281 / 437
リオン編 その日
リオン編 その日1
しおりを挟む
気がつくと闇。
どれほどの間、僕は暗闇の中を漂っていたのだろう。
戒められた体は、指一本動かせなかった。
先程までは意識も奪われていて、何がなんだかわからない。
せめて兄を呼んでみたいのに、声すらも出せなかった。
そんな僕の世界に、ふいに一筋の光が差した。
体が軽くなり、それは封印が一つ解けるたびに感じるモノと同じだった。
……兄様?
まだ夢を見ているように体がふわふわしている。
けれど、外の世界に兄様が見えた。
また背が高くなっているね、兄様。
僕が意識を失っている間に、きっと数年の月日が流れていたに違いない。
もう髪は染めてないんだ。
昔大好きだったあの金の髪が光にきらめいていて、とっても綺麗。
顔立ちも大人びて、随分変わっている。
でも、毎日目隠しをして育ってきた僕だ。
たとえ姿が変わろうとも、兄の気配を間違えたりはしない。
兄は今、優しく微笑んでいる。
とても嬉しそうに、幸せそうに微笑んでいる。
誰に?
僕にだよね。
兄様を守って死ぬまで戦い抜いた、僕にだよね?
あれ……違うみたい。もうひとり誰かいる。他にも数人。
隣に居るのは誰?
僕はここだよ。
優美な白いドレスを着て、姫君のように兄様の隣にいるのは、いったい誰だろう?
兄様を囲むように集っている人々は、いったい誰だろう?
うっすらと庭園が見える。僕の知らない場所。
だけど、色とりどりのハイドロレンジアが見事に咲き誇っていて美しい。
あれは、僕が大好きだった花。
兄様と一緒に摘んだこともあった。
国を出て初めての誕生日には、兄様があの花で作った花束を僕に下さったりもしたのだ。
兄様はドレス姿の女性の手を取って、庭園の真ん中に引かれた赤い絨毯の上を歩いている。
その先にはアルフレッド王と……髪や瞳の色が亡き妹に似た、知らない姫君。
王と共に、その少女も穏やかに微笑んでいる。
白いドレスの女性は、兄に手を取られ、王の前に進み出た。
ベールが兄の手により上げられ、幸せに輝くその女性の顔が見えた。
ああ。あの白いドレスの女性は『アリシア』だ。
髪を結い上げ、純白のベールをかぶり……ところどころにハイドロレンジアの花をさして微笑む彼女は、僕の知る彼女とは雰囲気も顔立ちも全く変わって見えた。
でも間違いない。
どれほどの間、僕は暗闇の中を漂っていたのだろう。
戒められた体は、指一本動かせなかった。
先程までは意識も奪われていて、何がなんだかわからない。
せめて兄を呼んでみたいのに、声すらも出せなかった。
そんな僕の世界に、ふいに一筋の光が差した。
体が軽くなり、それは封印が一つ解けるたびに感じるモノと同じだった。
……兄様?
まだ夢を見ているように体がふわふわしている。
けれど、外の世界に兄様が見えた。
また背が高くなっているね、兄様。
僕が意識を失っている間に、きっと数年の月日が流れていたに違いない。
もう髪は染めてないんだ。
昔大好きだったあの金の髪が光にきらめいていて、とっても綺麗。
顔立ちも大人びて、随分変わっている。
でも、毎日目隠しをして育ってきた僕だ。
たとえ姿が変わろうとも、兄の気配を間違えたりはしない。
兄は今、優しく微笑んでいる。
とても嬉しそうに、幸せそうに微笑んでいる。
誰に?
僕にだよね。
兄様を守って死ぬまで戦い抜いた、僕にだよね?
あれ……違うみたい。もうひとり誰かいる。他にも数人。
隣に居るのは誰?
僕はここだよ。
優美な白いドレスを着て、姫君のように兄様の隣にいるのは、いったい誰だろう?
兄様を囲むように集っている人々は、いったい誰だろう?
うっすらと庭園が見える。僕の知らない場所。
だけど、色とりどりのハイドロレンジアが見事に咲き誇っていて美しい。
あれは、僕が大好きだった花。
兄様と一緒に摘んだこともあった。
国を出て初めての誕生日には、兄様があの花で作った花束を僕に下さったりもしたのだ。
兄様はドレス姿の女性の手を取って、庭園の真ん中に引かれた赤い絨毯の上を歩いている。
その先にはアルフレッド王と……髪や瞳の色が亡き妹に似た、知らない姫君。
王と共に、その少女も穏やかに微笑んでいる。
白いドレスの女性は、兄に手を取られ、王の前に進み出た。
ベールが兄の手により上げられ、幸せに輝くその女性の顔が見えた。
ああ。あの白いドレスの女性は『アリシア』だ。
髪を結い上げ、純白のベールをかぶり……ところどころにハイドロレンジアの花をさして微笑む彼女は、僕の知る彼女とは雰囲気も顔立ちも全く変わって見えた。
でも間違いない。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中


思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる