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リオン編 転機
リオン編 転機4
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僕たちは食事を完食後、出発した。
色々とケチがついてしまったが、食事を残す様な真似はしない。
作った奴らは悪魔でも、食事には罪はないのだ。
感謝して美味しくいただくのが礼儀である。
もちろん食事には万が一に備え、解毒の魔法をかけておいた。
睡眠薬にやられるのはもうごめんだからだ。
ラフレイム到着後は予定通り、ウルフを先頭にして進んだ。
でも僕たちが進むと、ガラの悪そうな奴らがジロジロと舐めるように見てきて、大変気持ちが悪い。
兄様はたいそうお美しい方なので、ついついじっと見てしまう気持ちはわからなくもないけれど、僕の兄様なのだから、勝手にジロジロ見ないで欲しい。
え、僕?
僕はいいんだよ。弟だから。
「ウルフ、気にしちゃ駄目よ♪
凶悪殺人鬼兄弟がついてるんだから堂々と行きなさい!」
アリシアが腰の引けているウルフに、失礼極まりないことを囁く。
心清らかな兄様と、善人で控えめな僕に向かって何てことを言いやがるっ!!
確かに僕らは大勢の人を殺した。
けれど、それは仕方の無い事だった。
善良な僕ら兄弟を獣どもは騙し、裏切り、殺そうとさえした。
だから偉大なるアースラ様がなさったように『善なる力』を使って天誅を下しただけだ。
あの性悪女とは違う。
「さ、あそこの食堂に行きましょう? きっと面白いことがあるわ!!」
アリシアのやけに明るい口調に不吉なものを覚えるが、確かにお腹は減っている。
食堂に入ると、さっき街道で僕たちをジロジロと見ていた男の一人が続いて入ってきた。
そしてすぐ側のテーブルに座る。
僕らが店員に注文を言ってしばらくたったところを見計らって、男はウルフ(仮)に話しかけてきた。
「よお。こんな所に来るぐらいだから堅気じゃねえんだろ?
綺麗なねえちゃん連れてるけど、お前の女か?」
「ええそうよ。ダーリンってばとっても強いのぉ。ふふ」
聞かれたウルフが答えるより早く、アリシアが微笑んでウルフの腕に手を絡めた。
何が『だぁりん』だ。
普段はポチって呼んでいるくせに。
「へえ。姉ちゃんは強い男が好みか。
だったら俺がこいつに勝ったら『俺の女』にならねえか?」
だらしなく顔を緩ませた男に、アリシアはう~ん……と考えている。
考えるのか。僕的にはありえない。
でもそう、お前のような女にはあんなクズがお似合いだ。超お似合いだとも。
「……いいわ」
アリシアが男に向かって微笑む。
よし、お似合い屑男にアリシアを押し付けてしまえ。
あの程度の腕の男ではアリシアを守ることは到底できない。
治安が悪いというこの街のどこかでバッサリやられてくれれば全て解決だ。
そう思って心の中で万歳していたら、続きがあった。
「でもダーリンは駄目。あなた一瞬で死んじゃうわよ。
そうね。私の『下の弟』とやってごらんなさい?
それで勝てたら、あなたの女になってあ・げ・る!」
突然アリシアに指さされ、僕はビックリして限界まで大きく瞳を見開いた。
「さ、リオン。愛する姉さんのために頑張ってネ」
アリシアが華やかな笑みを浮かべる。
へ?
……誰が……………愛する姉さん…………?
一瞬フリーズしてから怒りに震える。
気持ちの悪いことを言うなっ!!
誰が愛する姉さんだっっ!!!
お前のことを『愛する姉さん』と呼ぶぐらいなら、店先に置いてあるタヌキの置物にでもひざまずいた方がマシだッ!
