296 / 437
外伝 ヴァティールの独り言
外伝 ヴァティールの独り言8
しおりを挟む
アースラは自分で決断し、ワタシを『戦の兵器』とするために妹を使ったくせに、まるでワタシが『妹の仇』であるかのように扱いだした。
オマエがワタシをあの体に突っ込んだのだ。
どう考えても、妹の魂が消滅したのはオマエのせいだろ。バーカ、バーカ!
アースラの妹が死んだことで、その女の赤子の養育役がワタシまわってきた。
赤子は大変可愛かった。
柔らかな金の巻き毛に、青空のような澄んだ瞳。
今までに目にした人間の中で、一番愛らしかったように思う。
アースラにイビられる日々を送っていたワタシにとって、幼子の存在は救いだった。
人間なんて、わずかな寿命しかない弱い生き物でしかないと思っていたが、違う。
ワタシは確かにこの…………か弱い人間の子供に救われたのだ。
もちろん赤子の世話は大変だった。
想像以上に大変だった。
眠っている時はただただ愛らしいばかりなのだが、目を覚ますと絶叫するように泣く。
この体は実の母親のものではあるが、中身はワタシ。
気配の違いを感じたのだろう……赤子は中々私に懐かなかった。
その頃には戦争は終結に向かっていたので、ワタシは地下神殿を出ることはほぼ許されておらず、赤子の世話をするだけの毎日だった。
もちろん、力のほとんどは封じられたまま。
生きた燃料として魔力を絞られながら、泣き続ける赤子を一晩中抱いてあやし、下の世話もした。
抱っこしていると鼻水やよだれをなすりつけられるし、何でだかわからんが、すぐに体調を崩す。
泣きすぎればせっかく与えたミルクは吐くし、それはワタシの服にかかった。
アースラに封じられているワタシは魔力が使えない。
仕方がないので、自力で地下の湧き水を使って洗濯する。
そんなことの繰り返し。
見かけは人形にように愛らしいのに、人間の赤子の行動は悪魔よりえげつなかった。
何でワタシがこんな目に……。
床に叩きつけてやろうかと思ったことも何度かあったが、そんな事をすればアースラにどんな目に遭わされるか知れたものではない。
それでも奴は人間。
ワタシが魔力を使えずとも、『時』がアースラをいずれ殺す。
オマエがワタシをあの体に突っ込んだのだ。
どう考えても、妹の魂が消滅したのはオマエのせいだろ。バーカ、バーカ!
アースラの妹が死んだことで、その女の赤子の養育役がワタシまわってきた。
赤子は大変可愛かった。
柔らかな金の巻き毛に、青空のような澄んだ瞳。
今までに目にした人間の中で、一番愛らしかったように思う。
アースラにイビられる日々を送っていたワタシにとって、幼子の存在は救いだった。
人間なんて、わずかな寿命しかない弱い生き物でしかないと思っていたが、違う。
ワタシは確かにこの…………か弱い人間の子供に救われたのだ。
もちろん赤子の世話は大変だった。
想像以上に大変だった。
眠っている時はただただ愛らしいばかりなのだが、目を覚ますと絶叫するように泣く。
この体は実の母親のものではあるが、中身はワタシ。
気配の違いを感じたのだろう……赤子は中々私に懐かなかった。
その頃には戦争は終結に向かっていたので、ワタシは地下神殿を出ることはほぼ許されておらず、赤子の世話をするだけの毎日だった。
もちろん、力のほとんどは封じられたまま。
生きた燃料として魔力を絞られながら、泣き続ける赤子を一晩中抱いてあやし、下の世話もした。
抱っこしていると鼻水やよだれをなすりつけられるし、何でだかわからんが、すぐに体調を崩す。
泣きすぎればせっかく与えたミルクは吐くし、それはワタシの服にかかった。
アースラに封じられているワタシは魔力が使えない。
仕方がないので、自力で地下の湧き水を使って洗濯する。
そんなことの繰り返し。
見かけは人形にように愛らしいのに、人間の赤子の行動は悪魔よりえげつなかった。
何でワタシがこんな目に……。
床に叩きつけてやろうかと思ったことも何度かあったが、そんな事をすればアースラにどんな目に遭わされるか知れたものではない。
それでも奴は人間。
ワタシが魔力を使えずとも、『時』がアースラをいずれ殺す。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。


思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる