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第七話
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猛々しく叫んだグレイブは一歩私に近づいてきた。
私は反対に一歩後ずさる。
「大人しく下手に出てれば……お前は生意気言いやがって……」
「ま、待って……」
声は出るも、恐怖から掠れてしまう。
「俺の誘いを断るとどうなるか……その身に思い知らせて……」
「いたぞ!今すぐ取り押さえろ!」
と、私の背後から別の声がする。
さっと後ろを振り向くと、二人組の警備兵が武器を手に立っていた。
「え?」
私が驚く間に彼らは素早く移動し、グレイブをあっという間に拘束してしまう。
「や、やめろ!離せ!」
グレイブは抵抗するも力勝負で叶うはずもなく、やがて諦めたように力を抜いた。
「大丈夫ですか?」
グレイブを拘束しながら、警備兵が私に顔を向ける。
「は、はい……何とか」
困惑する様子の私に彼らは事情を話し始めた。
「実は先ほど、こちらに暴漢がいると通報がありましてね。間に合ってよかった」
「俺は暴漢じゃねえ!」
まるで暴漢のような口調でそう言ったグレイブを信じるはずもなく、警備兵は更に眼力を強める。
「嘘をつくな。彼女を襲おうとしていただろ。お前はこのまま連行させてもらう」
警備兵はそう言うと、私に会釈をしてグレイブを連れていってしまった。
一人その場に取り残された私は、急な展開にポカンとしてしまう。
「私……助かったのよね?」
それにしても通報してくれた人は一体誰だろう。
後で確かめてお礼を言うべきかしら。
でも、グレイブは危険な状態だし……あまりこのことに関わらせるのも怖いわね。
そう思った私は無理な詮索はしないことにして、とりあえず家に帰ることにした。
一悶着あったが、今日は学園の卒業式なのだ。
そして私の夢が叶った日。
今までの努力が報われた最高の一日なのだ。
「さて、帰ろう」
気を取り直した私は一歩踏み出した……
帰路についたマーガレットを物陰から見つめる人物がいた。
彼女の名はカイラ。
グレイブの婚約者である。
「全く……通報して正解だったわね。この私を裏切って元婚約者とよりを戻そうなんて……ふざけるんじゃないわよ」
マーガレットが首席で卒業だと知って、きっと目が眩んだのね。
首席に人には代々豪華な褒美が与えられるっていうし……。
ていうか、私もそれなりに頑張ったのに、まさかマーガレットに負けるなんて……。
イライラしてどうにかなっちゃいそうだわ。
「ふん、あんな女不幸になっちゃえばいいのよ。私の方が有能なんだから!ふふん!」
私は反対に一歩後ずさる。
「大人しく下手に出てれば……お前は生意気言いやがって……」
「ま、待って……」
声は出るも、恐怖から掠れてしまう。
「俺の誘いを断るとどうなるか……その身に思い知らせて……」
「いたぞ!今すぐ取り押さえろ!」
と、私の背後から別の声がする。
さっと後ろを振り向くと、二人組の警備兵が武器を手に立っていた。
「え?」
私が驚く間に彼らは素早く移動し、グレイブをあっという間に拘束してしまう。
「や、やめろ!離せ!」
グレイブは抵抗するも力勝負で叶うはずもなく、やがて諦めたように力を抜いた。
「大丈夫ですか?」
グレイブを拘束しながら、警備兵が私に顔を向ける。
「は、はい……何とか」
困惑する様子の私に彼らは事情を話し始めた。
「実は先ほど、こちらに暴漢がいると通報がありましてね。間に合ってよかった」
「俺は暴漢じゃねえ!」
まるで暴漢のような口調でそう言ったグレイブを信じるはずもなく、警備兵は更に眼力を強める。
「嘘をつくな。彼女を襲おうとしていただろ。お前はこのまま連行させてもらう」
警備兵はそう言うと、私に会釈をしてグレイブを連れていってしまった。
一人その場に取り残された私は、急な展開にポカンとしてしまう。
「私……助かったのよね?」
それにしても通報してくれた人は一体誰だろう。
後で確かめてお礼を言うべきかしら。
でも、グレイブは危険な状態だし……あまりこのことに関わらせるのも怖いわね。
そう思った私は無理な詮索はしないことにして、とりあえず家に帰ることにした。
一悶着あったが、今日は学園の卒業式なのだ。
そして私の夢が叶った日。
今までの努力が報われた最高の一日なのだ。
「さて、帰ろう」
気を取り直した私は一歩踏み出した……
帰路についたマーガレットを物陰から見つめる人物がいた。
彼女の名はカイラ。
グレイブの婚約者である。
「全く……通報して正解だったわね。この私を裏切って元婚約者とよりを戻そうなんて……ふざけるんじゃないわよ」
マーガレットが首席で卒業だと知って、きっと目が眩んだのね。
首席に人には代々豪華な褒美が与えられるっていうし……。
ていうか、私もそれなりに頑張ったのに、まさかマーガレットに負けるなんて……。
イライラしてどうにかなっちゃいそうだわ。
「ふん、あんな女不幸になっちゃえばいいのよ。私の方が有能なんだから!ふふん!」
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