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10、打ち合わせ
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打ち合わせが始まった。
演出家の池崎義彦さんによる挨拶。「こんにちわ、みなさん。今回の「オルレアン」の演出を担当する池崎義彦です。これから皆さんとともにより素晴らしい作品、フランスの人、イギリスの人にも「本当の百年戦争を描いた作品のようだ、」と言ってもらえるようなものにしていきたいと考えています。どうか皆さん私と一緒に最良の舞台を作り上げていきましょう」
脚本家の岩淵さんの挨拶。「これから作っていく舞台ですが今まで書かれたジャンヌものはイギリスの視点が欠けている、それに映像作品に顕著でありますがジャンヌの聖性を強調するあまりイギリス軍の残虐さというものを強調しているものが多いように思えたのです。作中にもありますがイギリス軍兵士の死に関してジャンヌが涙を流すシーン。これはイギリス軍兵士もフランス軍兵と同じ人間であったということの表れではないでしょうか。私の見方では中世の国家意識を現在の国家間戦争と同一視することにも違和感を感じました。一方でこれまでの作品で描かれたジャンヌの一途な民衆や国王を尊敬し、そのために戦おうとする熱い志は変わらず表現しようと全力を尽くしました。」演出家の池崎から東京公演でジャンヌを演じる嶋田久美に質問が出た。「嶋田さん、村松剛さんの本は読んだかな?」「はい、読みました。」「どんなところが印象に残りましたか?」「はい、運命を徒手空拳で切り開いた女性というくだりです」しっかり読んでいる。
「続いて岡田さん、傭兵ピエールは読んだことがありますか?」「・・・。ありません」
「いや,別にいいですよ。ただジャンヌについてどれだけ知っているか聞いてみようと思いまして。」池崎さんは書類を見ている。「シルレルのあれ、「オルレアンの少女」は史実と違いますから読まなくてもいいですね、はは」駄目だ。完全に演出家の人に蔑まれている。ここまで必死に兄とジャンヌ・ダルクについて勉強してきたのに。兄は「傭兵ピエールはいやらしいシーンがあるからみゆきには見せられない。」と言っていたのに話題に上がってしまった。池崎さん、私、結構読んでます。
「ドラマについてお聞きしたいのですが、あ、この質問はお互いの理解を深めていくためにするものです。知らなかったからどうということではありません。」
だめだ。うまくいかなかった。知らなかったなら知らなかったなりの言い方があったはずなのに。悔いが残った。自分が悔しい。
演出家の池崎義彦さんによる挨拶。「こんにちわ、みなさん。今回の「オルレアン」の演出を担当する池崎義彦です。これから皆さんとともにより素晴らしい作品、フランスの人、イギリスの人にも「本当の百年戦争を描いた作品のようだ、」と言ってもらえるようなものにしていきたいと考えています。どうか皆さん私と一緒に最良の舞台を作り上げていきましょう」
脚本家の岩淵さんの挨拶。「これから作っていく舞台ですが今まで書かれたジャンヌものはイギリスの視点が欠けている、それに映像作品に顕著でありますがジャンヌの聖性を強調するあまりイギリス軍の残虐さというものを強調しているものが多いように思えたのです。作中にもありますがイギリス軍兵士の死に関してジャンヌが涙を流すシーン。これはイギリス軍兵士もフランス軍兵と同じ人間であったということの表れではないでしょうか。私の見方では中世の国家意識を現在の国家間戦争と同一視することにも違和感を感じました。一方でこれまでの作品で描かれたジャンヌの一途な民衆や国王を尊敬し、そのために戦おうとする熱い志は変わらず表現しようと全力を尽くしました。」演出家の池崎から東京公演でジャンヌを演じる嶋田久美に質問が出た。「嶋田さん、村松剛さんの本は読んだかな?」「はい、読みました。」「どんなところが印象に残りましたか?」「はい、運命を徒手空拳で切り開いた女性というくだりです」しっかり読んでいる。
「続いて岡田さん、傭兵ピエールは読んだことがありますか?」「・・・。ありません」
「いや,別にいいですよ。ただジャンヌについてどれだけ知っているか聞いてみようと思いまして。」池崎さんは書類を見ている。「シルレルのあれ、「オルレアンの少女」は史実と違いますから読まなくてもいいですね、はは」駄目だ。完全に演出家の人に蔑まれている。ここまで必死に兄とジャンヌ・ダルクについて勉強してきたのに。兄は「傭兵ピエールはいやらしいシーンがあるからみゆきには見せられない。」と言っていたのに話題に上がってしまった。池崎さん、私、結構読んでます。
「ドラマについてお聞きしたいのですが、あ、この質問はお互いの理解を深めていくためにするものです。知らなかったからどうということではありません。」
だめだ。うまくいかなかった。知らなかったなら知らなかったなりの言い方があったはずなのに。悔いが残った。自分が悔しい。
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