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第十話

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ニコルと結婚してから一年。
生活もだいぶ落ち着いてきたので、私はニコルと出会うきっかけになったあの別荘を訪れていた。

「ここね……」

馬車から下りた私はあの大木の元へと駆け寄る。
木々と話すことが出来る私の魔法……それに気づかせてくれたあの大木に聞きたいことがあったのだ。

私が大木に触れると、それは話し始めた。

「リアン、久しぶりだね。人間の時間で一年くらいは経ったかな?」

「久しぶり、元気にしてた?」

直接関わりがあったのは数日に過ぎない。
しかしその短い時間で私たちは戦友のような距離感になっていた。
一年経っていたとしても、それは変わらない。

「実はね、今日はあなたに聞きたいことがあってここに来たの」

「そうなんだ、僕に答えられることならんでも聞いて」

「それなら良かったわ。じゃあ遠慮なく」

私はそう言うと、考えてきたことを頭の中で思い起こした。

「最初に私があなたに触れた時、あなたは久しぶりと言ったわね。それ以降もなぜか私のことを昔から知っている様子だった。一体なぜ?」

「なんだそんなことか……」

大木の呼吸が伝わってくる気がした。

「本当に覚えていないんだねリアン……君は昔この別荘に住んでいたのだけど……」

「え?」

私がこの別荘に? 
でもそんな記憶どこにもない……。

「私がこの別荘に? それはいつ頃の話?」

「えっと……確かあれは……君がまだ……5歳くらいのときかな……」

5歳……そんな昔のこと覚えていないわ。
でも、そもそもこの別荘ってアレンの家の所有物じゃなかったっけ?
つまり……私が住んでいたのをアレンの家が引き取ったってこと?

「ねえ仮に私が5歳の時ここに住んでたとして、一人で住んでたの? 両親は?」

「それも覚えていないのか……いいかい、君が一緒に暮らしていたのはロウウェ。君の祖母だよ」

「私の……祖母?」
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