滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
313 / 437
アリシア外伝・窓の外の雪 

アリシア外伝・窓の外の雪 5

しおりを挟む
 甘やかしたい気持ちを振り切って、何とか目的の場所にたどり着いた。
 そこは老夫婦がやっているお茶屋さんで、大抵の種類は扱っている。

 外国産のちょっと目を引く器に入れられた高級品も多く、リオンはそれが珍しいようで、キョロキョロしては目を輝かせている。

 こうしてると、本当に年相応で可愛らしいのになぁ。

 じ~っと見ていると、リオンがハッとしたように振り返って一瞬赤くなった後、いつもの無表情に戻ってしまった。

 チッ。
 感づきやがったか。もっと見ていたかったのに。

「リオン? アンダル産のお茶は見つかった?」

 何気なくを装って話しかけると、リオンは目を丸くした。

「ええっ! 僕が見つけるのですかっ!?
 アリシアさんの方がうんと年上なのにっ!!
 兄様だったら、すぐに見つけきて『これだよ』って優しく微笑んで下さるのにっ!!」

 ドやかましいわ。

 3才の子供じゃあるまいし、なんでそこまでやってやんなきゃなんねーんだよっ!!
 わたしゃ5歳のころには一人で10品ぐらい暗記してお使いに行っていたわっ!

 ……と喉もとまで出かかったが、ここで喧嘩になったら王に申し訳が立たない。
 せっかくリオンと仲良くなれるように気を使って送り出して下さったのだ。

 再びこめかみの辺りがピクピクするが、何とか押さえて私は平静な振りをした。

 そうして棚の見方を丁寧に説明し、お金の払い方も説明し、ついでにコイツは品物を無言・無表情で受け取りやがったので『お礼』の言い方まで懇切丁寧に説明する。

 はぁ。何で私がこんな目に。
 言えよ、礼ぐらい。
 私に言われなくたってさ。

 オマエいつもいつもいつも、兄にはバカ丁寧に礼を言ってるだろ。
 あそこまで常にやれとは言わないけれど、場をわきまえろ。

 でも多分、……リオンは過保護なバカ兄がお金を払って品物を受け取ってる間、いつもいつも『見てるだけ~』だったのだろう。
 それも、支払いの方ではなくバカ兄の美しい横顔の方をうっとりと。

 だからこういう『あたりまえのこと』が身についていないのだ。
 ここは私があのバカ兄に代わって何とかしてやらねば。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】魔女を求めて今日も彼らはやって来る。

まるねこ
ファンタジー
私の名前はエイシャ。私の腰から下は滑らかな青緑の鱗に覆われた蛇のような形をしており、人間たちの目には化け物のように映るようだ。神話に出てくるエキドナは私の祖母だ。 私が住むのは魔女エキドナが住む森と呼ばれている森の中。 昼間でも薄暗い森には多くの魔物が闊歩している。細い一本道を辿って歩いていくと、森の中心は小高い丘になっており、小さな木の家を見つけることが出来る。 魔女に会いたいと思わない限り森に入ることが出来ないし、無理にでも入ってしまえば、道は消え、迷いの森と化してしまう素敵な仕様になっている。 そんな危険を犯してまで森にやって来る人たちは魔女に頼り、願いを抱いてやってくる。 見目麗しい化け物に逢いに来るほどの願いを持つ人間たち。 さて、今回はどんな人間がくるのかしら? ※グロ表現も含まれています。読む方はご注意ください。 ダークファンタジーかも知れません…。 10/30ファンタジーにカテゴリ移動しました。 今流行りAIアプリで絵を作ってみました。 なろう小説、カクヨムにも投稿しています。 Copyright©︎2021-まるねこ

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

処理中です...