夫の様子がおかしいです

ララ

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第九話

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「ふう……やっと効いたか」

そう言ったのは使用人のイリヤだった。

「イリヤ……ど、どういうことなの?」

幸い声は無事で、首を回すこともできた。
私は狼狽したようにイリヤを見上げる。

「ミネルヴァ様……申し訳ございません。紅茶の中に痺れ効果のある薬草を混ぜました。こうでもしないとあなたは殺されてくれないと思ったので」

「……はい?」

殺す?
彼女は何を言っているの!?

「あ、いけない。ちゃんと鍵を閉めておかなければ」

イリヤは思い立ったように振り返ると、部屋の鍵を閉める。
瞬間背筋を悪寒が昇る。
仮に……イリヤが今から私を殺そうとしたとして、鍵がかかっていては誰も助けに入ることができない。

「さあ、ミネルヴァ様。今から殺してあげますね」

「ま、待って!変な冗談はやめて!お願い!」

私の叫びも虚しく、イリヤはニヤッと笑みを浮かべるだけだった。

「……ミネルヴァ様。安心してください。なるべく早く殺してあげますからね」

そう言うと、イリヤはポケットからカッターを取り出した。
カチカチと刃を出し、それを私の首元に近づける。

「待ちなさい!ど、動機はなに?わ、私が何をしたっていうの!?」

私の問いかけに、彼女の手がピクリと止まる。

「……確かにそれを知らずに死んでいくのは可愛そうですね」

再びあの不気味な笑みを浮かべた後、彼女は思い出すように言った。

「ミネルヴァ様がここに来る前から私はマーカス様に仕えてきました。常日頃からマーカス様のことを考え、マーカス様のためだけに行動をしてきました。しかしどうでしょう?私の想いは無残にも彼には届かなかった。彼の隣にはあなたがいたのです」

「つまり……マーカスのことが好きだったのね?」

「ええ、その通りです。最初はマーカス様のことを殺そうとしていましたが、やめました。あなたを殺すことにします。だって私にはマーカス様の妻となる未来が待っているのですから。うふふふっ」

再びイリヤの手が動き出す。

「や、やめて!!!!!」

私が叫んだその時だった。
バン!!!
扉が勢いよく開き、マーカスが現れたのだ。

「やっと見つけたぞ」

彼はそう言うと、イリヤに飛びかかる。

「きゃっ!!」

イリヤは咄嗟にカッターをマーカスに向けるが、彼は身軽な動きでそれをかわし、イリヤの喉を押さえつけた。

「ぐっ……ぐあっ」

喘ぐイリヤを見つめ、マーカス……いや、悪魔は微笑んだ。

「お前みたいなやつは俺が直々に地獄へ送ってやろう。はぁ!!!」

悪魔の叫びと共に、眩い光が辺りを包み込んだ……
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