248 / 437
リオン編 転機
リオン編 転機8
しおりを挟む
ふ~ん。なるほど。
僕はアリシアの説明に頷いた。
勝って欲しい方に、一定の法則にしたがって声を贈ればいいのか。
それなら、初心者の僕にも簡単に出来そうだ。
アリシアなんかに教えられるのは本当はイヤだったけど、地下神殿育ちの僕はこういう場でどう振舞えば良いのか、さっぱりわからない。
もちろん、日々めぐり合う言語や事象を分析しつつ、今まで得た知識とすり合わせる努力はしてきた。
今はほぼ人並みになったと自負しているが、さすがにこういう場面には出合った事が無い。
そのため僕は、大嫌いな糞女の助言に謙虚に耳を傾けた。
心を込めて兄様を『おうえん』するために。
そして教えられた通り、
「ふぁいとっ! 兄様、K・O・R・O・S・E!! 頑張れ頑張れ、兄様っっ!!」
と声を張り上げて『おうえん』した。
K・O・R・O・S・Eという文字の羅列に何の意味があるのか実はサッパリわからなかったが『正しいお作法』だと言うのでとりあえず素直にやってみた。
兄様は、この『おうえん』をすごく気に入って喜んで下さっているようだ。
戦いながらも僕にちらっと視線を送っては、美しく微笑んでくださる。
嬉しいっ!!
あんなアリシアでもたまには何かの役に立つものなんだなぁ。
いずれは処分するとしても、すぐに殺さなくて良かったのかも?
でも、敗者である他の候補生たちは、僕の真心がこもった『おうえん』が気に入らなかったようだ。
「おい、お嬢ちゃん。お前、生意気なんだよ」
一回戦で既に負け犬なうえ、いい年して僕の性別すら間違える能無しのブラディが立ち上がった。そして僕の襟首を掴む。
このような無礼者は切り捨ててしまいたかったが、兄様の立場が悪くなると困るので我慢した。
せっかく就職できたのに、クビになったら大変だ。
僕はともかく、兄様には暖かいベッドと食事が必要なのに。
「や、やめて下さい!!」
とりあえず、抗議の声だけは上げてみる。
兄様は僕のピンチを見てかけ寄ってこられた。
やっぱり兄様は優しいなぁ。
感動してたら、アリシアが怒鳴った。
「やらせときゃいいのよ!! 影でこそこそやられた方が困るんだから!」
その言葉に、兄の動きが止まった。
更には部外者のアリシアが、いきなり仕切りだした。
「リオン、手加減はちゃんとエルに教わったのでしょ?
そこのお馬鹿、やっちゃっていいわ。
でも、この子たちはこれから同僚になるのだから、絶対殺しちゃ駄目だからねッ!!」
兄様はアリシアの言葉に、うんうんと頷いている。
せっかく兄様がかばって下さったのに……。
特に兄様の身に危険があるわけでなし、このまま兄様に優しく助けていただきたかったのに……。
でも確かに、こっそりと影で嫌がらせをされると、困る。
できるだけ我慢するつもりではあるが、そのうち邪悪なこいつらを善の剣でバッサリと殺ってしまうだろう。
そうしたら、多分、兄様はクビになる。
僕は無言で頷いた。
僕はアリシアの説明に頷いた。
勝って欲しい方に、一定の法則にしたがって声を贈ればいいのか。
それなら、初心者の僕にも簡単に出来そうだ。
アリシアなんかに教えられるのは本当はイヤだったけど、地下神殿育ちの僕はこういう場でどう振舞えば良いのか、さっぱりわからない。
もちろん、日々めぐり合う言語や事象を分析しつつ、今まで得た知識とすり合わせる努力はしてきた。
今はほぼ人並みになったと自負しているが、さすがにこういう場面には出合った事が無い。
そのため僕は、大嫌いな糞女の助言に謙虚に耳を傾けた。
心を込めて兄様を『おうえん』するために。
そして教えられた通り、
「ふぁいとっ! 兄様、K・O・R・O・S・E!! 頑張れ頑張れ、兄様っっ!!」
と声を張り上げて『おうえん』した。
K・O・R・O・S・Eという文字の羅列に何の意味があるのか実はサッパリわからなかったが『正しいお作法』だと言うのでとりあえず素直にやってみた。
兄様は、この『おうえん』をすごく気に入って喜んで下さっているようだ。
戦いながらも僕にちらっと視線を送っては、美しく微笑んでくださる。
嬉しいっ!!
あんなアリシアでもたまには何かの役に立つものなんだなぁ。
いずれは処分するとしても、すぐに殺さなくて良かったのかも?
でも、敗者である他の候補生たちは、僕の真心がこもった『おうえん』が気に入らなかったようだ。
「おい、お嬢ちゃん。お前、生意気なんだよ」
一回戦で既に負け犬なうえ、いい年して僕の性別すら間違える能無しのブラディが立ち上がった。そして僕の襟首を掴む。
このような無礼者は切り捨ててしまいたかったが、兄様の立場が悪くなると困るので我慢した。
せっかく就職できたのに、クビになったら大変だ。
僕はともかく、兄様には暖かいベッドと食事が必要なのに。
「や、やめて下さい!!」
とりあえず、抗議の声だけは上げてみる。
兄様は僕のピンチを見てかけ寄ってこられた。
やっぱり兄様は優しいなぁ。
感動してたら、アリシアが怒鳴った。
「やらせときゃいいのよ!! 影でこそこそやられた方が困るんだから!」
その言葉に、兄の動きが止まった。
更には部外者のアリシアが、いきなり仕切りだした。
「リオン、手加減はちゃんとエルに教わったのでしょ?
そこのお馬鹿、やっちゃっていいわ。
でも、この子たちはこれから同僚になるのだから、絶対殺しちゃ駄目だからねッ!!」
兄様はアリシアの言葉に、うんうんと頷いている。
せっかく兄様がかばって下さったのに……。
特に兄様の身に危険があるわけでなし、このまま兄様に優しく助けていただきたかったのに……。
でも確かに、こっそりと影で嫌がらせをされると、困る。
できるだけ我慢するつもりではあるが、そのうち邪悪なこいつらを善の剣でバッサリと殺ってしまうだろう。
そうしたら、多分、兄様はクビになる。
僕は無言で頷いた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった
無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。
そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。
チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる