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リオン編 転機
リオン編 転機8
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ふ~ん。なるほど。
僕はアリシアの説明に頷いた。
勝って欲しい方に、一定の法則にしたがって声を贈ればいいのか。
それなら、初心者の僕にも簡単に出来そうだ。
アリシアなんかに教えられるのは本当はイヤだったけど、地下神殿育ちの僕はこういう場でどう振舞えば良いのか、さっぱりわからない。
もちろん、日々めぐり合う言語や事象を分析しつつ、今まで得た知識とすり合わせる努力はしてきた。
今はほぼ人並みになったと自負しているが、さすがにこういう場面には出合った事が無い。
そのため僕は、大嫌いな糞女の助言に謙虚に耳を傾けた。
心を込めて兄様を『おうえん』するために。
そして教えられた通り、
「ふぁいとっ! 兄様、K・O・R・O・S・E!! 頑張れ頑張れ、兄様っっ!!」
と声を張り上げて『おうえん』した。
K・O・R・O・S・Eという文字の羅列に何の意味があるのか実はサッパリわからなかったが『正しいお作法』だと言うのでとりあえず素直にやってみた。
兄様は、この『おうえん』をすごく気に入って喜んで下さっているようだ。
戦いながらも僕にちらっと視線を送っては、美しく微笑んでくださる。
嬉しいっ!!
あんなアリシアでもたまには何かの役に立つものなんだなぁ。
いずれは処分するとしても、すぐに殺さなくて良かったのかも?
でも、敗者である他の候補生たちは、僕の真心がこもった『おうえん』が気に入らなかったようだ。
「おい、お嬢ちゃん。お前、生意気なんだよ」
一回戦で既に負け犬なうえ、いい年して僕の性別すら間違える能無しのブラディが立ち上がった。そして僕の襟首を掴む。
このような無礼者は切り捨ててしまいたかったが、兄様の立場が悪くなると困るので我慢した。
せっかく就職できたのに、クビになったら大変だ。
僕はともかく、兄様には暖かいベッドと食事が必要なのに。
「や、やめて下さい!!」
とりあえず、抗議の声だけは上げてみる。
兄様は僕のピンチを見てかけ寄ってこられた。
やっぱり兄様は優しいなぁ。
感動してたら、アリシアが怒鳴った。
「やらせときゃいいのよ!! 影でこそこそやられた方が困るんだから!」
その言葉に、兄の動きが止まった。
更には部外者のアリシアが、いきなり仕切りだした。
「リオン、手加減はちゃんとエルに教わったのでしょ?
そこのお馬鹿、やっちゃっていいわ。
でも、この子たちはこれから同僚になるのだから、絶対殺しちゃ駄目だからねッ!!」
兄様はアリシアの言葉に、うんうんと頷いている。
せっかく兄様がかばって下さったのに……。
特に兄様の身に危険があるわけでなし、このまま兄様に優しく助けていただきたかったのに……。
でも確かに、こっそりと影で嫌がらせをされると、困る。
できるだけ我慢するつもりではあるが、そのうち邪悪なこいつらを善の剣でバッサリと殺ってしまうだろう。
そうしたら、多分、兄様はクビになる。
僕は無言で頷いた。
僕はアリシアの説明に頷いた。
勝って欲しい方に、一定の法則にしたがって声を贈ればいいのか。
それなら、初心者の僕にも簡単に出来そうだ。
アリシアなんかに教えられるのは本当はイヤだったけど、地下神殿育ちの僕はこういう場でどう振舞えば良いのか、さっぱりわからない。
もちろん、日々めぐり合う言語や事象を分析しつつ、今まで得た知識とすり合わせる努力はしてきた。
今はほぼ人並みになったと自負しているが、さすがにこういう場面には出合った事が無い。
そのため僕は、大嫌いな糞女の助言に謙虚に耳を傾けた。
心を込めて兄様を『おうえん』するために。
そして教えられた通り、
「ふぁいとっ! 兄様、K・O・R・O・S・E!! 頑張れ頑張れ、兄様っっ!!」
と声を張り上げて『おうえん』した。
K・O・R・O・S・Eという文字の羅列に何の意味があるのか実はサッパリわからなかったが『正しいお作法』だと言うのでとりあえず素直にやってみた。
兄様は、この『おうえん』をすごく気に入って喜んで下さっているようだ。
戦いながらも僕にちらっと視線を送っては、美しく微笑んでくださる。
嬉しいっ!!
あんなアリシアでもたまには何かの役に立つものなんだなぁ。
いずれは処分するとしても、すぐに殺さなくて良かったのかも?
でも、敗者である他の候補生たちは、僕の真心がこもった『おうえん』が気に入らなかったようだ。
「おい、お嬢ちゃん。お前、生意気なんだよ」
一回戦で既に負け犬なうえ、いい年して僕の性別すら間違える能無しのブラディが立ち上がった。そして僕の襟首を掴む。
このような無礼者は切り捨ててしまいたかったが、兄様の立場が悪くなると困るので我慢した。
せっかく就職できたのに、クビになったら大変だ。
僕はともかく、兄様には暖かいベッドと食事が必要なのに。
「や、やめて下さい!!」
とりあえず、抗議の声だけは上げてみる。
兄様は僕のピンチを見てかけ寄ってこられた。
やっぱり兄様は優しいなぁ。
感動してたら、アリシアが怒鳴った。
「やらせときゃいいのよ!! 影でこそこそやられた方が困るんだから!」
その言葉に、兄の動きが止まった。
更には部外者のアリシアが、いきなり仕切りだした。
「リオン、手加減はちゃんとエルに教わったのでしょ?
そこのお馬鹿、やっちゃっていいわ。
でも、この子たちはこれから同僚になるのだから、絶対殺しちゃ駄目だからねッ!!」
兄様はアリシアの言葉に、うんうんと頷いている。
せっかく兄様がかばって下さったのに……。
特に兄様の身に危険があるわけでなし、このまま兄様に優しく助けていただきたかったのに……。
でも確かに、こっそりと影で嫌がらせをされると、困る。
できるだけ我慢するつもりではあるが、そのうち邪悪なこいつらを善の剣でバッサリと殺ってしまうだろう。
そうしたら、多分、兄様はクビになる。
僕は無言で頷いた。
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