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第三話
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そして時は過ぎ、待ちに待ったトリル様との顔合わせの日がやってきた。
「ミル、緊張するでしょう。紅茶でも入れるわね」
「え?……ありがとうございます」
妹優先の母が私に気を遣うなんて。
珍しいこともあるものだわ。
きっとこの前のホワイト公爵との一件で少しは反省したのね。
そんなことを思いながら、私は手渡された紅茶をゆっくりと飲み干した。
少しだけ苦いような……。
まあ勘違いよね。
「美味しい?」
母がいつになく綺麗な笑顔を私に向けた。
それが何だか嬉しくなって、私も笑顔を返した。
「はい、美味しいです」
「なら良かった。時間になったら呼ぶからそれまでは部屋でゆっくりしててね」
「はい」
優しい母に疑問は感じたものの、私には素直にそれが嬉しかった。
やっぱり私は母の娘なのだ。
久しぶりに家族の愛というものを感じた気がした。
部屋に戻り、ベッドに腰かけながらそんなことを思っていると、ふいに欠伸が出た。
「ふぁ……」
おかしいわね。
夜更かしはしていないはずなのに、とても眠い。
緊張かしら?
「うーん……」
瞼がだんだん重くなってくる。
頭もぼーっとしてきた。
どうしよう?
少しだけ寝ようかしら。
きっとお母さまが起こしてくれるわよね。
私は力なく頷くと、ベッドに横になった。
朦朧とする意識の中で母と妹の声が聞こえてきた。
どうやら部屋の前で何かを話しているみたいだ。
しかし、私はそれに耳を傾けることもなく、力尽きたように眠ってしまった。
「ミル、緊張するでしょう。紅茶でも入れるわね」
「え?……ありがとうございます」
妹優先の母が私に気を遣うなんて。
珍しいこともあるものだわ。
きっとこの前のホワイト公爵との一件で少しは反省したのね。
そんなことを思いながら、私は手渡された紅茶をゆっくりと飲み干した。
少しだけ苦いような……。
まあ勘違いよね。
「美味しい?」
母がいつになく綺麗な笑顔を私に向けた。
それが何だか嬉しくなって、私も笑顔を返した。
「はい、美味しいです」
「なら良かった。時間になったら呼ぶからそれまでは部屋でゆっくりしててね」
「はい」
優しい母に疑問は感じたものの、私には素直にそれが嬉しかった。
やっぱり私は母の娘なのだ。
久しぶりに家族の愛というものを感じた気がした。
部屋に戻り、ベッドに腰かけながらそんなことを思っていると、ふいに欠伸が出た。
「ふぁ……」
おかしいわね。
夜更かしはしていないはずなのに、とても眠い。
緊張かしら?
「うーん……」
瞼がだんだん重くなってくる。
頭もぼーっとしてきた。
どうしよう?
少しだけ寝ようかしら。
きっとお母さまが起こしてくれるわよね。
私は力なく頷くと、ベッドに横になった。
朦朧とする意識の中で母と妹の声が聞こえてきた。
どうやら部屋の前で何かを話しているみたいだ。
しかし、私はそれに耳を傾けることもなく、力尽きたように眠ってしまった。
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