出来るなら今すぐ死んで欲しい。
それも滑って転んで、その辺の机の角にでも頭をぶつけてみじめに死んで欲しい。
そうしたら僕が念入りに『地獄送りの葬送』を取り行ってやるのに。
でも残念だがそうは出来ない。
容姿も体格も全く似てないウルフはともかく、僕と兄様とアリシアは苦しいながらも姉弟設定をでっち上げる事が出来る。
だから今は取り決めにより、姉弟として振舞わねばならない。
色々とケチがついてしまったが、食事を残す様な真似はしない。
作った奴らは悪魔でも、食事には罪はないのだ。
感謝して美味しくいただくのが礼儀である。
もちろん食事には万が一に備え、解毒の魔法をかけておいた。
睡眠薬にやられるのはもうごめんだからだ。
ラフレイム到着後は予定通り、ウルフを先頭にして進んだ。
でも僕たちが進むと、ガラの悪そうな奴らがジロジロと舐めるように見てきて、大変気持ちが悪い。
兄様はたいそうお美しい方なので、ついついじっと見てしまう気持ちはわからなくもないけれど、僕の兄様なのだから、勝手にジロジロ見ないで欲しい。
え、僕?
僕はいいんだよ。弟だから。
「ウルフ、気にしちゃ駄目よ♪
凶悪殺人鬼兄弟がついてるんだから堂々と行きなさい!」
アリシアが腰の引けているウルフに、失礼極まりないことを囁く。
心清らかな兄様と、善人で控えめな僕に向かって何てことを言いやがるっ!!
確かに僕らは大勢の人を殺した。
けれど、それは仕方の無い事だった。
善良な僕ら兄弟を獣どもは騙し、裏切り、殺そうとさえした。
だから偉大なるアースラ様がなさったように『善なる力』を使って天誅を下しただけだ。
あの性悪女とは違う。
「さ、あそこの食堂に行きましょう? きっと面白いことがあるわ!!」
アリシアのやけに明るい口調に不吉なものを覚えるが、確かにお腹は減っている。
食堂に入ると、さっき街道で僕たちをジロジロと見ていた男の一人が続いて入ってきた。
そしてすぐ側のテーブルに座る。
僕らが店員に注文を言ってしばらくたったところを見計らって、男はウルフ(仮)に話しかけてきた。
「よお。こんな所に来るぐらいだから堅気じゃねえんだろ?
綺麗なねえちゃん連れてるけど、お前の女か?」
「ええそうよ。ダーリンってばとっても強いのぉ。ふふ」
聞かれたウルフが答えるより早く、アリシアが微笑んでウルフの腕に手を絡めた。
何が『だぁりん』だ。
普段はポチって呼んでいるくせに。
「へえ。姉ちゃんは強い男が好みか。
だったら俺がこいつに勝ったら『俺の女』にならねえか?」
だらしなく顔を緩ませた男に、アリシアはう~ん……と考えている。
考えるのか。僕的にはありえない。
でもそう、お前のような女にはあんなクズがお似合いだ。超お似合いだとも。
「……いいわ」
アリシアが男に向かって微笑む。
よし、お似合い屑男にアリシアを押し付けてしまえ。
あの程度の腕の男ではアリシアを守ることは到底できない。
治安が悪いというこの街のどこかでバッサリやられてくれれば全て解決だ。
そう思って心の中で万歳していたら、続きがあった。
「でもダーリンは駄目。あなた一瞬で死んじゃうわよ。
そうね。私の『下の弟』とやってごらんなさい?
それで勝てたら、あなたの女になってあ・げ・る!」
突然アリシアに指さされ、僕はビックリして限界まで大きく瞳を見開いた。
「さ、リオン。愛する姉さんのために頑張ってネ」
アリシアが華やかな笑みを浮かべる。
へ?
……誰が……………愛する姉さん…………?
一瞬フリーズしてから怒りに震える。
気持ちの悪いことを言うなっ!!
誰が愛する姉さんだっっ!!!
お前のことを『愛する姉さん』と呼ぶぐらいなら、店先に置いてあるタヌキの置物にでもひざまずいた方がマシだッ!
出来るなら今すぐ死んで欲しい。
それも滑って転んで、その辺の机の角にでも頭をぶつけてみじめに死んで欲しい。
そうしたら僕が念入りに『地獄送りの葬送』を取り行ってやるのに。
でも残念だがそうは出来ない。
容姿も体格も全く似てないウルフはともかく、僕と兄様とアリシアは苦しいながらも姉弟設定をでっち上げる事が出来る。
だから今は取り決めにより、姉弟として振舞わねばならない。
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