滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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リオン編   分かれ道

リオン編   分かれ道7

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 もったいなかったけど、シャンデリアは破壊して階段に向かう。
 この建物から、人が逃げにくいようにするためだ。

 決して、僕が『持ち帰りたい』という欲望から逃れるために破壊したのではない。

 本当っ!!
 砕けていくガラスを、最後までいじましく見てたりなんかしてないからっ!!

 これは、アースラ様のお遺しになった教本通りのやり方だ。

 人間は明かりがないと、何も見えない。
 けれど僕は『魔獣の瞳』を使って、夜間でも真昼のように識別できる。
 だから、光源を絶つとかなり戦闘に有利になる。

 ひとり残らず殺すなら、この方法が一番良いに違いない。

 階段から、明かりを手にした大勢の男たちが駆け下りてきた。
 この中にボスはいるだろうか?

 魔剣を抜いて、顔を見ながら切り殺していく。
 でも、どうも雑魚ばかりのようでそれらしい人が居ない。

 二十人程切り殺して、今度は階段を上る。

 そこにも男たちが居た。
 最初に向かってきた雑魚よりは幾分マシな腕だったけど、これならブラディたちの方が強い。

 同じように顔を確かめながら、上って行く。
 生かして捕らえておかなくても、あとで念写真を見せてもらえば、ちゃんと確認できるだろう。

 最上階まで上ると、ある一室の前にバリケードを築くように男たちが固まっていた。
 きっとボスは、あの部屋に居るに違いない。

 そう思うと笑みがこぼれた。

 これでもう、兄は『王の依頼』を受けなくて済む。
 その身に危険が迫ることは無い。

 ふと見ると、部屋のドアを背にした護衛の男たちの足が震えていた。
 死ぬことが恐ろしいのだろう。

「逃げたいのなら、逃げてもいいですよ?
 かわりにボスを引き渡してください。僕の目的は彼だけです」

 目的は達成できそうだし、気持ちは晴れやかだった。
 広い心で許してやろう。
 兄さんならこんな時、きっとこうする。
 だから僕も……。

 売り子で鍛えた笑顔でにっこりと友好的に笑ってみたけれど、男たちは動かなかった。

 そっかぁ……しょうがないね。
 兄さんを見習って殺人は最小限にしようと思ったけれど、どきたくないなら死んでもらうのみ。

 僕は兄さんのために、この中に居る人の首を取らなければならない。

 全員一閃で切り殺し、大きな扉に手をかける。
 中には高そうな服を着た男が一人居た。

 部屋の隅で、頭を抱えてうずくまっている。

 昔の僕は、どんな服が高いかなんて全然わからなかった。
 でも大丈夫。
 長く城に住んでいると、さすがにわかってくるものだ。

 王より上等な服を着ている、こいつがボスだ。

「ひぃ……」

 腰が抜けたのか、その男は這うようにして逃げ出した。

 情けない。

 僕らクロス神官は「死ぬときも誇り高く」と教えられてきた。
 こんな無様な姿を晒して、恥ずかしくはないのだろうか?

 ゆっくりと歩を進め、後ろから服を掴んで引き起こす。首を切りやすいように。
 血が大げさに吹き上がるけど、痛みを感じる暇も無く死んだはずだから、感謝して欲しい。

 ふと振り返ると大鏡に、僕の姿が映っていた。

 頭から血を被り、朱金だったはずの僕の瞳が真っ赤に染まっていた。

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