夫の様子がおかしいです

ララ

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第八話

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私の中に疑問が浮かぶ。

「あなたは夫の中の悪魔を祓えるとおっしゃいましたよね?」

「ああ」

ケルが頷く。

「ならなんでオーラが消えたその時に、祓わなかったんですか?」

「ああ、そのことか。それはあんたの旦那が勝手に悪魔と契約を交わしちまったからだ。どうやら一週間から二週間体を貸すつもりらしい。全く自分勝手な奴だよ、あんたの旦那は!」

ケルは怒ったようにそう言うと、ふうっと息をはいた。

「旦那の様子を見に来てみれば家にいないし……全く面倒な男と結婚したねぇ」

「い、いえ……マーカスはそんな人じゃありません」

そう言うが私は自信の無さを感じていた。
マーカスが悪魔と契約をした……つまり自分の体を犠牲にして何かを悪魔に求めたということだろう。
一体夫は何をしたかったのか。

「ふん、まあいいさ。どうせあと二、三日も経てば勝手に消えるだろ……もしそれでも消えない場合は私の所へ来るといい。大通りの路上で占いをやっているから」

ケルはそう言うと、立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
私も咄嗟に立ち上がり、ケルに不安な顔を向ける。

「あの……夫はこれからどうなるのでしょうか?」

ケルは扉を開けながら口を開く。

「それは誰にも分からない。私たちに出来ることは信じることだけさ」

最後にそう言い残した魔導士は、足早に私の家を去っていった。


「ミネルヴァ様、どうぞ」

自室に戻った私に、使用人のイリヤが気を利かせて紅茶をもってきてくれた。
イリヤの入れる紅茶は絶品で、毎回飽きさせない工夫が施されている。

「ありがとう。今回は……少し植物のような香りがするわね。とてもいい香り……」

「よく気づきましたね。どうぞご堪能ください」

イリヤは決して何を隠し味に使っているかなどは言わない。
少し秘密主義者的な一面がある彼女だが、その真面目さと気遣いは私も見習いたいものだ。

紅茶をぐいっと飲むと、心地よい気分に包まれた。
途端に頭が冴えてくる。

「そういえば魔導士の方は何の用だったのですか?」

イリヤの問いに、私は少し考えた後、苦笑いする。

「なんか勧誘だったわ。占いやっているから是非来てって」

さすがに悪魔のことを話すわけにはいかない。
適当に嘘をつくと、「そうなんですね」とイリアは微笑んだ。

と、急に体に違和感を感じ、私は紅茶をテーブルに戻した。

「あ……れ……」

痺れるような痛みが全身に走り、すぐに体が動かなくなる。
椅子に座った態勢のまま固まってしまう。

「ふう……やっと効いたか」
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