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リオン編 転機
リオン編 転機6
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連れて行かれた先は、薄汚れた古城だった。
故郷の城はとても清らかで美しかったのに、ここは全然違う。
アリシアは、怯えるウルフの腕をガシッと組んで逃がさないようにしながら、堂々と案内の男に続いていった。
僕も仕方なくその後をついていく。
いくつもの回廊を通り、僕たちは王のごとく玉座に座る、一見平凡そうな男の前に引き出された。
側には、見かけだけは屈強そうな男たちが50人は従っている。
でもあのぐらいの人数なら、僕は3分とかからず全員を殺すことが出来るだろう。
アリシアのような悪党を気に入っている『馬鹿の主人』など誰が信用するものか。
もし兄様に危害を加えようとしたなら……その瞬間、善良な僕がこの城を火の海に変えてやる。
「なるほど、君たちがバーリーの連れてきた客人か。確かに美しい」
男はそう言うと玉座からゆっくりと立ち上がり、真っ直ぐ兄様の前に来た。
……あれれ?
中々見る目があるんじゃないのかな?
少なくともアリシアなんかに惑わされたバーリーとやらよりは、ずっと賢明な男らしい。
「これほど美しい男は20年ぶりに見たよ。
よく連れてきてくれたなバーリー。礼を言う」
男は穏やかにそう言った。僕も同感だ。兄様は本当に美しい。
アリシアなんかの千倍は美しい。
本当に見る目があるな、この男。
僕はちょっとこの男が気に入った。
隣では「失礼ねっ!! 美しいと言ったら私が一番でしょ!!」とアリシアが小声で憤慨しているが、ざまあぁぁぁみろだ。
「実はラフレイムには私の組織『ガルーダ』の他に後二つの勢力がある。
しかし私は、他のならず者が作った組織と差をつけたい。
いずれは正式な王国として成立させたいのだ。
私は崩壊したこの国の王家の血を引く最後の一人だ。
まずはこの国のブランドとなるような、高貴な組織を作りたい。
だから今度作る私の親衛隊には、強く美しい男を入れようと前々から決めていたのだ」
男は中々渋い声でそう言った。
なるほど。
じゃあ、兄様ほど相応しい人は他にいないだろう。
男は他にも、夢のように素晴らしい計画を語った。
兄様のブロマイドをたくさん作ると言うのなら、僕はたくさん買おう。
山里でお世話になったお姉さんも、たくさんの『げえのうじん』のブロマイドを持っていた。数を揃えれば揃えるほど『ふあん』としての格が上がるのだそうだ。
きっと兄様の『ふあんくらぶ』も出来るだろうから、最も格が高いという1号会員にも僕が絶対なってやる。
僕はそんな事を妄想しながら、うっとりと男の話に聞き入った。
故郷の城はとても清らかで美しかったのに、ここは全然違う。
アリシアは、怯えるウルフの腕をガシッと組んで逃がさないようにしながら、堂々と案内の男に続いていった。
僕も仕方なくその後をついていく。
いくつもの回廊を通り、僕たちは王のごとく玉座に座る、一見平凡そうな男の前に引き出された。
側には、見かけだけは屈強そうな男たちが50人は従っている。
でもあのぐらいの人数なら、僕は3分とかからず全員を殺すことが出来るだろう。
アリシアのような悪党を気に入っている『馬鹿の主人』など誰が信用するものか。
もし兄様に危害を加えようとしたなら……その瞬間、善良な僕がこの城を火の海に変えてやる。
「なるほど、君たちがバーリーの連れてきた客人か。確かに美しい」
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男は穏やかにそう言った。僕も同感だ。兄様は本当に美しい。
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本当に見る目があるな、この男。
僕はちょっとこの男が気に入った。
隣では「失礼ねっ!! 美しいと言ったら私が一番でしょ!!」とアリシアが小声で憤慨しているが、ざまあぁぁぁみろだ。
「実はラフレイムには私の組織『ガルーダ』の他に後二つの勢力がある。
しかし私は、他のならず者が作った組織と差をつけたい。
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まずはこの国のブランドとなるような、高貴な組織を作りたい。
だから今度作る私の親衛隊には、強く美しい男を入れようと前々から決めていたのだ」
男は中々渋い声でそう言った。
なるほど。
じゃあ、兄様ほど相応しい人は他にいないだろう。
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きっと兄様の『ふあんくらぶ』も出来るだろうから、最も格が高いという1号会員にも僕が絶対なってやる。
僕はそんな事を妄想しながら、うっとりと男の話に聞き入った。
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