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第二話

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「悪いがそれはできない」

ホワイト公爵が母の申し出を断ったのだ。
 
「しかし、姉のミルは不器用で気も強いのです。聡明で物静かなトリル様にはやはり妹のベルが……」

「いいかげんにしろ!」

ホワイト公爵は厳しい目を母に向けた。

「私は姉のミル嬢に縁談を申し込んだのだ、妹ではない。それとも、妹でなくてはいけない理由でもあるのか!?」

「い、いえ……決してそういうわけでは……」

「ならそれでよかろう。縁談に変更はなしだ」

「……はい。申し訳ございませんでした」

滅多に怒らないホワイト公爵を不機嫌にさせてしまった母は、悔しそうな顔をして家に帰ってきた。

「お母様、大丈夫ですか?」

妹のベルがわざとらしく母の背中をさする。

「ええ……でも困ったわ。ホワイト公爵があんなに頑固だなんて……」
 
母は私をキリっと睨みつけると、妹と共に声の届かない距離まで移動した。

「ベル、こうなったら……」

母がベルの耳に何かを囁いている。

「え?でも、お母様……それは……」

何か企んでいるに違いないと私は思ったが、聞かれちゃまずい話を私の前でするわけもないと思い、さほど気にしてはいなかった。

「ベル、大丈夫よ。あなたなら出来るわ……」

「わ、分かりました……頑張ります……ね」

ベルと母の引きつった笑顔を見ると、心なしか寒気が背中を伝った。
 
「はぁ……」

私は一人深いため息をつくと、自分の部屋に戻った。
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