37 / 47
37、放課後
しおりを挟む
七海くんにドキドキしながら1日を過ごして、やっと放課後になった。
今日は健太とは一緒に帰らない日だった。
用事があるようで、先に帰ろうかと思ってとりあえずトイレに行った。
戻ってきたら教室がほかほかと暖かくて、ああ今日も寝ちゃおうとお気に入りの席に座る。
教室には誰もいないし、別に寝ちゃってもいいだろうとすんなり眠りについた。
懐かしい香りが鼻をかすめた。
嗅ぎなれない香りが太陽を浴びるとなんとなく懐かしくなるような、そんな香り。
まだ眠たくて目が開けられない私の、まつげが誰かに触られているような気がした。
次に髪の毛が触られる。
こんなことするのは健太しかいないな、と安心してそのまま目をつむったままでいた。
唇もふにふにと触って、そのあと頬をすっとなでる。
くすぐったさにふふっと笑って耐えきれず目を開けると、私を触っている人物が瞳に映った。
「......え?七海くん?」
七海くんは目を開けた私に声もあげず驚いて、ぱっと後ろに下がった。
でもそこは窓で、逃げられなくなってしまっている。
「違う!あんたが、俺の席で寝てるからっ!」
声が裏返って、必死に否定しようとしてどんどん顔が赤くなっていく。
「なんであんなに触ってたの?」
「ゴミが、頬に、」
「顔中触ってたじゃん、全部ゴミついてたの?」
「そ、そうだよ」
「ふーん」
到底納得出来ないと思ったけれど、心地よくて寝た振りをしていた私もいたから、それ以上は追求せずに席を立った。
「ここ私の寝るときの特等席だったから、ごめんね」
そう言って席を立った私は、見てはいけない物を見てしまって目の前が真っ暗になった。
知らないほうがいいこともあるって本当たったんだなと思った。
七海くんの後ろの窓ガラスを通して隣校舎の教室が見える。
嘘みたいにはっきり見えて、信じられないくらいに何をしているか分かってしまった。
健太が女子生徒とキスをしている場面。
ハッとしたようにその女子生徒の肩を押して唇を離して誰も見ていないか周りを確認する健太に、見えてるよと言いたかった。
なんでそんなことになったの、説明してよと。
それを言えなかったのは距離が遠かったのと、傷つくのが怖かったのと、七海くんがカーテンを閉めてしまったから。
「見なくていい」
さっきとは打って変わって淡々とした声で言った。
「でも、健太が....」
「あれは事故だよ。健太が浮気なんてするはずないでしょ」
七海くんは小さな声で自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
今日は健太とは一緒に帰らない日だった。
用事があるようで、先に帰ろうかと思ってとりあえずトイレに行った。
戻ってきたら教室がほかほかと暖かくて、ああ今日も寝ちゃおうとお気に入りの席に座る。
教室には誰もいないし、別に寝ちゃってもいいだろうとすんなり眠りについた。
懐かしい香りが鼻をかすめた。
嗅ぎなれない香りが太陽を浴びるとなんとなく懐かしくなるような、そんな香り。
まだ眠たくて目が開けられない私の、まつげが誰かに触られているような気がした。
次に髪の毛が触られる。
こんなことするのは健太しかいないな、と安心してそのまま目をつむったままでいた。
唇もふにふにと触って、そのあと頬をすっとなでる。
くすぐったさにふふっと笑って耐えきれず目を開けると、私を触っている人物が瞳に映った。
「......え?七海くん?」
七海くんは目を開けた私に声もあげず驚いて、ぱっと後ろに下がった。
でもそこは窓で、逃げられなくなってしまっている。
「違う!あんたが、俺の席で寝てるからっ!」
声が裏返って、必死に否定しようとしてどんどん顔が赤くなっていく。
「なんであんなに触ってたの?」
「ゴミが、頬に、」
「顔中触ってたじゃん、全部ゴミついてたの?」
「そ、そうだよ」
「ふーん」
到底納得出来ないと思ったけれど、心地よくて寝た振りをしていた私もいたから、それ以上は追求せずに席を立った。
「ここ私の寝るときの特等席だったから、ごめんね」
そう言って席を立った私は、見てはいけない物を見てしまって目の前が真っ暗になった。
知らないほうがいいこともあるって本当たったんだなと思った。
七海くんの後ろの窓ガラスを通して隣校舎の教室が見える。
嘘みたいにはっきり見えて、信じられないくらいに何をしているか分かってしまった。
健太が女子生徒とキスをしている場面。
ハッとしたようにその女子生徒の肩を押して唇を離して誰も見ていないか周りを確認する健太に、見えてるよと言いたかった。
なんでそんなことになったの、説明してよと。
それを言えなかったのは距離が遠かったのと、傷つくのが怖かったのと、七海くんがカーテンを閉めてしまったから。
「見なくていい」
さっきとは打って変わって淡々とした声で言った。
「でも、健太が....」
「あれは事故だよ。健太が浮気なんてするはずないでしょ」
七海くんは小さな声で自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる