を見て、思わず絶句してしまう。
「好きぃ!大好きよギルバート!もっと!もっとぉ!!」
「俺も大好きだ!もっと気持ちよくしてやるからな!覚悟しろよ!!」
そこには、ベッドの上で激しく乱れる、ギルバートと見知らぬ女の姿があったのだ……
まるで私の願いが叶ったかのように、ロールスは再び私の元を訪れた。
「やあエリザベス、会いに来たよ」
そう言って優しい笑顔を向けるロールス。
ギルバートには悪いが、私はこの時はっきりと彼に恋心を抱いてしまっていた。
心臓が脈打ち、緊張で彼の目を見られなくなる。
「ロールス……あ、そういえば仕事はいいの?」
「今日と明日は休みなんだ。だから今度は時間を気にすることなく君と話せるね」
「そうなんだ……良かった」
幸か不幸かこの日も父は仕事で家にいなかった。
ロールスを部屋に入れると、自然と話題は私の婚約のことになった。
「そろそろ結婚式なんだっけ?」
「ええ、残念ながらね」
「……そっか……もう、変えられないんだよな?」
「うん……」
ロールスの問いに悲しそうに私は頷く。
もう何かを変えることは出来ないだろう、私はこのままギルバートと結婚をするのだ。
分かってはいたものの、気づいたら私の両目からは静かに涙が流れていた。
「あれ?どうして私……え?」
自分でも止めることが出来ないその涙に困惑する私。
そんな私の肩にロールスは優しく手を置いた。
「エリザベス、もし君に婚約者などいなければ……僕が奪い去っていたのに……」
「え?」
私がロールスの顔を見るも、彼は恥ずかしそうに目を逸らした。
しかし彼の頬は赤らんでおり、緊張の色が見える。
私が口を開こうとするも、先に言葉を発したのはロールスだった。
「でも……君の婚約者のギルバートはアイリッシュのことが好きなんだろ?ちゃんと話し合えば婚約も解消することが出来るんじゃないか?」
「そ、そんな……無理よ……」
「でもやってみなきゃ分からないだろ?きっと彼も心のどこかでアイリッシュと一緒になりたいと思っているはずさ。理想は一致しているんだ、何とかなるさ」
今度はキラキラとした目で私を見つめるロールス。
私は黙ってコクリと頷いた。
「よし決まりだね。それじゃあ早速彼の家に行こう!」
「え?今から?」
「ああ、善は急げさ。大丈夫だよ、僕もついていくから」
結局彼に促されるまま、私はロールスと共にギルバートの屋敷を訪れた。
突然の訪問だったが若い使用人が出迎えてくれる。
「エリザベス様とそのお連れ様、ようこそお越しくださいました。ギルバート様は自室におられると思います。案内致しますか?」
「いや大丈夫よ、場所は分かるから。ありがとね」
そう言うと使用人は丁寧にお辞儀をしてその場を去っていく。
それを見届けると、私とロールスは早速ギルバートの自室へと向かった。
「広い屋敷だね……」
「うん、そうね……」
婚約してからこの屋敷へは度々訪れていた。
そして毎回のようにギルバートに罵られていた。
それだからか彼の自室へ向かう時はいつも胸が張り裂けそうな思いになる。
しかし今回はロールスが隣にいてくれる。
私は勇気を振り絞ると、歩みを進めた。
程なくしてギルバートの部屋の前に到着する。
中からは何かの物音がしているようで、人がいるのは明らかだった。
私は深呼吸をした後、扉を優しくコンコンとノックした。
そして扉をゆっくりと開けた。
「……え?」
しかし目の前に広がる光景を見て、思わず絶句してしまう。
「好きぃ!大好きよギルバート!もっと!もっとぉ!!」
「俺も大好きだ!もっと気持ちよくしてやるからな!覚悟しろよ!!」
そこには、ベッドの上で激しく乱れる、ギルバートと見知らぬ女の姿があったのだ……
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