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リオン編 明日を歩く
リオン編 明日を歩く2
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売り子になったら、兄さんの闘技を毎日チラ見出来る……という王の話に、僕はのった。
話に聞く『お給金』も貰えるのだから、断る理由は何も無い。
お給金をいただけたら、僕も兄さんに何か『プレゼント』を買っちゃおうかな?
とっても楽しみだ。
それにまぁ、僕は元々アルフレッド王の境遇には同情を寄せていた。
王が『是非そうして欲しい』と言うのなら、兄の件が無くともそうしてあげたに違いない。
国の長を務めるというのは、大変なことだ。
アルフレッド王はいつも、人民のために馬車馬のように働き続けている。
僕や兄、一般の兵士には休暇もあるし、睡眠時間もたっぷりある。
でも王にはない。
この城に来てから僕が最初に行ったのは、王の様子に聞き耳を立てることだった。
『旨い話には罠がある』
『人を見たら泥棒と思え』
他国人に対面したとき用の、アースラ様の尊くも素晴らしい教えを思い出し、僕は王の身辺を探った。
その僕の耳に聞こえてきたのは、想像を絶する王のハードな生活音だった。
睡眠時間は一日3時間程度だろうか?
それもベッドでゆっくり眠るのではなく、机で書き物をしていて、突っ伏して寝てしまうことが多いようだ。
僕の修行時代でさえ6時間は眠れたのに、これは酷い。
生活のすべてが過酷にも程があった。
僕らに対する怪しい動きは結局無かったので、1週間ほどで監視はやめた。
でも王は、今でもこの厳しい生活を続けているのだろう。
これが『王の義務』『王の生活』なのか。
あまりに酷い。上等な服を着ることはできるようだが、ただ、それだけ。
まるで国民の奴隷のように、僕には見えた。
兄が王にならなかったのは、もしかしたら幸運なことだったのかもしれない。
全国民の中で、王より働いている人はきっといないだろう。
また、王にまつわる酷い事件も僕は知っている。
これは有名な話らしい。
アルフレッド王には、たくさんの弟がいたという。
その中でもとりわけ可愛がったのは、年の離れたちいさな弟。
アルフレッド王は長子ではあったが、母親の身分は低かった。
そのため王妃や寵妃たちと争うのを避け、王位継承権を放棄したのだ。
まもなく王は崩御され、例の小さな弟は正妃の唯一の息子であった。
王妃は息子を溺愛し、当然のことわりとして息子を王位につけた。
しかし、その子は幼すぎた。国を上手く回せなかったらしい。
怒った国民は、大勢で城に押し寄せ、幼き王を城から引ずり出した。
可哀想に、小さなその王は狼のいる牢に放り込まれ、非業の死を遂げてしまったのだという。
王の弟は幼く未熟。考えも浅い。
それは事実だったのだろう。
けれど、優しくて明るくて、アルフレッド王はこの弟が大好きだったそうだ。
今は『王位を譲ってしまった事』をとても深く後悔していると言っていた。
仲の良い僕たちが、羨ましいとも。
でも、何故『王』はその程度のことで国民に殺されねばならないのだろう?
王だって人間だ。
上手くいかない時だって、あるはずなのに。
考えの浅い人間は、平民にもたくさん居る。むしろほとんどがそうだ。
なのに何故王にばかり、完璧さが求められるのだろう?
民衆の犠牲にならねばならないのだろう?
それでも、アルフレッド王はいつも楽しそうに働いている。
きっと働くことが好きなのだろう。
でももし政務の手を止めることがあったなら――――きっと国民はアルフレッド王にも牙を向けるはずだ。
あの時のエドガーさんのように。
話に聞く『お給金』も貰えるのだから、断る理由は何も無い。
お給金をいただけたら、僕も兄さんに何か『プレゼント』を買っちゃおうかな?
とっても楽しみだ。
それにまぁ、僕は元々アルフレッド王の境遇には同情を寄せていた。
王が『是非そうして欲しい』と言うのなら、兄の件が無くともそうしてあげたに違いない。
国の長を務めるというのは、大変なことだ。
アルフレッド王はいつも、人民のために馬車馬のように働き続けている。
僕や兄、一般の兵士には休暇もあるし、睡眠時間もたっぷりある。
でも王にはない。
この城に来てから僕が最初に行ったのは、王の様子に聞き耳を立てることだった。
『旨い話には罠がある』
『人を見たら泥棒と思え』
他国人に対面したとき用の、アースラ様の尊くも素晴らしい教えを思い出し、僕は王の身辺を探った。
その僕の耳に聞こえてきたのは、想像を絶する王のハードな生活音だった。
睡眠時間は一日3時間程度だろうか?
それもベッドでゆっくり眠るのではなく、机で書き物をしていて、突っ伏して寝てしまうことが多いようだ。
僕の修行時代でさえ6時間は眠れたのに、これは酷い。
生活のすべてが過酷にも程があった。
僕らに対する怪しい動きは結局無かったので、1週間ほどで監視はやめた。
でも王は、今でもこの厳しい生活を続けているのだろう。
これが『王の義務』『王の生活』なのか。
あまりに酷い。上等な服を着ることはできるようだが、ただ、それだけ。
まるで国民の奴隷のように、僕には見えた。
兄が王にならなかったのは、もしかしたら幸運なことだったのかもしれない。
全国民の中で、王より働いている人はきっといないだろう。
また、王にまつわる酷い事件も僕は知っている。
これは有名な話らしい。
アルフレッド王には、たくさんの弟がいたという。
その中でもとりわけ可愛がったのは、年の離れたちいさな弟。
アルフレッド王は長子ではあったが、母親の身分は低かった。
そのため王妃や寵妃たちと争うのを避け、王位継承権を放棄したのだ。
まもなく王は崩御され、例の小さな弟は正妃の唯一の息子であった。
王妃は息子を溺愛し、当然のことわりとして息子を王位につけた。
しかし、その子は幼すぎた。国を上手く回せなかったらしい。
怒った国民は、大勢で城に押し寄せ、幼き王を城から引ずり出した。
可哀想に、小さなその王は狼のいる牢に放り込まれ、非業の死を遂げてしまったのだという。
王の弟は幼く未熟。考えも浅い。
それは事実だったのだろう。
けれど、優しくて明るくて、アルフレッド王はこの弟が大好きだったそうだ。
今は『王位を譲ってしまった事』をとても深く後悔していると言っていた。
仲の良い僕たちが、羨ましいとも。
でも、何故『王』はその程度のことで国民に殺されねばならないのだろう?
王だって人間だ。
上手くいかない時だって、あるはずなのに。
考えの浅い人間は、平民にもたくさん居る。むしろほとんどがそうだ。
なのに何故王にばかり、完璧さが求められるのだろう?
民衆の犠牲にならねばならないのだろう?
それでも、アルフレッド王はいつも楽しそうに働いている。
きっと働くことが好きなのだろう。
でももし政務の手を止めることがあったなら――――きっと国民はアルフレッド王にも牙を向けるはずだ。
あの時のエドガーさんのように。
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