滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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アリシア外伝・窓の外の雪 

アリシア外伝・窓の外の雪 3

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 城から目的地まではそう遠くない。
 乗合馬車を1時間ほど利用し、あとは左右に広がる商店街に沿いながら歩いて20分というところ。

 しかし着くまでの道のりは、大変だった。
 商店街の入り口付近は道具屋がズラッと建ち並んでいるのだが、地図を使いながら進むということが、リオンには難しいようだった。

「え~……っと、あの建物が時計……塔?
 ……だから左に曲がって、それから……う~ん」

 地図を片手に考え込むリオンに、

「時計塔はあれではなくて、赤い屋根がチラッと見えてる高い建物。
 でもって、向こうに見えるのが共同井戸。
 地図の縮尺がここに載ってるでしょ?
 だから、真っ直ぐ30メルトルほど歩いてそれから右よ」

 と、いちいち親切に教えてあげる。
 しかし彼は、それさえうっとうしいらしい。

「わ、わかってます! いちいちうるさいですねっ!!」

 いや、全然わかってないし。

 リオンは時々あのバカ兄と町に出かけてはいるが、何と言うかあまりにも過保護にされてるせいか、地図さえろくに使えない。

 明後日の方向に進もうとするのを何度も何度も引き戻し、丁寧に教えては修正させる。

 自分で地図を見たほうが早いに決まっているが、この子だっていつかは兄から独り立ちしなければならない。
 それに一度教えさえすれば、次からは同じ間違いをしないぐらいには飲み込みが早い。 

 面倒でもきちんと仕込む方が、この子のためにはなるのだ。

 それにしても、エルさえしっかりしていればリオンだって今頃、もっと男らしくキリッと育っていたはず。

 そうして友達も大勢出来て、町にだって一人で出かけ、兄離れもとうに出来ていたはずなのにあの馬鹿兄めが。

 まったく忌々しいヤツだ……。

 さて、途中からはリオンもどうにかこうにか地図を使えるようになり、食品店ゾーンまで無事たどり着いた。
 あと2ブロックも抜ければもう、目的の店が見えることだろう。

 あたりはこの寒さにもかかわらずにぎわっていて、仕入れ用の大型馬車が頻繁に行きかうと共に、買い物の人々でごったがえしている。

「え~っと、アンダル産のお茶を扱ってる店はこの向こ……ええっ!?」

 リオンが居るべき場所を振り返ると、もうそこに彼の姿は無かった。
 5秒前には居たのに、だ。

 しまった……やっぱり迷子紐が必要だったかっ!!

 王からいただいた『紋入りのバッチ』を付けているから、この町のチンピラはリオンに手を出したりは出来ないはず。

 けれど、万が一トラブル等があったら危ない!!
 チンピラの方がっ!!

 慌てて駆け戻ると、リオンは食品店に混じって出店している小さなアクセサリーの露天商に引っかかっていた。


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