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第六章 楊麗華と幼妻
第六章 楊麗華と幼妻 八
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本当は伽羅も、東宮後宮に駆けつけて、娘や熾繁を奪い返してしまいたかった。
叫びたいほどに苦しかった。
だが、それは出来ぬのだ。
伽羅は自分が『酷いことをしている』と承知の上で、とうとう夫や皇帝に知らせるための早馬を出すことはなかった。
しばらくたって、皇帝邕は見事隣国『北斉』を下し勝利を収めることとなった。
どれほどこのときを待ったことか。
伽羅は胸をなでおろすと共に、皇帝に密書を送る手はずを整えた。
とはいえ、東宮後宮には娘の麗華がいる。
密告したのが揚家だとばれれば、太子は麗華を『天杖』で打つだろう。
尉遅熾繁の例を見てもよくわかる。
あの悪太子は大貴族の娘に対しても容赦などはしないのだ。
慎重にことを進める必要があった。
そして建徳六年。西暦にして五七七年。
やっと皇帝邕が国都に戻ってきたのである。
ただし、邕は親征の途中から体調を崩すことが多くなっていた。
皇帝とはいえ、長く辛酸をなめ続けてきた『彼の心』は民や将兵と同じところにある。
時には馬を降り、兵を励ましながら共に歩いたのだ。
それは思っていたよりも彼の負担となっていたらしい。
また、帰国を遂げてみれば、愚息が東宮に『臣下の妻』を引き入れているとの報が届いた。
臣下を大切にしてきた皇帝にとって、これは天地がひっくり返るほどの驚きであった。
「今すぐ太子を呼びつけよ! 引きずってでも連れてまいれ!」
皇帝邕の怒りは大変なものであった。
愚息を詰問するために、早速、東宮に人をやろうとしたところ、逆に側近の一人が駆け込んできた。
「陛下、大変でございます!
太子殿下が西陽公のご正妻を『自分の妃とした』『尉遅氏はもう長く東宮後宮に滞在していた』と触れ回っておりまする」
実は父帝が帰ったことにより、誰かが『熾繁の件』を密告するであろうことは太子にも読めていた。
まさか揚堅の妻が密書を送ったとは思わぬだろうが、父帝に送り込まれた目付けが数人いる。
父帝が帰り次第、こっそりと言いつけるであろうことは予想しており、実際、皇帝に知らせたのは伽羅だけではなかった。
奪略の公表は、佞臣どもでさえ真っ青になって止めたのだが、悪太子は全く耳を貸さなかった。
「ふふん。太子のものとされてしまったことが公になった女であれば、今更夫の下には帰れまい。
熾繁は泣いてばかりのつまらぬ女だが、東宮の隅を飾るには良い女だ。
父帝からの叱責などいつものこと。慣れておるわ」
太子はそう言い捨てたのである。
さて、父帝の前に太子は引き立てられてきた。
左右はいつもの佞臣どもではなく、皇帝の忠臣たちが抑えている。
いずれも猛虎のような面構えの、気骨の有る男たちである。
「何ということを……お前には人の心がないのか」
邕は愕然と問うたが、太子は平然としたものであった。
「父上が何故お怒りなのか、私にはわかりませぬな。
そもそも、熾繁は年の離れた夫のことを好いていなかったのです。
そこで、夫や舅の留守を幸いとし、太子である私に助けを求めに来たというわけです。
東宮にて少々お酒を勧めましたら気が緩んだのか『どうぞ私を妃の一人として東宮に置いて下さいませ。年齢が若いので、まだ夫のものにはなっておりませぬ』と、泣き伏しながら告白するのです。
私は熾繁を哀れと思い、妃の一人としたのです」
もちろん、皇帝にはこんな嘘は通じなかった。
怒りを煽りに煽っただけである。
熾繁が夫に可愛がられ、大切にされていることは、皇帝の耳にも届いていた。
臣下の話によく耳を傾ける皇帝なのだ。
また、孫娘が可愛い尉遅大将軍ですら、孫婿の西陽公を褒め上げているのを度々聞いている。
そうでなかったとしても、評判の悪い愚息のところに駆け込んでくるような、奇特な少女などいるものか。
あれは、臣下に頭を下げてまでもらった揚麗華――――大貴族の娘であり、賢く美しい年下の少女まで粗末にするような男なのだ。
皇帝邕は懲罰杖を振り上げると、愚息を杖で散々に……それはもう、周りの臣下が止めても散々に打ち据えたのだった。
さて、太子を下がらせると同時に、皇帝邕はまず、尉遅熾繁を呼びよせた。
まずは親として『愚息の蛮行』を詫びねばならぬと思ったのだ。
熾繁は侍女に付き添われてよろめくように現れたが、すっかり男嫌いとなっており、平伏したまま面も上げられず、ただ震えている。
数か月前にもこうやって悪太子に呼びつけられて、そのまま誘拐同然に東宮に閉じ込められたのだから、さもありなん。
その姿を見ただけで、太子の言葉には一片の真実さえ無かったことがよくわかる。
「尉遅氏よ、すまなかったな。
さぞ苦しく心細い思いをしたことであろう。
朕が必ず西陽公(宇文温)のもとに戻すゆえ、しばらく待たれよ」
と、皇帝邕は優しく声をかけた。
喜ぶと思いきや、少女は首を左右に振って涙を流すばかりである。
もちろん、この数ヶ月の間に太子に情を持ってしまったから、ではない。
太子贇のものとされ、それが広く知られてしまったからには『夫に合わす顔』などない。
嘘の話も広められ、家名に益々泥を塗ってしまった。
そう思ったのだろう。
熾繁は幼いながらに、温に愛情を抱いていた。
いつか大人になり、本当の夫婦になれる日を楽しみにしていたのだから、なおさらである。
もう、熾繁に戻る場所はない。
皇帝邕は、ますます頭を抱えた。
この少女はもうどこにも嫁げぬだろうし、太子の宮から無理に出してもますます噂の的となるばかり。
かと言って、あの若さ、あの美貌で尼にするのもむごいことと思えてならない。
また、騒ぎ立てては上柱国大将軍・尉遅迥の一族、彼女の嫁ぎ先の近親に一層恥をかかせることとなる。
では、このまま知らぬふりを通せば良いか?
そんなはずもない。
尉遅熾繁の東宮滞在期間は数ヶ月にも及んだ。
一向に帰らぬわけを、熾繁の婚家の留守役たちは薄々は悟っていただろう。
そこにきて、今回、太子が熾繁の件を公にして赤っ恥をかかせた。
放置すれば、恨んで謀反を起こす恐れがある。
片や同族『宇文家』の血を引く若き皇族。片や国を昔から担ってきた『名門の老将軍』とその一族。
共に実力も人望もある大物たちだ。
ただし、今のところ、両一族からは何も申し立てが無い。
皇帝邕にとっては、そのことが何より恐ろしかった。
自身も、宇文護を恨みながら『十二年もの間』雌伏して過ごしてきたのだ。
今頃は屋敷で者どもと計り、謀反の準備をしていてもおかしくはないと思えてきた。
悪しき想像は心身をさいなみ、頭痛は益々酷くなった。
吐き気もする。
だが体調などこのさい後回しだと彼は考えた。
急がねばならない。
国のために忠義を尽くした臣下を裏切るような暗君であってはならない。
さもなくば、両一族に限らず、成り行きをうかがっている臣民たちの心さえ離れていくだろう。
忠臣の幼妻を愚息に寝取らせて平然とする主君になど、誰が仕えようか。
天ですらそんな悪王朝は見放すだろう。
易姓革命(天帝の思惑による王朝断絶を行う革命)が今すぐに起こってもおかしくはないのだ。
悩んだ挙句、皇帝邕はとうとう一計を思いついた。
それは親としては避けたい手であったが、この際、贅沢も言っていられまい。
『兄帝の遺志』を継いだ限りは、国を割るような争いに発展させてはなぬのである。
皇帝邕は熾繁を下がらせると密かに文を書き、尉遅迥や宇文温のもとへと届けさせた。
