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第十三話

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「……そう」

私は呟くと体を起こした。
服についた埃を手で払いながら母を睨みつける。

「な、なんで……なんであんたが動けるのよ!!毒を飲んだんじゃないの!?」

「……まだ気づかないんですか?」

立ち上がり母と目線を合わせる。
彼女の目は困惑と恐怖の色をはらんでいた。

「本当に気づかないんですか?」

私はもう一度同じ言葉を発した。
怒りで声が勢いを増していた。

「な……ま、まさか……ベルが……でも……」

母は独り言のようにブツブツと呟き始めた。
焦ったように頭をかきむしり、目を泳がせている。

「あの娘は私の……私を裏切るなんて……いや、でも……」

「なんだ。気づいてるじゃない」

私は冷徹な声でそう言うと、深く深呼吸をした。

さて、何から言おうか。
まずは真実を伝えよう……。

そして少しの間の後、口を再び開いた。

「ベルは全部正直に話してくれました。あなたが私に睡眠薬を盛ったこと、そして毒を盛ろうとしていたことも……」

「嘘よ!!」

「本当です。しかしベルは踏みとどまってくれました。それに謝ってくれました。母を止められなくて本当にごめんなさい……と」

「嘘よ嘘よ嘘よ!」

「嘘じゃありません!!」

私は子供を叱る母親のように声を荒げた。
母の体がびくっと大きく震えた。

「ベルが話してくれたおかげでこうして一芝居打つことができました。毒を飲んだふりをすることができました。そして……あなたの自供も聞くことができました」

家族との会話とは思えないような淡々とした声で私は話を続けた。

「お母さま。もう終わりなんです」

「終わり……はぁ?」

母がイラついた声を私に向ける。

「終わり……なわけないでしょ。終わるのはあなたのはずでしょ……ベルは幸せになるの。私がベルを幸せにするの……」

「お母さま……」

「第一あなたのことを誰が信じるの?権力もないガキの言うことを誰が信じるっていうのぉ?ええぇ!!」

「はぁ……」

私はため息をついた。
 
「そう言うだろうと思っていました……」
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