3 / 4
なまのお供といえば?
しおりを挟む枝豆始めました。
本日のオススメメニューの中に大きく書かれた文字を、美貴子は声に出して読み上げる。
「えだまめ!」
一拍置いて出た声は思いのほか大きくなってしまった。
「そうだよ。今年もこの季節がやってきたね」
洗い物をしていた女将の明るい声が返ってくる。冷たいおしぼりで手を拭きつつ、美貴子はぷちぷちと弾ける枝豆の食感を想像する。
夏。
熱い。
熱い日にはビール。
ビールはやっぱり生ビール。
生ビールのお供といえば。
「枝豆ください! あと、なま! 生ひとつ!」
あいよぉ! といつも通り大将の元気な声。美貴子は口の中で弾ける豆の感触と、冷たくキンキンに冷えた生ビール。これ以上の組み合わせがあるだろうか。いや、ない。調子の外れた鼻歌を歌いながら、美貴子は運ばれてくるであろう枝豆と生ビールに思いを馳せる。
「なま、なまなま、やっぱりなま~合わせるのはぷちぷち、くりくりおまめちゃん~」
外れた鼻歌にいつしか歌詞が乗る。ひとしきり歌い終わると、隣の椅子が大きな音を立てた。
「あ、高城さん」
「こんばんは。美貴子ちゃん。今日は早いね」
「はい! 早く終わったので先に来ちゃいました!」
美貴子の隣で、目を細めて微笑むのは、美貴子の恋人である高城だった。真夏日だったにも関わらずかっちりとしたスーツ姿だ。しかし、隣に座る高城の姿は、朝出てきた時と変わらず涼しげだ。本当に一日働いたのかと疑いたくなる。
「今日は一日外回りだったから。大将。僕にも生をひとつ」
「え!?」
「ん? どうしたの?」
「朝とほとんど出で立ちが変わらないから……外回りだったんですね」
美貴子の返答に、高城はきょとんと目を丸くしたあと、くつくつと笑い出した。
「美貴子ちゃんに会えるから整えてきたとは思わないの?」
「っ、ひぇ! イケメンの威力……!」
化粧崩れも直さず、真っ直ぐに店に向かった美貴子。自分の様形が恥ずかしくなったのな、慌てて前髪を直す。無駄だと思っていても、なにかせずにはいられなかった。
「はいよ! 生と枝豆ね!」
曇ったグラスになみなみと注がれた生ビールと木ざるに入った枝豆が、俯く美貴子の前に置かれる。大好きな二つが目に入った瞬間、美貴子の頭の中から今の出来事が追い出された。
「ふぁー! いただきます!」
大ジョッキの取っ手はキンキンに冷えていた。ほてった体を覚ます冷たさに、美貴子は一瞬身震いをする。そして、勢いよくジョッキを傾け、これまた冷えた生ビールを勢いよく流し込む。
「っ、ぷはー!」
半分ほど飲んだところで、ジョッキをテーブルに置く。そして爽やかな苦味が無くなる前に、枝豆を口にくわえた。一粒ずつなんてお行儀よく食べていられない。大きな房の中に隠れていた三つの豆を、口の中に押し出していく。
「んっ、んんー!」
ぷちぷたと口のなかで弾ける食感は、想像以上だった。
「枝豆出たんだね」
「んっ、ごめんなさい。独り占めしちゃった! やっぱり生にはお豆ですよね~」
頬杖をついてこちらを見つめる高城に気がつく。一人ではしゃいでしまったことを恥じながら、美貴子は枝豆山盛りの木ざるを高城の方に寄せる。
「じゃ、ひとつ」
高城の長い指が房をつまむ。その指を見て、美貴子は昨晩の情事を思い出してしまった。長い指で蜜壷の奥を責め立てられた昨晩を。
「っ、」
「ああ、いいね。夏が来たって感じだ」
「ですよね! やっぱり夏は、おっきいなまと、ぷちぷちくりくりおマメちゃんですよね!」
美貴子が大きな声で反応した瞬間。高城の鋭い目がさらに細められた。
「おっきいなまと、クリクリおマメちゃん……ね」
美貴子は涼しい店内にも関わらず、背中に一筋の汗が流れるのを感じた。
□□
「あっ、いや、んんっ! だ、だめ……」
「ほら、好きなんでしょ? くりくりおまめちゃん」
ちがう! と否定するはずの声は、喘ぎ声に飲み込まれた。冷たいビールジョッキを持った時よりもずっとずっと刺激的な感覚が美貴子を襲ったからだ。その刺激を与えた人物は美貴子秘部に顔を埋めている。少し下を見ると、美貴子の愛液で濡れた唇を舌で舐めとっていた。
「いや、いや……しゃわーも、浴びてないのに」
「夏はやっぱりこれなんでしょう? 美貴子ちゃん。僕は言ったよね? 迂闊な言葉を言わないようにと」
かり、と甘噛みされる。もちろん、腕や首など生易しい場所ではない。今までさんざん喘がされて来た元凶だ。
「ひぃァァァっ!」
なおもまだ、食まれている場所。高城を苛立たせた、美貴子のうかつな一言から想像できる場所。
くりくりおまめちゃんだ。
「何度言ったら分かるのかな?」
「わざ、とじゃ……」
抵抗を口にすると、強い刺激が全身を駆け巡る。食まれると同時に、長い指が蜜壷に挿入されたからだ。
「ん、ぐっ!」
「好きなんでしょ? すっごいぐっしょぐしょだよ? やっぱりナマがいいのかな?」
中と外。両方の刺激に、美貴子は口の端からよだれを垂らし喘いだ。そんな美貴子を嘲笑うように、高城は美貴子のおマメを責める。
「あ、ぁあぁ……っん、んんはぁ……っ」
「美貴子ちゃん? 何が欲しい?」
ブラジャーからはみ出た乳房がふるりと揺れる。さんざん弄られた先端の蕾は、ピンと立ち上がり、存在を主張していた。高城のもう片方の手が蕾をこねた。中と外と、胸と。三ヶ所を同時に責められ、美貴子の思考は遥か彼方へ飛んでしまっていた。
「なま……」
「ん?」
「なま、なま……おっきいなま、ください!」
よくできました、と笑う高城。それを見た美貴子は涙混じりの瞳を細めて、同じように笑った。もっと気持ちがいい時がやってくる。その喜びを想像した笑みだった。
11
お気に入りに追加
638
あなたにおすすめの小説
甘々に
緋燭
恋愛
初めてなので優しく、時に意地悪されながらゆっくり愛されます。
ハードでアブノーマルだと思います、。
子宮貫通等、リアルでは有り得ない部分も含まれているので、閲覧される場合は自己責任でお願いします。
苦手な方はブラウザバックを。
初投稿です。
小説自体初めて書きましたので、見づらい部分があるかと思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです。
また書きたい話があれば書こうと思いますが、とりあえずはこの作品を一旦完結にしようと思います。
ご覧頂きありがとうございます。
一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした
あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。
しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。
お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。
私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。
【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】
ーーーーー
小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。
内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。
ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が
作者の感想です|ω・`)
また場面で名前が変わるので気を付けてください
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる