4 / 32
4,初ライブ
しおりを挟む
岡田みゆき
「すげえじゃん。」地元の雑誌に表紙になったオセロットのメンバーたちを見るクラスメイトの長内君。リアクションが古いように周りには思えた。「少なくとも地元のヒーローだね」にこやかな目の高井亜由美。彼女は盛り上がりさえすればなんでもよいのだ。「これで中学から続くみゆあやコンビもひとまず休止かな」間ができた。大親友の明石綾子とのコンビをみゆあやと呼んではやし立てているクラスメイトがたくさんいるのだ。私はいいけど綾子が赤くなるのを楽しむ人もいるのがムッとする。「大丈夫だよ、私はずっと登校し続けるから」「あっ、そうなんだ」それにしても私が右3番目でいいんだろうか。「とにかくインフルエンサーの俺に任せとけ」自称インフルエンサーである飯沢君が言った。彼の影響力は学年内にとどまるのが難点だ。
谷口副社長
本拠地とでもいうべきこぢんまりした新築の劇場で小山が安心した声で言う。「だんだん形にはなってきたな」形にはなってきた。しかしこれでいいんだろうか。俺はタレントの売り出しとか全くわからない。金は十分にかけたつもりなのだが古参芸能事務所なら1で済むところを5の予算かけていないだろうか。俺たちは本当にアイドルグループの運営として正しいのか?誰かもっと詳しい人をスタッフに加えるべきではなかったのか?
初ライブの日。メンバー採用から3か月。「どうだい、このセットリスト」してやった感を出している小山。メンバーも頑張ったし作曲家も頑張ったおかげでいい曲が集まったが既存グループの曲を3曲使わせてもらう。「観客の期待値は高い方がいいのかな、低い方がいいのかな」「高くて悪いことは無いんじゃないかな」
岡田みゆき
十和子さんの即興ダンスはすごい。よくこんなアイデアがわいてくるものだ。体が疲れを知らないように見えた。私も運動部だったからタフなつもりだったんだけどもうついていけなくなってしまった。
ライブ終了。やり切った後息が詰まりそうになった。私の芸能人生がどんな終わり方をするにせよこの日を忘れることは無いのだろう。私の歌唱パート。声は出せていたのだろうか。なんだか変な声になっている感じだ。でも、ほぼ満員のステージ会場の歓声を忘れることもないのだろう。中学時代のバレー部の友達も来ていた。私の歌にびっくりした顔をしていた。私自身も信じられない。打ち合わせの後、メンバーと祝勝会と称して食事。小山さんの経営している地方外食チェーン。あまりにも疲れていたけど何とか食べることができた。みんな楽しそう。というよりまだ力が残っていることに驚く。終了後私はうずくまってしまって立ち上がることができなかったのに。驚いたことにふみちゃんは次の日も学校の部活動があるらしい。鈴岡さんはアニメキャラの小動物の物まねをする。ちゃんと「みゆき―」とかアドリブで言っている。十八番なのだろうか。
小山社長(オセロットプロデューサー)
アイドルグループとして出発したものの、何か仕掛けが欲しい。そういうのは先に考えとけよと谷口は言う。「まあ仕方がない」そう俺は言った。アイドルグループとして成り立つかどうかもあやふやだったのだ。なんとか目星だけはついてきた。裏方の力というよりはメンバーたちの力というところが大きい。なんだか泣けてきたところもある。メンバーの中もよさそうだし怪我でもしなければこのメンバーで何年かできる見通しが出てきた。
それにしても岡田みゆきはすごい成長力だ。歌唱力って最初見た、いや聞いただけではわからないもんだな。谷口はフィッシュアンドチップスをだらだら食っている。それ自体がダメなわけでもないしフィッシュ(略)が体に悪い食品だというわけでもない。問題のあるのは何も考えずに食べているということなのだ。メンバー一人一人が倍速のスピードで成長しているというのに副社長がだらだらやっているということが問題なのだ。副社長が何のコンセプトも持たずにただ売れたらいいという見通ししかないのが問題なのだ。谷口は今度はコーラを飲み始めた。コーラが体に(略)。「今後は外食チェーンでのポイントを握手会等に利用できるようにしようと思う。」俺は腕組みする。「それはいいがメンバーに何か事案があったら響くぞ」谷口がすきを突かれたような表情になる。「その時はその時だよ」さらに考えるとCDの売り上げにも響くのではないかと思ったので再考することにした。それにしてもアイドル事業は拡大させるべきなのか、今のスタッフ人員ではこれ以上のメンバーは捌ききれないのではないか、早めに大手事務所と連携しないと大変だ。
「すげえじゃん。」地元の雑誌に表紙になったオセロットのメンバーたちを見るクラスメイトの長内君。リアクションが古いように周りには思えた。「少なくとも地元のヒーローだね」にこやかな目の高井亜由美。彼女は盛り上がりさえすればなんでもよいのだ。「これで中学から続くみゆあやコンビもひとまず休止かな」間ができた。大親友の明石綾子とのコンビをみゆあやと呼んではやし立てているクラスメイトがたくさんいるのだ。私はいいけど綾子が赤くなるのを楽しむ人もいるのがムッとする。「大丈夫だよ、私はずっと登校し続けるから」「あっ、そうなんだ」それにしても私が右3番目でいいんだろうか。「とにかくインフルエンサーの俺に任せとけ」自称インフルエンサーである飯沢君が言った。彼の影響力は学年内にとどまるのが難点だ。
谷口副社長
本拠地とでもいうべきこぢんまりした新築の劇場で小山が安心した声で言う。「だんだん形にはなってきたな」形にはなってきた。しかしこれでいいんだろうか。俺はタレントの売り出しとか全くわからない。金は十分にかけたつもりなのだが古参芸能事務所なら1で済むところを5の予算かけていないだろうか。俺たちは本当にアイドルグループの運営として正しいのか?誰かもっと詳しい人をスタッフに加えるべきではなかったのか?
