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34、七海くんの好きな人

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「離してよ!」

我慢できなくなった七海くんは私の腕を捕まえた。

「返したら離す。続きが気になって夜も寝れない」

「だから、約束してくれたら返すっていってるでしょ?私は七海くんが言ったことで傷ついたの!」

そこまでムキになることじゃないと自分で分かってはいても、不安を煽るようにバカにする態度は何度思い出しても腹が立った。

「指切りなんてしなくても約束は守るよ。何をこだわってるの」

「どうしてそこまで嫌がるの?指切りくらいで」

「.......健太が少しでも疑うようなことはしたくない」

七海くんは少し顔をそむけて言った。

そんなことくらいで浮気を疑ったりする人かと疑問に思って、考えてみる。

今腕を掴んでる人に言われたくないけど、と答えようとして目の端に健太が映りこんだ。

七海くんもすっと腕を離して後ろめたそうに目を伏せる。


「どうした?」

とっくに近くに来た健太が訝しげに私を見る。

「俺は健太が少しでも不安になるようなことしたくないって言ったのに、みなちゃんが」

七海くんは、先生に言いつける子供のように私を睨みながら健太の後ろに回った。

「誤解されるような言い方しないでよ!指切りげんまんしようとしただけ!」

「指切りげんまん?」

「そうだよ!先に私が傷つくようなこと言ってきたのはあっちだし、やめてくれるよう約束しようとしただけなのに」

そう言うと、健太はにこりと笑って「そりゃ指切りげんまんはだめだよ」と私の手を握った。

「この手は俺のものだから」

手の甲にちゅっとキスをして、私のほんのりと赤くなった顔にもキスをした。

「健太!?」

七海くんもいるのに、と抗議しようとするともう彼はいなくなっていた。

「俺たち二人きりの時間を作ってくれて本当に七海はいい子」

嬉しそうにする健太には悪いけど、私は気になってそれどころじゃなかった。

「本当に?本すごく返して欲しそうにしてたのに」

「俺を不安にさせたくないってのは本当だよ。七海は昔から俺が好きになった子にはとことん近寄らないんだ」

私が嫌いなだけなんじゃないの、と言いたい気持ちを抑えて「そんなに健太が好きなの?」と眉をひそめる。

「七海くんはゲイじゃないよね?健太のこと世界で一番好きって感じがする」

「あぁ、俺はきっと2番目だよ」

にやける顔で咳払いをしながら「俺が気づいていないとでも思ってるのかね」と笑った。

「七海には好きな人がいる」

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