滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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外伝 ヴァティールの独り言

外伝 ヴァティールの独り言7

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 我が愛娘――――――養女アリシアは、シヴァ王の子供の片割れだった。
 子らは双子だったのだ。

 元々魔力が高いシヴァ王と、ワタシの本体の一部を使って改造されたアースラの妹リリーシャの娘だけあって、魔的な素養は抜群に高い。

 アースラは妹リリーシャに命じ、何体かの使い魔と共にその赤ん坊を育てさせていた。場所はあのエルシオンにある地下神殿だ。

 どんなあくどい魔道も迷いなく使いこなせるように、人と離して英才教育を施すつもりだったようだ。

 しかしアースラの妹が死んだため、その役目がワタシに回ってきた。

 アースラの妹は、人間としては上々の魔道士だったのだが、私の暴走を止めようとして死んだ。
 ワタシは器が美しくないと、勝手に精神が暴走してしまう。
 アースラの妹は、それに巻き込まれて死んだのだ。

 言っておくが、この暴走は我侭病ではない。

 アースラは最初こそまともな体を用意してきたが、耐魔性が低いためにすぐに心臓が止まり、数日でボロボロになった。
 戦闘行為を行うときなどは、数時間さえも、もたない。
 呪文一発撃っただけで壊れる事も稀ではなかった。

 そのうち罪人をメインとした生きた人間は調達が間に合わなくなり、アースラは神官の地位を利用して、新鮮な死体を用意してくるようになった。
 葬儀に使った一般市民の死体をワタシの器としたのである。

 しかし死体だと、生きた人間よりも更にもちが悪い。

 容姿のランクもどんどん下がり、ついには蛆のわいたおぞましい戦死体に入れられる羽目となったのだ。

 いや、これで我慢できる奴がいたら、顔を見てみたい。
 ……さすがのワタシも我慢できず、精神が勝手に遊離しアースラの制御を踏み越えて暴走した。

 それからだ。
 不細工な奴をあてがわれると、ブツブツと蕁麻疹が出て暴走するようになったのは。


 私が最終的にあてがわれたのは、アースラの妹の体だ。

 アースラは氷の棺に妹を入れて、いつか蘇生させようとしていたみたいだが、その前にワタシの器が尽きた。
 妹の前は城の女官などがあてがわれていたが、耐魔性があるわけじゃないからすぐに壊れる。

 他国から美しい人間をさらってくる事もあったが、それはさすがに少数だった。アレス帝国との交戦最中に『人知れず』たくさんの美しい人間を調達するのは、さすがのアースラでも困難だったのだ。

 ワタシが入った瞬間、元々壊れていたリリーシャの魂は、完全に消滅した。




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