7 / 47
7、彼の大きな悩み 七海side
しおりを挟む
みなちゃんと健太が付き合う前々日。
昼休み、いつもは飛んでくる健太が妙に遅い。
「七海、、、どうしよう、俺、、」
来たかと思えばどんよりとした顔で俯いている。
「うわっ、びっくりした。...どうかした?」
健太はおもむろに自分の鞄を漁って、2個のお弁当を取り出した。
いつものお弁当と、いつもと違うお弁当。
「こっちは、普通の弁当」
苦々しい顔をしてもう一つのお弁当を「こっちは人参弁当だ」と言った。
「人参食べられないんじゃなかった?」
「本当に、人参だけは無理」
「じゃあ何、人参弁当って」
「昨日の俺は勇気を出して、みなと一緒に帰ろうと試みた」
健太にしては大胆な、と関心しつつ少し違和感を覚えた。
昨日はたしか、いつもの通り一緒に帰ったはずだった。
家の前で「また明日」と別れたのをはっきりと覚えている。
「教室に行ったら、みなが友達が話しててさ。話の仲間に入れてもらったんだけど!好きなタイプは、料理が上手で好き嫌いなくてたくさん食べる子が好きって人らしくて!」
たくさん食べる子が好きって以外は当てはまらないな。
「それで、俺、心折れちゃって、一緒に帰るの諦めた」
「昨日あんまり話さなかったのはそのせいだったんだ」
「...俺、人参ご飯は味が染みてて食べられそうかなって思って母さんに作ってもらってきたけどやっぱり食べられる気がしない」
そう言って人参弁当を開けると、物の見事に人参だらけだった。
人参ご飯、人参のキンピラ、人参の煮物、人参の浅漬け....
「人参大嫌いの健太が突然人参食べようとしたから、おばさん張り切っちゃったんだね」
「たぶんそうだと思ってちょっと食べてみたけど人参の味がすごくて!無理だった!」
他の人参料理はともかく人参ご飯って、そんなに人参の味するもんか?
「お願いします!食べて!」
「人参はそんなに好きってわけじゃないし、、健太の食べかけって、、」
1度は断ったものの、健太の捨てられた子犬のような顔を見ていると可哀想になって結局食べてしまった。
「昔から人参だけは無理なんだよね、健太は」
「俺は本当に人参だけ!それ以外は食べれる!」
「はいはい、人参だけね」
「七海は人参食べれていいよなぁー」
いつものお弁当を食べながら「みなに嫌われちゃうよー」とクラス中に響く声で叫ぶ健太が本当に可哀想になって、明日はちゃんと食べれるような美味しい人参ご飯を作ってきてやらなくては、思った。
みなちゃんと上手くいくように。
健太がみなちゃんに告白する勇気が出るように。
健太が幸せになれるように。
健太が幸せならそれでいい。
それでよかったのに。
昼休み、いつもは飛んでくる健太が妙に遅い。
「七海、、、どうしよう、俺、、」
来たかと思えばどんよりとした顔で俯いている。
「うわっ、びっくりした。...どうかした?」
健太はおもむろに自分の鞄を漁って、2個のお弁当を取り出した。
いつものお弁当と、いつもと違うお弁当。
「こっちは、普通の弁当」
苦々しい顔をしてもう一つのお弁当を「こっちは人参弁当だ」と言った。
「人参食べられないんじゃなかった?」
「本当に、人参だけは無理」
「じゃあ何、人参弁当って」
「昨日の俺は勇気を出して、みなと一緒に帰ろうと試みた」
健太にしては大胆な、と関心しつつ少し違和感を覚えた。
昨日はたしか、いつもの通り一緒に帰ったはずだった。
家の前で「また明日」と別れたのをはっきりと覚えている。
「教室に行ったら、みなが友達が話しててさ。話の仲間に入れてもらったんだけど!好きなタイプは、料理が上手で好き嫌いなくてたくさん食べる子が好きって人らしくて!」
たくさん食べる子が好きって以外は当てはまらないな。
「それで、俺、心折れちゃって、一緒に帰るの諦めた」
「昨日あんまり話さなかったのはそのせいだったんだ」
「...俺、人参ご飯は味が染みてて食べられそうかなって思って母さんに作ってもらってきたけどやっぱり食べられる気がしない」
そう言って人参弁当を開けると、物の見事に人参だらけだった。
人参ご飯、人参のキンピラ、人参の煮物、人参の浅漬け....
「人参大嫌いの健太が突然人参食べようとしたから、おばさん張り切っちゃったんだね」
「たぶんそうだと思ってちょっと食べてみたけど人参の味がすごくて!無理だった!」
他の人参料理はともかく人参ご飯って、そんなに人参の味するもんか?
「お願いします!食べて!」
「人参はそんなに好きってわけじゃないし、、健太の食べかけって、、」
1度は断ったものの、健太の捨てられた子犬のような顔を見ていると可哀想になって結局食べてしまった。
「昔から人参だけは無理なんだよね、健太は」
「俺は本当に人参だけ!それ以外は食べれる!」
「はいはい、人参だけね」
「七海は人参食べれていいよなぁー」
いつものお弁当を食べながら「みなに嫌われちゃうよー」とクラス中に響く声で叫ぶ健太が本当に可哀想になって、明日はちゃんと食べれるような美味しい人参ご飯を作ってきてやらなくては、思った。
みなちゃんと上手くいくように。
健太がみなちゃんに告白する勇気が出るように。
健太が幸せになれるように。
健太が幸せならそれでいい。
それでよかったのに。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる