311 / 437
アリシア外伝・窓の外の雪
アリシア外伝・窓の外の雪 3
しおりを挟む
城から目的地まではそう遠くない。
乗合馬車を1時間ほど利用し、あとは左右に広がる商店街に沿いながら歩いて20分というところ。
しかし着くまでの道のりは、大変だった。
商店街の入り口付近は道具屋がズラッと建ち並んでいるのだが、地図を使いながら進むということが、リオンには難しいようだった。
「え~……っと、あの建物が時計……塔?
……だから左に曲がって、それから……う~ん」
地図を片手に考え込むリオンに、
「時計塔はあれではなくて、赤い屋根がチラッと見えてる高い建物。
でもって、向こうに見えるのが共同井戸。
地図の縮尺がここに載ってるでしょ?
だから、真っ直ぐ30メルトルほど歩いてそれから右よ」
と、いちいち親切に教えてあげる。
しかし彼は、それさえうっとうしいらしい。
「わ、わかってます! いちいちうるさいですねっ!!」
いや、全然わかってないし。
リオンは時々あのバカ兄と町に出かけてはいるが、何と言うかあまりにも過保護にされてるせいか、地図さえろくに使えない。
明後日の方向に進もうとするのを何度も何度も引き戻し、丁寧に教えては修正させる。
自分で地図を見たほうが早いに決まっているが、この子だっていつかは兄から独り立ちしなければならない。
それに一度教えさえすれば、次からは同じ間違いをしないぐらいには飲み込みが早い。
面倒でもきちんと仕込む方が、この子のためにはなるのだ。
それにしても、エルさえしっかりしていればリオンだって今頃、もっと男らしくキリッと育っていたはず。
そうして友達も大勢出来て、町にだって一人で出かけ、兄離れもとうに出来ていたはずなのにあの馬鹿兄めが。
まったく忌々しいヤツだ……。
さて、途中からはリオンもどうにかこうにか地図を使えるようになり、食品店ゾーンまで無事たどり着いた。
あと2ブロックも抜ければもう、目的の店が見えることだろう。
あたりはこの寒さにもかかわらずにぎわっていて、仕入れ用の大型馬車が頻繁に行きかうと共に、買い物の人々でごったがえしている。
「え~っと、アンダル産のお茶を扱ってる店はこの向こ……ええっ!?」
リオンが居るべき場所を振り返ると、もうそこに彼の姿は無かった。
5秒前には居たのに、だ。
しまった……やっぱり迷子紐が必要だったかっ!!
王からいただいた『紋入りのバッチ』を付けているから、この町のチンピラはリオンに手を出したりは出来ないはず。
けれど、万が一トラブル等があったら危ない!!
チンピラの方がっ!!
慌てて駆け戻ると、リオンは食品店に混じって出店している小さなアクセサリーの露天商に引っかかっていた。
乗合馬車を1時間ほど利用し、あとは左右に広がる商店街に沿いながら歩いて20分というところ。
しかし着くまでの道のりは、大変だった。
商店街の入り口付近は道具屋がズラッと建ち並んでいるのだが、地図を使いながら進むということが、リオンには難しいようだった。
「え~……っと、あの建物が時計……塔?
……だから左に曲がって、それから……う~ん」
地図を片手に考え込むリオンに、
「時計塔はあれではなくて、赤い屋根がチラッと見えてる高い建物。
でもって、向こうに見えるのが共同井戸。
地図の縮尺がここに載ってるでしょ?
だから、真っ直ぐ30メルトルほど歩いてそれから右よ」
と、いちいち親切に教えてあげる。
しかし彼は、それさえうっとうしいらしい。
「わ、わかってます! いちいちうるさいですねっ!!」
いや、全然わかってないし。
リオンは時々あのバカ兄と町に出かけてはいるが、何と言うかあまりにも過保護にされてるせいか、地図さえろくに使えない。
明後日の方向に進もうとするのを何度も何度も引き戻し、丁寧に教えては修正させる。
自分で地図を見たほうが早いに決まっているが、この子だっていつかは兄から独り立ちしなければならない。
それに一度教えさえすれば、次からは同じ間違いをしないぐらいには飲み込みが早い。
面倒でもきちんと仕込む方が、この子のためにはなるのだ。
それにしても、エルさえしっかりしていればリオンだって今頃、もっと男らしくキリッと育っていたはず。
そうして友達も大勢出来て、町にだって一人で出かけ、兄離れもとうに出来ていたはずなのにあの馬鹿兄めが。
まったく忌々しいヤツだ……。
さて、途中からはリオンもどうにかこうにか地図を使えるようになり、食品店ゾーンまで無事たどり着いた。
あと2ブロックも抜ければもう、目的の店が見えることだろう。
あたりはこの寒さにもかかわらずにぎわっていて、仕入れ用の大型馬車が頻繁に行きかうと共に、買い物の人々でごったがえしている。
「え~っと、アンダル産のお茶を扱ってる店はこの向こ……ええっ!?」
リオンが居るべき場所を振り返ると、もうそこに彼の姿は無かった。
5秒前には居たのに、だ。
しまった……やっぱり迷子紐が必要だったかっ!!
王からいただいた『紋入りのバッチ』を付けているから、この町のチンピラはリオンに手を出したりは出来ないはず。
けれど、万が一トラブル等があったら危ない!!
チンピラの方がっ!!
慌てて駆け戻ると、リオンは食品店に混じって出店している小さなアクセサリーの露天商に引っかかっていた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。


神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

なぜか第三王子と結婚することになりました
鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!?
こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。
金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です
ハッピーエンドにするつもり
長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる