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第七話

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「お母さま、お呼びでしょうか?」

ベルが部屋の前でそう言うと、中から母の声が聞こえてきた。
 
「ええ、入って頂戴」

「し、失礼します」

緊張した面持ちでベルが扉を開けると、目の前に小瓶を手にした母の姿があった。
瓶の中には白い錠剤が半分ほど入っている。
 
「ベル、扉をちゃんと閉めて。鍵もね」

「はい……」

後ろを振り返り、ベルが扉を閉めた。
鍵の回る音が静かな部屋に響き渡る。

「さてと……」

母はハイエナのような鋭い目つきでベルを睨みつけた。

「ベル。ミルがどうやら感づいているみたいなの……それに睡眠薬もだんだん効果が薄れてきてる」

母は手に持っていた小瓶を机の上に置いた。
ベルがそちらに目線を映すと、そこには大量の瓶や粉薬が置かれていた。
一瞬寒気がして、彼女は体を震わせた。

「これもだめ……あぁこの薬もだめね……」

母は机上の薬を、宝物にでも触れるかのような手つきで漁っていた。

「これなんかどうかしら……ほらこれ!」

そして液体の入った瓶を手に取ると、ベルにそれを突きつけた。

「あの……これは何ですか?」

恐る恐るベルが聞くと、母は笑顔で答えた。

「毒よ」

「え?ど……く?」

「ええ、ど・く。飲んだら死んじゃうかもね」

「は?え?え……」

ベルは恐怖と困惑の色を浮かべた。
自然と体が一歩下がった。

「これからミルはきっと私を注目するはず。私が入れる紅茶や勧めたお菓子をね……」

「…………」

「だからここからはあなたがやらなければいけない。分かるわよね、ベル」

「あ……あ……」

「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。きっと何とかなるわ。ねぇ?」

そう言うと母はベルの手に毒の瓶を握らせた。

「じゃあ頼んだわよ、飲み物に数滴垂らすだけでいいから……」

「お、お母さま……私は……」

「ベル。これも幸せを掴むためなの。やらなければいけないことなの」

母はベルの横を通り過ぎ、部屋の扉を開けた。
  
「分かったわね。もう帰っていいわよ」

「え……」

「ほら帰って、ほら」

母がベルの体を無理やりに外に追い出す。

バタン。

扉が閉まった時にはベルは部屋の外に立っていた。

そして、その震える手には毒の瓶が握られていた……
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