初ライブの日。メンバー採用から3か月。「どうだい、このセットリスト」してやった感を出している小山。メンバーも頑張ったし作曲家も頑張ったおかげでいい曲が集まったが既存グループの曲を3曲使わせてもらう。「観客の期待値は高い方がいいのかな、低い方がいいのかな」「高くて悪いことは無いんじゃないかな」
岡田みゆき
十和子さんの即興ダンスはすごい。よくこんなアイデアがわいてくるものだ。体が疲れを知らないように見えた。私も運動部だったからタフなつもりだったんだけどもうついていけなくなってしまった。
ライブ終了。やり切った後息が詰まりそうになった。私の芸能人生がどんな終わり方をするにせよこの日を忘れることは無いのだろう。私の歌唱パート。声は出せていたのだろうか。なんだか変な声になっている感じだ。でも、ほぼ満員のステージ会場の歓声を忘れることもないのだろう。中学時代のバレー部の友達も来ていた。私の歌にびっくりした顔をしていた。私自身も信じられない。打ち合わせの後、メンバーと祝勝会と称して食事。小山さんの経営している地方外食チェーン。あまりにも疲れていたけど何とか食べることができた。みんな楽しそう。というよりまだ力が残っていることに驚く。終了後私はうずくまってしまって立ち上がることができなかったのに。驚いたことにふみちゃんは次の日も学校の部活動があるらしい。鈴岡さんはアニメキャラの小動物の物まねをする。ちゃんと「みゆき―」とかアドリブで言っている。十八番なのだろうか。
小山社長(オセロットプロデューサー)
アイドルグループとして出発したものの、何か仕掛けが欲しい。そういうのは先に考えとけよと谷口は言う。「まあ仕方がない」そう俺は言った。アイドルグループとして成り立つかどうかもあやふやだったのだ。なんとか目星だけはついてきた。裏方の力というよりはメンバーたちの力というところが大きい。なんだか泣けてきたところもある。メンバーの中もよさそうだし怪我でもしなければこのメンバーで何年かできる見通しが出てきた。
それにしても岡田みゆきはすごい成長力だ。歌唱力って最初見た、いや聞いただけではわからないもんだな。谷口はフィッシュアンドチップスをだらだら食っている。それ自体がダメなわけでもないしフィッシュ(略)が体に悪い食品だというわけでもない。問題のあるのは何も考えずに食べているということなのだ。メンバー一人一人が倍速のスピードで成長しているというのに副社長がだらだらやっているということが問題なのだ。副社長が何のコンセプトも持たずにただ売れたらいいという見通ししかないのが問題なのだ。谷口は今度はコーラを飲み始めた。コーラが体に(略)。「今後は外食チェーンでのポイントを握手会等に利用できるようにしようと思う。」俺は腕組みする。「それはいいがメンバーに何か事案があったら響くぞ」谷口がすきを突かれたような表情になる。「その時はその時だよ」さらに考えるとCDの売り上げにも響くのではないかと思ったので再考することにした。それにしてもアイドル事業は拡大させるべきなのか、今のスタッフ人員ではこれ以上のメンバーは捌ききれないのではないか、早めに大手事務所と連携しないと大変だ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
お漏らし・おしがま短編小説集 ~私立朝原女学園の日常~
赤髪命
大衆娯楽
小学校から高校までの一貫校、私立朝原女学園。この学校に集う女の子たちの中にはいろいろな個性を持った女の子がいます。そして、そんな中にはトイレの悩みを持った子たちも多いのです。そんな女の子たちの学校生活を覗いてみましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる