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第六話

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その日から私は居眠りをすることが多くなった。
初めは体調不良や寝不足が原因かと思っていたのだが、いつも決まって外出前に眠くなるので、妙な違和感を感じてはいた。

トリル様との初めての顔合わせも、睡魔に襲われながら行った。
母によると、帰りの馬車では、私は死んだように眠っていたらしい。

そしてそんな日々を過ごすうち、私はあることに気が付いた。

眠くなる前には決まって何かを飲んだり食べたりしていたのだ。
それも母に勧められたものを……

まさか母が!?

「お母さま、少し聞きたいことがあるのですが……」

「なにかしら?」

思い切って私は母に聞いてみることにした。
もし母が食べ物に何か仕込んでいるとしたら、牽制くらいにはなるかもしれない。
 
「えーと……いつも出してくれる紅茶なんですけど、味変えましたか?」

私が遠回しに質問をすると、母は少し驚いた顔をした。

「え?紅茶?……ずっと同じのを使ってるけど……」

「そうですか、なら……」

私はそれから他の食べ物、飲み物についても何回か同じ質問をしたが、母の答えは決まって「昔から同じものを使っている」だった。
 
「分かりましたお母さま、お時間とらせてすみませんでした」

「いえ、いいのよ」

そう言うと母は足早に私の元を去っていった。

「ふぅ……」

これで私が何かの違和感を感じ取っているのが伝わったよね。
もし母が睡眠薬か何かを使っているのだとしたら、ここから何か動きがあるはずだわ。

まあでも、まだ母が原因だと決まったわけじゃないけど……

そんなことを思いながら、私は頭を整理するようにため息をついた。
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