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リオン編 シリウスという国
リオン編 シリウスという国10
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悔しさと憎しみで頭に血がのぼった。
怒りはアリシアという女に向かい、血に濡れたエラジーを向ける。
「あら? 私を殺そうと言うのかしら?
ふうん。また母さんのお人よし癖が出て子供を匿っているのかと思ったら、違うようね。
坊や、刀を下ろしなさい。
別に私は逃げも騒ぎもしないわよ。
ただ母さんに一目会いたいだけ。
それも許してはくれないのかしら?」
女は相変わらず微笑を浮かべ、堂々としていた。
「……ミランダは死んだ。俺たちが殺した。
俺たちを奴隷に売りやがったんだ。だから……」
兄様は僕と同じように女を睨みつけた。
「……あらそう? 母さん死んじゃったの。
もう少し生かしておいてくれたら、私が殺してあげたのに」
アリシアは実の親が死んだというのにころころと笑って母親を罵り、自分の境遇を嘆いた。
僕は信じられない思いでその言葉を聞いた。
そんな馬鹿な。
確かにおばさんは僕らにとっては『酷い人』だった。
だから、僕らがおばさんを憎むのは当然だ。
でも娘に対しては全然違う。おばさんはアリシアを深く深く想っていた。
それなのになぜ……なぜ平気でそんな冷酷な言葉が吐けるのだろう?
僕は親代わりだったクロスⅦをやむを得ない事情で殺した。
だけど凄く悲しかった。いっぱい泣いた。
申し訳なくて、苦しくて、何度もうなされて飛び起きた。
でも、外の人間はそうではないのだ。
エルシオンの人たちがそうだったように、自分に利がなくなったなら……殺そうと踏もうと平気なのだ。
それが実の親であったとしても。
呆然としている僕を押しのけて、その女は中に入ってしまった。
怒りはアリシアという女に向かい、血に濡れたエラジーを向ける。
「あら? 私を殺そうと言うのかしら?
ふうん。また母さんのお人よし癖が出て子供を匿っているのかと思ったら、違うようね。
坊や、刀を下ろしなさい。
別に私は逃げも騒ぎもしないわよ。
ただ母さんに一目会いたいだけ。
それも許してはくれないのかしら?」
女は相変わらず微笑を浮かべ、堂々としていた。
「……ミランダは死んだ。俺たちが殺した。
俺たちを奴隷に売りやがったんだ。だから……」
兄様は僕と同じように女を睨みつけた。
「……あらそう? 母さん死んじゃったの。
もう少し生かしておいてくれたら、私が殺してあげたのに」
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僕は信じられない思いでその言葉を聞いた。
そんな馬鹿な。
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だから、僕らがおばさんを憎むのは当然だ。
でも娘に対しては全然違う。おばさんはアリシアを深く深く想っていた。
それなのになぜ……なぜ平気でそんな冷酷な言葉が吐けるのだろう?
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だけど凄く悲しかった。いっぱい泣いた。
申し訳なくて、苦しくて、何度もうなされて飛び起きた。
でも、外の人間はそうではないのだ。
エルシオンの人たちがそうだったように、自分に利がなくなったなら……殺そうと踏もうと平気なのだ。
それが実の親であったとしても。
呆然としている僕を押しのけて、その女は中に入ってしまった。
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