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37、放課後

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七海くんにドキドキしながら1日を過ごして、やっと放課後になった。

今日は健太とは一緒に帰らない日だった。

用事があるようで、先に帰ろうかと思ってとりあえずトイレに行った。

戻ってきたら教室がほかほかと暖かくて、ああ今日も寝ちゃおうとお気に入りの席に座る。

教室には誰もいないし、別に寝ちゃってもいいだろうとすんなり眠りについた。











懐かしい香りが鼻をかすめた。

嗅ぎなれない香りが太陽を浴びるとなんとなく懐かしくなるような、そんな香り。

まだ眠たくて目が開けられない私の、まつげが誰かに触られているような気がした。

次に髪の毛が触られる。

こんなことするのは健太しかいないな、と安心してそのまま目をつむったままでいた。

唇もふにふにと触って、そのあと頬をすっとなでる。

くすぐったさにふふっと笑って耐えきれず目を開けると、私を触っている人物が瞳に映った。

「......え?七海くん?」

七海くんは目を開けた私に声もあげず驚いて、ぱっと後ろに下がった。

でもそこは窓で、逃げられなくなってしまっている。

「違う!あんたが、俺の席で寝てるからっ!」

声が裏返って、必死に否定しようとしてどんどん顔が赤くなっていく。

「なんであんなに触ってたの?」

「ゴミが、頬に、」

「顔中触ってたじゃん、全部ゴミついてたの?」

「そ、そうだよ」

「ふーん」

到底納得出来ないと思ったけれど、心地よくて寝た振りをしていた私もいたから、それ以上は追求せずに席を立った。

「ここ私の寝るときの特等席だったから、ごめんね」

そう言って席を立った私は、見てはいけない物を見てしまって目の前が真っ暗になった。

知らないほうがいいこともあるって本当たったんだなと思った。

七海くんの後ろの窓ガラスを通して隣校舎の教室が見える。

嘘みたいにはっきり見えて、信じられないくらいに何をしているか分かってしまった。

健太が女子生徒とキスをしている場面。

ハッとしたようにその女子生徒の肩を押して唇を離して誰も見ていないか周りを確認する健太に、見えてるよと言いたかった。

なんでそんなことになったの、説明してよと。

それを言えなかったのは距離が遠かったのと、傷つくのが怖かったのと、七海くんがカーテンを閉めてしまったから。

「見なくていい」

さっきとは打って変わって淡々とした声で言った。

「でも、健太が....」

「あれは事故だよ。健太が浮気なんてするはずないでしょ」

七海くんは小さな声で自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


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