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3、おかわり

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「なっ、なに?」

あまりの出来事に声が裏返る。

いたずらが成功したときのようにニヤニヤしながら「まだ口に、クリームついてたから」と笑う。

「せめてっ、指で取ってくれればよかったでしょ!」

「んー、うま」

真っ赤になっている私をよそにもう一つのドーナツを食べて上機嫌になっていた。

私が照れたらもう満足か!

「次、右!」

ドーナツに夢中で、道がわからないのに先頭をスタスタ歩く健太に声をかけた。

健太はにまっと笑って方向転換する。

「ここら辺、喫茶店とか多いな」

健太は通り過ぎる喫茶店を一つ一つ名残惜しそうに見つめながら歩いていた。

食いしん坊で、やんちゃで、なんでも楽しそうな健太を見ると、本当に犬みたいでかわいい。

「また今度行こうね。今日はもうドーナツ買ったから」

私がそう言うと、明らかに目を輝かせて頷く。

「俺、プリンパフェ食べたい!」

「そんなこと言ってると今から行きたくなっちゃうでしょ」

「行こうよ!行こう!」

「夜ご飯入らなくなっちゃうってば!」

「俺の1口あげるから!」

「もういい!」

さっき、あれだけ恥ずかしかったのにもう1回同じことがあったら顔を見るのも照れるような気がしてしまう。

「はい!もう一口!」

健太は私がかじったドーナツは食べないでそのまま持っていたようだ。

「も、もういいって!」

「あーん」

反応を面白がるようにドーナツをずいっと私の口元に近づける。

「1口って言ったでしょ!おかわりはなし!」

ちょっとキツく健太に言うと、あっという間にしゅんとしてなんだか可哀想に見えてきてしまった。

「また今度。ね?」

あやそうと健太に近寄ると、「引っかかった!」と口にドーナツを入れようとする。

さすがに顔にべちょっとなるのは嫌だったので仕方なく口を開けた。

健太の方が少し早くて、私の口の空きが足りてなかったからかさっきよりもドパッと口の周りにクリームが付く。

「んーっ!」

「あはははっ!めっちゃ付いた!」

健太は楽しそうだけど、私はたまったもんじゃない。

「ひどい!」

またペロッとされる危険性があったからちゃんと自分で取るために鏡を出そうとすると、健太が近づいてきた。

「えっ!」



さっきと同じ、顔を舐められる感覚がした。

やられた。

「自分で取るっ」

私が離れようとすると健太は首の後ろに手を回してぐいっと引き寄せた。

「なに、するの?」

健太は真剣な顔で、いつもと違って、わんこみたいな健太じゃない。

「キスするよ」





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