上 下
265 / 437
リオン編   死神

リオン編   死神4

しおりを挟む
 また数日がたった。

 今日の任務はすこし嬉しい。
 というか、と~っても嬉しいっ!!

 何故なら、任地の途中まで兄さんと一緒に行けるから。

 兄さんは基本、親衛隊長として王の側に居る。
 そこが一番安全なのは僕にもわかるので、不服は無い。
 というか、そこにじっと居てて欲しい。

 だけど難しい任務のときだけは、兄や親衛隊の数人が後詰として駆り出される。
 優秀な人員が常に不足しているので、それは仕方ない。

 でもまあ、後詰なら大丈夫だろう。

 何故なら僕は、任務を失敗したことは一度も無い。
 後詰の出番なんか、あるわけがない。

 だったらやはり、一緒に行けるのはとても嬉しいことなのだ。

 けれど、一つ問題もある。
 兄さんは相変わらずとても悲しそうで、ちっとも笑ってはくれない。

 多分僕が暗殺隊を抜けるまで、笑ってはくれないのだろう。

 それはもう、仕方が無い。
 兄の安全と引き換えなのだから、僕は暗殺隊を抜けるわけにはいかない。

 けれど今日は……人目を忍ぶ馬車内は……僕と兄さんの二人きりっ!!
 そう、二人きりなのだ。

 こんな嬉しいことが、他にあるだろうかっ!?

 最近僕らは生活時間帯がずれていて、兄とはろくに話も出来ていない。
 だから兄さんと一緒に居られる……ただそれだけで何か得をしたような気分だった。

 ああっ!!
 兄さんは憂い顔さえとても綺麗だなぁ……。
 じっと見ていると、何だかドキドキしてしまう。

 ちなみに暗殺隊員たちも、僕といる時はいつも葬式みたいな暗い顔だ。
 でもこちらはちっともドキドキしないし、美しくもない。ただ鬱陶しいだけだ。

 何でこんなに違うのだろう?


 そうこうするうちに、敵地についた。
 兄とは、ここで別れなければいけない。

 残念だけど、危険なところまで一緒に来てもらうわけにはいかない。

 今日の敵はガラムという頭脳戦が得意な人で……このガラムの抹殺と、治める施設すべての破壊が任務だ。
 僕はここから闇にまぎれながら他の暗殺隊員と合流し、敵施設を破壊する。

 兄さんが、敵地に向かう僕を名残惜しそうに見送って下さる。
 う~ん。
 こんなふうに見送ってくださるのなら、やっぱり違う服にしておけば良かった。

 僕は、全身真っ黒のこの隊服が好きじゃない。
 兄さんとご一緒するなら、本当は兄さん好みの明るい色の可愛いデザインの半ズボンの服……それが駄目ならせめて白い軍服にしておきたかった。

 けれど、王からの許可が出なかった。

 一応申請はしてみたのだけど、ひきつった顔で無言になったあと、『無理』とだけ返された。
 夜にまぎれるならやはり、この服でないとマズイのだろう。

 とても残念だ。
  

しおりを挟む

処理中です...