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アリシア外伝・窓の外の雪 

アリシア外伝・窓の外の雪 4

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「何やってんのよ、リオン!!
 さっさと行かないと帰りが遅くなるわよっ!!
 それでなくとも、もうずいぶん遅くなっているのに!!」

 そう言いながら引っ張っていこうとしたら、振り払われた。

「アリシアさんは本当に意地悪ですねっ。
 兄様なら『リオンが見たいならいいよ~』っておっしゃって、いつまでもニコニコ待っていて下さるのに。
 それに僕が遠慮しても、何かキレイな物を買ってくださるのにっ!」

 あ、あの馬鹿男は時間も場所も問わず、外でもド過保護全開なのかっ!!
 アレが子供なんて持とうものなら大変な事になりそうだ。
 事実、もう弟が大変なことになっている。

「……リオン。そういうのは帰りに見ればいいんじゃない?
 私たちは遊びに来ているわけじゃなくて王命で『お使い』に来ているの。
 さっさと用を済ませて、それからゆっくり見ましょうよ」

 リオンの言動にピキピキと青筋が立ちそうになるが、かろうじて我慢し優しく接する。

「で、でもっ……」

 名残惜しそうなリオンを再度引っ張ると、今度はちゃんとついてきた。

 ほら、ちゃんと説明すればわかる子なのだ。
 あのバカ兄がドアホだからこんな感じに育ってしまっただけなのだ。

 でもリオンを見ると、それはそれはしょんぼりしていて、つい甘やかしてしまいたくなるのもわかるような気がする。

 もしここで引き返したら……。

 もしも引き返して、リオンが嬉しそうに眺めていたキラキラ輝くガラス玉のブレスレッドを買ってあげたなら……リオンは私に懐くだろうか。
 懐いて私にも笑ってくれるようになるだろうか?

 いやいやエルがあんなな分、私が厳しくしてやらねばこの子はおかしいまま育ってしまう。


 
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