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1、オーディション

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 岡田みゆき
地方の名門企業が運営しているアイドルグループ。オセロット

私はそこに所属している。入って1年たったが人気メンバーではないが不人気メンバーでもない。

容姿はそこそこ、歌唱力には自信があったがアイドルグループのオーディションには落ち続けた。半年ぐらいは自分を磨くとか言ってたけどはたから見ると何もしなかったといえるかもしれない。兄に相談したが「アイドルになりたいなら諦めるな。他のアイドルと自分を比べて足りないところを考えろ」と叱責された。でもせいぜい化粧を頑張るくらいだった。両親は消極的な賛成から消極的な反対に変わってきた。夢をあきらめるのはつらかったがもうだめかもしれないと思った。でも兄はまだチャンスはあると言ってくれた。

オセロット、当時は名前が決まっていなかったが結成予定のアイドルグループのオーディション。書類選考、実技審査を通過したがまだ面接が残っていた。

今度も駄目だろう、そう思っていた。こうなったら自分の最高の状態で相手の印象に残りたい、そう思って前日は熟睡した。面接は男性プロデューサー、女性のマネージャー、他年配の男性一人。

プロデューサーは男性だった。二枚目というよりは三枚目。年齢は30代から40代くらいだろうか。悪い人ではないようだったがどこまで信頼できるかはわからない。「これまでにも何回かアイドルのオーディションを受けになられているようですね」「はい」こればかりは正直に答える。

「タイラントのオーディション、大手ですね。最終審査まで、あー」

嫌な記憶がよみがえる。歌唱力は問題なかった、はずなのだ。

「面接は飯富さんだった?あ、男性の、メガネをかけた」「だ、男性でした」「そうか」

多分どれだけの記憶力があるか、どれだけの熱意があるかを確かめているんだろう。

熱意だけはあるんです。原稿用紙とか手紙ならたくさん書けるんです。「あー、豆板醤のオーディション」痛いところを突いてきた。もっとも落ちた選考はすべて痛いのだが。「日中米の混合ユニットだったね、メディア展開とかすごいよね。全員10代だったね」私が落ち込んできたのを見て発言が止まった。

年配、よく見たら40代すぎの男性の正体がよくわからない。私を観察しているようだが好感を持っているように見えた。でも、これまでのオーディションでも私に興味を持っていたような方はいたのだが。

「あー、1年生でレギュラーに抜擢、2年生でバレーボールの中学大会で県大会優勝。おー」「あっ、はい」「現在中学2年。ほー」

よくわからない男性とプロデューサーの方は何やら話している。気になって仕方がない。マネージャーの女性が書類を渡す。心臓がチクチクするような感じが怖くて仕方がない。いつまで待たされるのか。私が心労で倒れてしまうんじゃないかと思うほどの緊張を乗り越えた後プロデューサーが顔を上げた。「大丈夫です」

何が大丈夫なのか。

「本当は今日からと言いたいところなんだけど、書類を親御さんと確認しないといけないからね、明日から研修に参加、できるね?」えっ?「あっ、はい。喜んで・・」言葉が出てこない。普通、こういうのって何日か選考にかかるんじゃなかったの?「後、デリケートな話だけど気を悪くしないでね。こちらもどうしても確認しておかないといけないことだから」マネージャーの女性が言う。何だろう、男の人のこととかかな。

「メンバーとの兼ね合いでね、その髪型を変えるとき」変えません。変えません。「タレントとしてのイメージがあるのでなるべく変えるときはこちらに連絡をお願いしたいのです」「わかりました。」「頑張りましょう」これからどういう心境の変化があるのかは私にもわからない。でもこの瞬間は絶対に忘れないのだろうな。プロデューサーさんかどうかわからないけれど、とりあえずありがとう。頑張ります。

 

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