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第七話

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「ハンナ!?」

驚いた様子のリチャードが一目散に私の元へ駆け寄ってきた。
青い顔をしながら私の顔を見つめている。

「ハンナ……今の話聞いていたのかい?」

私はコクリと頷く。

「そんな……ハンナ、許してくれ……僕は……僕は……」

絶望したようにリチャードが俯く。
私はいつか彼がしてくれたように、彼の頭をそっと撫でた。

「大丈夫よリチャード。タリアさんの好きには私がさせないから」

「ハンナ……」

「イチャイチャするのもそれくらいにしてくれないかしら?」

タリアが腕を組み、私たちを睨みつけた。

「ハンナ……盗み聞きなんていい度胸じゃない。それにこの私に歯向かうなんて正気を疑うわ」

「そうですか?愛を脅しでしか得られないようなあなたの方こそ、正気を疑いますが……」

「はぁ!?」

タリアが怒りに顔を歪ませた。
鬼の形相となった彼女は一歩足を踏み出す。

「あんたの方こそ身の程を知ったらどう?リチャードの隣にいるべきなのはこの私よ!あなたじゃなくて私なの!」

「違います……」

私は静かに言った。

「リチャードの隣にいるべきなのは、彼が心から愛した人です。今は私だと信じていますが、もしかしたら将来は違う人になっているかもしれません……しかし、ただ一つだけ言えることがあります」

「……なによ?」

「タリアさん……あなたでは絶対にないということです」

「くそっ!!!」

私の言葉にタリアの顔が更に歪んだ。
そしておもむろに手を前に出す。

「ハンナ!!」

と、リチャードが俊敏な動きで私の前に立ちふさがる。
タリアはそれを見て、歯ぎしりをする。

「リチャード……どいて……今からその馬鹿女を魔法で痛めつけてやるんだから……」

「嫌です!僕はどかない!それに彼女を侮辱するな!馬鹿なのはあんたの方だ!」

ここまで激昂するリチャードを見たのは初めてだった。
言葉遣いは荒いが、それは私を守るためなのだとはっきりと感じられる。
緊迫した空気の中、私の中に嬉しさが込み上げる。

「リチャード……私に逆らったらあなたの家族が路頭に迷うことになるわよ。仕事も家も失って……生きていけると思っているの……?」

「くっ……だが、僕は……」

言葉を選んでいるリチャードの背中に、私はそっと手を置いた。

「リチャード、大丈夫よ。あなたが路頭に迷ったら私の家に来るといいわ。だってあなたは私の婚約者だもの」

「ハンナ……!」

リチャードが顔だけ振り返り、嬉しそうな笑みを浮かべる。
それとは対照的に、タリアは完全に怒りが頂点に達したようで、無表情となってしまう。

「そ……もういいわ。ならお望み通り二人とも消してあげる。私の魔法でね」
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