249 / 437
リオン編 転機
リオン編 転機9
しおりを挟む
勝負は一瞬だった。
魔剣は服の中に入ったまま。
でも、兄様から渡された模造刀も使わなかった。
うっかり手が滑ると、殺してしまうと思ったから。
それでもブラッディは地に臥した。
エドガーさんの時のように殺してしまったかと心配したけれど、ちゃんと生きていたことにホッとする。
ただし、ブラッディの腕は変な方向に曲がっていた。
剣を叩き落とすときに、ちょっとやりすぎてしまったのだろうか?
おかしいな。まだ手加減がたりなかったのかな。
肋骨も何本か折れているようだけど、そんなに強く叩き込んだっけ?
クロスⅦだけを相手に長年組手をやってきたので、まだ加減がよくわからない。
だが、初めて死なせずにやっつける事が出来た。
エドガーさんの時は失敗だったのに。
僕はここしばらく兄様から『てかげん』と言うものを教わっていた。
でも、これが中々難しい。
つい反射的に体が動いてしまうのだ。
実践は今回が初めてで『普通の人間相手じゃ失敗するかも』とかなり心配していたけれど、僕はやり遂げた。
奇跡的に成功した。
そうだよ。
アリシアはケチばかりつけていたけど、僕だってやれば出来る子なんだよ!
アッサムはブラッディの様子を見て、じりじりと下がりだした。
「なによぉ。男の子でしょ。頑張りなさい、この根性無し君☆」
アリシアらしい臓腑をえぐるような罵倒に、今度はアッサムが切れた。
そして見物していたアリシアに剣を向ける。
どうするのかな~?
どさくさにまぎれて、殺っちゃってくれたらいいのにな~。
……と暖かい眼差しで見守っていたら、なんとアリシアは兄様から剣を奪い取るように借り、彼に向けた。
結論から言うと勝者はアリシアだった。
多分喧嘩をふっかけたのもワザとで、今後の地位を最上に上げるためにやったのではと思われる。
アースラ様のお遺しになった御本にも、そのようなやり方を手ほどきした文章が残っていたのだ。
それにしてもコイツら、どんだけ弱いんだ。
僕は真面目に心配した。
学んだところによると、親衛隊とは『王の警護役』を指し、それ相応の腕を望まれる。
なのにこんな腕で、敵が来た時、本当に王を守れるのだろうか?
確かにその辺のならず者たちよりはマシなようだったが、頭のいかれた邪悪女すら成敗出来ないなんて、情けないにも程がある。
これじゃ、僕の幸せな目論見が台無しだ。
アリシアの方は息も乱さず勝ち誇っていた。更には、
「ふふん。3歳の時から宿の重い食器を運び、お屋敷の侍女となってからは人手が足りなくて、男二人で抱えるような大きな水瓶も一人で運んだわ。
体力と力なら、その辺の男に負けはしないわよ♪ オホホホホ!!!」
と邪悪に高笑いした。
恐るべし、邪悪女パワー。
その一件以来、親衛隊候補生の中に幼い僕と女性のアリシアも入る事となった。
魔剣は服の中に入ったまま。
でも、兄様から渡された模造刀も使わなかった。
うっかり手が滑ると、殺してしまうと思ったから。
それでもブラッディは地に臥した。
エドガーさんの時のように殺してしまったかと心配したけれど、ちゃんと生きていたことにホッとする。
ただし、ブラッディの腕は変な方向に曲がっていた。
剣を叩き落とすときに、ちょっとやりすぎてしまったのだろうか?
おかしいな。まだ手加減がたりなかったのかな。
肋骨も何本か折れているようだけど、そんなに強く叩き込んだっけ?
クロスⅦだけを相手に長年組手をやってきたので、まだ加減がよくわからない。
だが、初めて死なせずにやっつける事が出来た。
エドガーさんの時は失敗だったのに。
僕はここしばらく兄様から『てかげん』と言うものを教わっていた。
でも、これが中々難しい。
つい反射的に体が動いてしまうのだ。
実践は今回が初めてで『普通の人間相手じゃ失敗するかも』とかなり心配していたけれど、僕はやり遂げた。
奇跡的に成功した。
そうだよ。
アリシアはケチばかりつけていたけど、僕だってやれば出来る子なんだよ!
アッサムはブラッディの様子を見て、じりじりと下がりだした。
「なによぉ。男の子でしょ。頑張りなさい、この根性無し君☆」
アリシアらしい臓腑をえぐるような罵倒に、今度はアッサムが切れた。
そして見物していたアリシアに剣を向ける。
どうするのかな~?
どさくさにまぎれて、殺っちゃってくれたらいいのにな~。
……と暖かい眼差しで見守っていたら、なんとアリシアは兄様から剣を奪い取るように借り、彼に向けた。
結論から言うと勝者はアリシアだった。
多分喧嘩をふっかけたのもワザとで、今後の地位を最上に上げるためにやったのではと思われる。
アースラ様のお遺しになった御本にも、そのようなやり方を手ほどきした文章が残っていたのだ。
それにしてもコイツら、どんだけ弱いんだ。
僕は真面目に心配した。
学んだところによると、親衛隊とは『王の警護役』を指し、それ相応の腕を望まれる。
なのにこんな腕で、敵が来た時、本当に王を守れるのだろうか?
確かにその辺のならず者たちよりはマシなようだったが、頭のいかれた邪悪女すら成敗出来ないなんて、情けないにも程がある。
これじゃ、僕の幸せな目論見が台無しだ。
アリシアの方は息も乱さず勝ち誇っていた。更には、
「ふふん。3歳の時から宿の重い食器を運び、お屋敷の侍女となってからは人手が足りなくて、男二人で抱えるような大きな水瓶も一人で運んだわ。
体力と力なら、その辺の男に負けはしないわよ♪ オホホホホ!!!」
と邪悪に高笑いした。
恐るべし、邪悪女パワー。
その一件以来、親衛隊候補生の中に幼い僕と女性のアリシアも入る事となった。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。


思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる