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第二十一章 王都エフレ

第21-3話「Mine」

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 突如現れた巨人。
 空を覆う手が、再び早苗たちを襲おうと、振り下ろされる。

「全員撃て!! 閣下をお守りしろ!!」

 ラルクが叫ぶ。
 怯んでいた獣人兵たちが、一斉に頭部へ発砲する。
 ズガッと。弾丸はまっすぐ当たり、頭部に穴が。だが……

「……ま、まったく効いていない」
 ラルクは絶句した。そのまま巨人が、獣人たちに手を振り下ろす。

「ラルク!! すぐに全員退避――っ!!」

 早苗が叫ぶ。同時に獣人兵たちがその場から飛び出す。
 巨人の手が、凄まじい風圧と共に目の前を横切りーー

「――ラルク!」
 風圧で背後に飛ばされた早苗は、すぐに体を起こす。
 ラルクは無事だ。だが――
 獣人兵のひとりの、が、ミンチに。

「くそ……っ!」
「ライッヒ!!」

 ラルクが、死んだ部下の名を叫んだ。

「くそっ! ここでヤツを仕留めます……!」
「待て! そもそもアレが、生物かどうか」

 あんなの、ミサイルをぶち込んでも、倒せるかどうか……

『……ああ、とても……残念ですわ……サナエ様……』

 倒れていたゴルディが、ゆっくりと立ち上がる。

『使いたくありませんでしたの……』
『……なんのことだ?』
『あなた方、下等生物たちを始末する為なんかに、この力を……!!』

「――あの女!」
 ラルクが、再度指揮を出す。

「女の方角へ、全員構え!」

 だが引き金が引かれる直前、
 巨人は、その巨体からは想像もできない速度で――
 ゴルディの目の前に移動する。

 ライフルが一斉に発砲される。
 だが全弾、巨人の手の甲に着弾し、軽く煙を上げていた。


『効きませんわ、そんなもの』
『………』

 早苗は静かに見る――
 撃ったはずの巨人の手の甲が、黒い霧に包まれ、修復される。

「マナの霧だ。生物じゃない」
「……閣下!?」
「リスクが高い。撤退する。残ったダイナマイトをゴルディに」

 ハッ! といい、獣人兵のひとりが火をつけ、ゴルディに投げる。
 同時に、全員で壁の穴から、城外へ退避した。

「逃げようとしても、わたくしたちからは――」

 刹那、ライフルとは比べ物にならないほどの爆音。
 ゴルディのすぐ足元で爆発したダイナマイト――
 煙が収まる頃、早苗は肩越しに覗いた。

『……ああ、ぐううう!!』

 ゴルディは、左腕から血を流していた。
 彼女を守る巨人の手は、小指から中指の付け根までが、ザックリ爆発で抉れていた。
 守りきれず、一部がゴルディに被弾したのだろう。

『ゆ、ゆるしませんわ……! この下等生物どもぉぉ!!!』

 叫ぶと同時に、巨人がまっすぐ早苗たちの元へ駆け出す。

『殺しなさい!! そのサルどもを、今すぐ!!!』

 裏返る声。
 100メートルはあった距離を、巨体が一気に突進して縮めていく。

「……っ!!」

 早苗は自分の目を疑った。
 たった数秒の間で、もう巨人が目の前に――

「閣下!!」

 ラルクが叫ぶが、もう遅い。
 目の前まで走ってきた巨人が、その巨大な手で、早苗をつぶそうとする――

「……っ!! 失敗した」

 思わず、そう口に出してしまう。
 ズドンッ、と巨人に押しつぶされる。
 巨大な手の隙間から、黒い霧が宙に舞った。

「か、閣下――!!」

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