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アリシア外伝・窓の外の雪
アリシア外伝・窓の外の雪 7
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一人で行けば3時間ちょいで済むはずの買い物だった。
しかしその倍ほどの時間をかけてしまった私たちは、途中で夕食をとってから城に帰ることにした。
とりあえず用は済ませたし、お茶は夜間か明日の朝届けに行けばことたりる。
ついでにその時、王には『良い報告』をしたいものだ。
しかしリオンは首をブンブンと振った。
「ええっ! 嫌ですそんなのっ。お城に帰って兄様と一緒に食べたいですっ!!」
彼はそうわめいたけれど、知ったことではない。
私はお腹が減ったんだ。
誰かさんのおかげで疲れてクタクタなんだ。
それに、ちょっと試してみたいこともある。
「あのねえ。兄が居ないと町でご飯も食べられないなんて、人間として情けないわよ?」
「ぐっ……人間として……そこまでいいますか……」
リオンが悔しそうに唇を噛んだ。
ちょっぴりだけど、自分が人より世間知らずだという自覚はあったようだ。
「何度でも言うわよ。そんな弟が居てエルも恥ずかしいな~。可哀想だな~」
挑発するように言うとリオンはすぐに引っかかる。まだまだ子供なのだ。それも、見た目以下の。
「ば、馬鹿にしないで下さいっ!!
夕食ぐらい兄様がいらっしゃらなくても食べられます!!
このリオン、兄様の面目を潰すような事は絶対にいたしませんっ!!」
……まったく、健気と言おうか馬鹿と言おうか。
ひっかかったリオンを連れて、若向きのちょっと高級な店に入る。
ここはガルーダ領ではおいしいと評判のお店だ。私も城の女の子たちと何度か行ったことがある。
そう、一緒に掃除するぐらいでは仲良くなれそうもないので『食べ物』で釣ってみることにしたのだ。
思ったとおり、メニューのイラストを見ながら選ぶ彼は、ちょっと口元がほころんでいる。
……が、私の視線に気づくとハッとしたようにまた無表情に戻る。
ほんと可愛くない。
それでも料理が運ばれてくると、彼は大きな瞳を輝かせた。
そうして、ここだけは兄がきちんと躾けたようで、ちゃんと「いただきます」をして、スプーンを口元に運ぶさまは、エルじゃないけど確かにとても可愛らしい。
しかしその倍ほどの時間をかけてしまった私たちは、途中で夕食をとってから城に帰ることにした。
とりあえず用は済ませたし、お茶は夜間か明日の朝届けに行けばことたりる。
ついでにその時、王には『良い報告』をしたいものだ。
しかしリオンは首をブンブンと振った。
「ええっ! 嫌ですそんなのっ。お城に帰って兄様と一緒に食べたいですっ!!」
彼はそうわめいたけれど、知ったことではない。
私はお腹が減ったんだ。
誰かさんのおかげで疲れてクタクタなんだ。
それに、ちょっと試してみたいこともある。
「あのねえ。兄が居ないと町でご飯も食べられないなんて、人間として情けないわよ?」
「ぐっ……人間として……そこまでいいますか……」
リオンが悔しそうに唇を噛んだ。
ちょっぴりだけど、自分が人より世間知らずだという自覚はあったようだ。
「何度でも言うわよ。そんな弟が居てエルも恥ずかしいな~。可哀想だな~」
挑発するように言うとリオンはすぐに引っかかる。まだまだ子供なのだ。それも、見た目以下の。
「ば、馬鹿にしないで下さいっ!!
夕食ぐらい兄様がいらっしゃらなくても食べられます!!
このリオン、兄様の面目を潰すような事は絶対にいたしませんっ!!」
……まったく、健気と言おうか馬鹿と言おうか。
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……が、私の視線に気づくとハッとしたようにまた無表情に戻る。
ほんと可愛くない。
それでも料理が運ばれてくると、彼は大きな瞳を輝かせた。
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