確かにこれならば尉遅迥や宇文温、その一族も納得出来ようという内容であった。
叫びたいほどに苦しかった。
だが、それは出来ぬのだ。
伽羅は自分が『酷いことをしている』と承知の上で、とうとう夫や皇帝に知らせるための早馬を出すことはなかった。
しばらくたって、皇帝邕は見事隣国『北斉』を下し勝利を収めることとなった。
どれほどこのときを待ったことか。
伽羅は胸をなでおろすと共に、皇帝に密書を送る手はずを整えた。
とはいえ、東宮後宮には娘の麗華がいる。
密告したのが揚家だとばれれば、太子は麗華を『天杖』で打つだろう。
尉遅熾繁の例を見てもよくわかる。
あの悪太子は大貴族の娘に対しても容赦などはしないのだ。
慎重にことを進める必要があった。
そして建徳六年。西暦にして五七七年。
やっと皇帝邕が国都に戻ってきたのである。
ただし、邕は親征の途中から体調を崩すことが多くなっていた。
皇帝とはいえ、長く辛酸をなめ続けてきた『彼の心』は民や将兵と同じところにある。
時には馬を降り、兵を励ましながら共に歩いたのだ。
それは思っていたよりも彼の負担となっていたらしい。
また、帰国を遂げてみれば、愚息が東宮に『臣下の妻』を引き入れているとの報が届いた。
臣下を大切にしてきた皇帝にとって、これは天地がひっくり返るほどの驚きであった。
「今すぐ太子を呼びつけよ! 引きずってでも連れてまいれ!」
皇帝邕の怒りは大変なものであった。
愚息を詰問するために、早速、東宮に人をやろうとしたところ、逆に側近の一人が駆け込んできた。
「陛下、大変でございます!
太子殿下が西陽公のご正妻を『自分の妃とした』『尉遅氏はもう長く東宮後宮に滞在していた』と触れ回っておりまする」
実は父帝が帰ったことにより、誰かが『熾繁の件』を密告するであろうことは太子にも読めていた。
まさか揚堅の妻が密書を送ったとは思わぬだろうが、父帝に送り込まれた目付けが数人いる。
父帝が帰り次第、こっそりと言いつけるであろうことは予想しており、実際、皇帝に知らせたのは伽羅だけではなかった。
奪略の公表は、佞臣どもでさえ真っ青になって止めたのだが、悪太子は全く耳を貸さなかった。
「ふふん。太子のものとされてしまったことが公になった女であれば、今更夫の下には帰れまい。
熾繁は泣いてばかりのつまらぬ女だが、東宮の隅を飾るには良い女だ。
父帝からの叱責などいつものこと。慣れておるわ」
太子はそう言い捨てたのである。
さて、父帝の前に太子は引き立てられてきた。
左右はいつもの佞臣どもではなく、皇帝の忠臣たちが抑えている。
いずれも猛虎のような面構えの、気骨の有る男たちである。
「何ということを……お前には人の心がないのか」
邕は愕然と問うたが、太子は平然としたものであった。
「父上が何故お怒りなのか、私にはわかりませぬな。
そもそも、熾繁は年の離れた夫のことを好いていなかったのです。
そこで、夫や舅の留守を幸いとし、太子である私に助けを求めに来たというわけです。
東宮にて少々お酒を勧めましたら気が緩んだのか『どうぞ私を妃の一人として東宮に置いて下さいませ。年齢が若いので、まだ夫のものにはなっておりませぬ』と、泣き伏しながら告白するのです。
私は熾繁を哀れと思い、妃の一人としたのです」
もちろん、皇帝にはこんな嘘は通じなかった。
怒りを煽りに煽っただけである。
熾繁が夫に可愛がられ、大切にされていることは、皇帝の耳にも届いていた。
臣下の話によく耳を傾ける皇帝なのだ。
また、孫娘が可愛い尉遅大将軍ですら、孫婿の西陽公を褒め上げているのを度々聞いている。
そうでなかったとしても、評判の悪い愚息のところに駆け込んでくるような、奇特な少女などいるものか。
あれは、臣下に頭を下げてまでもらった揚麗華――――大貴族の娘であり、賢く美しい年下の少女まで粗末にするような男なのだ。
皇帝邕は懲罰杖を振り上げると、愚息を杖で散々に……それはもう、周りの臣下が止めても散々に打ち据えたのだった。
さて、太子を下がらせると同時に、皇帝邕はまず、尉遅熾繁を呼びよせた。
まずは親として『愚息の蛮行』を詫びねばならぬと思ったのだ。
熾繁は侍女に付き添われてよろめくように現れたが、すっかり男嫌いとなっており、平伏したまま面も上げられず、ただ震えている。
数か月前にもこうやって悪太子に呼びつけられて、そのまま誘拐同然に東宮に閉じ込められたのだから、さもありなん。
その姿を見ただけで、太子の言葉には一片の真実さえ無かったことがよくわかる。
「尉遅氏よ、すまなかったな。
さぞ苦しく心細い思いをしたことであろう。
朕が必ず西陽公(宇文温)のもとに戻すゆえ、しばらく待たれよ」
と、皇帝邕は優しく声をかけた。
喜ぶと思いきや、少女は首を左右に振って涙を流すばかりである。
もちろん、この数ヶ月の間に太子に情を持ってしまったから、ではない。
太子贇のものとされ、それが広く知られてしまったからには『夫に合わす顔』などない。
嘘の話も広められ、家名に益々泥を塗ってしまった。
そう思ったのだろう。
熾繁は幼いながらに、温に愛情を抱いていた。
いつか大人になり、本当の夫婦になれる日を楽しみにしていたのだから、なおさらである。
もう、熾繁に戻る場所はない。
皇帝邕は、ますます頭を抱えた。
この少女はもうどこにも嫁げぬだろうし、太子の宮から無理に出してもますます噂の的となるばかり。
かと言って、あの若さ、あの美貌で尼にするのもむごいことと思えてならない。
また、騒ぎ立てては上柱国大将軍・尉遅迥の一族、彼女の嫁ぎ先の近親に一層恥をかかせることとなる。
では、このまま知らぬふりを通せば良いか?
そんなはずもない。
尉遅熾繁の東宮滞在期間は数ヶ月にも及んだ。
一向に帰らぬわけを、熾繁の婚家の留守役たちは薄々は悟っていただろう。
そこにきて、今回、太子が熾繁の件を公にして赤っ恥をかかせた。
放置すれば、恨んで謀反を起こす恐れがある。
片や同族『宇文家』の血を引く若き皇族。片や国を昔から担ってきた『名門の老将軍』とその一族。
共に実力も人望もある大物たちだ。
ただし、今のところ、両一族からは何も申し立てが無い。
皇帝邕にとっては、そのことが何より恐ろしかった。
自身も、宇文護を恨みながら『十二年もの間』雌伏して過ごしてきたのだ。
今頃は屋敷で者どもと計り、謀反の準備をしていてもおかしくはないと思えてきた。
悪しき想像は心身をさいなみ、頭痛は益々酷くなった。
吐き気もする。
だが体調などこのさい後回しだと彼は考えた。
急がねばならない。
国のために忠義を尽くした臣下を裏切るような暗君であってはならない。
さもなくば、両一族に限らず、成り行きをうかがっている臣民たちの心さえ離れていくだろう。
忠臣の幼妻を愚息に寝取らせて平然とする主君になど、誰が仕えようか。
天ですらそんな悪王朝は見放すだろう。
易姓革命(天帝の思惑による王朝断絶を行う革命)が今すぐに起こってもおかしくはないのだ。
悩んだ挙句、皇帝邕はとうとう一計を思いついた。
それは親としては避けたい手であったが、この際、贅沢も言っていられまい。
『兄帝の遺志』を継いだ限りは、国を割るような争いに発展させてはなぬのである。
皇帝邕は熾繁を下がらせると密かに文を書き、尉遅迥や宇文温のもとへと届けさせた。
確かにこれならば尉遅迥や宇文温、その一族も納得出来ようという内容であった。
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