滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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外伝 ヴァティールの独り言

外伝 ヴァティールの独り言12

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 でも残念だったな。
 お前に対する同情は、それだけだ。

 ワタシは自分の本体を見つけるまで、この体を返すつもりはない。
 文句なら、ワタシの本体を取り上げたアースラに言ってくれ。

 お前の弟は耐魔性に優れているし、丈夫で長持ち・美しい。

 これ以上の器があろうか。

 アースラの呪いのかかったコイツは生きようと思えば永遠にでも生きられるのだから、ちょっとぐらい貸してくれたっていいじゃないか。

 ……そんな思いはエルに届くはずもなく、これからもワタシはエルに恨まれて生きるのだろう。

 ま、いいか。

 人間に恨まれたぐらい、ワタシは痛くもかゆくもない。
 元々人間に恨まれるなんて何度もあったし、エルは憎い王家ゆかりの人間だ。

 ワタシの胸が痛むはずはない。

 それでもエルの長々しい説教に時々頷きながら、聞いている振りだけは続けてやる。

 すべての身内を失ったエルにとって、リオンは心の支えだったろう。
 だから話を聞いて、それで気が済むなら聞くだけは聞いてやる。

 でもそれで終わり。

 なぁエル……お前の弟が『人間』であるなら、あの時死ななきゃいけなかったんだよ。

 甦ったとしても、それは『人間ではない何か』でしかないとワタシは思う。
 アースラは数々の死体を蘇らせて、時に兵士や神官として使ってもいたが、あれはもう人間とは呼べない代物だった。

 リオンの『人間としての生』はやるべきことをやり終えて、もう幕を閉じたのだ。

 いつかお前にも、リオン以外の大切な人が出来るだろう。

 ワタシにとってエリスやアリシアがそうだったように、いつかその大切な人たちが、お前の傷を癒してくれることだろう。

 別に私はエルのことなんかどうでも良いし、娘たちほど可愛いわけじゃない。
 すこし顔が我が友シヴァに似ているだけの、ただの子供だ。

 それでもワタシは…………。

 いつかお前にも、

 新たなる幸せが訪れることを願っているよ。


      Fin
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