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リオン編 シリウスという国
リオン編 シリウスという国7
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兄様に従い、注意深く身を潜めながら通路を行った。
すると、次の曲がり角で談笑する二人の人間の姿が見えた。
「リオン。エラジーを持っているか?」
「……はい。あります」
魔剣エラジーは、普段とても小さいし軽い。
アースラ様が初代クロス神官に授けたというこの魔剣は、僕の命より大事なもの。常に携帯している。
他の奴には触れさせることすらとんでもないが、兄様だけは特別だ。
僕は迷うことなく魔剣を兄様に差し出した。
「リオン。施設の奴らを皆殺しにするぞ。でないと奴隷たちは解放されない」
兄様は、僕の手を強く握ってそうおっしゃった。
普段はこのように、兄様に頼りにされることはほとんどない。
頼ろうにも、僕が馬鹿すぎて頼れないのだと思う。
悲しい。
しかし兄様は、とうとう僕を頼りにしてくださったのだッ!!
思わず「僕もアースラ様のようにお役に立てる機会が来たぞ~」と高笑いしそうになったが、それはあまりに下品というもの。
「わかりました。兄様の仰せのとおりに致します!」
満面の笑みを浮かべて、可愛らしくそう言った。
でも次の瞬間、我に返る。
そんなことしたって、あの子供たちはきっと兄様に感謝なんかしない。
むしろ逆恨みするかもしれない。
今までだってそうだった。
でも僕は兄様の望みなら、なんでもかなえて差し上げたい。
だからその言葉に従った。
出会う人間を次々と殺し、奴隷たちを解放してゆく。
建物には火を放った。
このやり方はアースラ様の教えと酷似している。
『国民を救ったら、すぐに敵施設は焼払え』
教本にはそうあった。
兄様が習ってきた戦術も、クロス神官が教わったものとそう変わらないのかもしれない。
それを知って少し安心する。
ただ今回助けたのは『善の結界下にいる自国民』ではない。
兄様は子供たちの売買契約書を燃やすことも出来て満足そうだったけど、僕にはあの子たちを助けたことが良かったのか悪かったのか、全くわからない。
ほとんどの子供は成長するに従って、虫や獣のようになるだろう。
でも出来るなら、アースラ様のように善なる道を求めて欲しい。
心からそう思った。
すると、次の曲がり角で談笑する二人の人間の姿が見えた。
「リオン。エラジーを持っているか?」
「……はい。あります」
魔剣エラジーは、普段とても小さいし軽い。
アースラ様が初代クロス神官に授けたというこの魔剣は、僕の命より大事なもの。常に携帯している。
他の奴には触れさせることすらとんでもないが、兄様だけは特別だ。
僕は迷うことなく魔剣を兄様に差し出した。
「リオン。施設の奴らを皆殺しにするぞ。でないと奴隷たちは解放されない」
兄様は、僕の手を強く握ってそうおっしゃった。
普段はこのように、兄様に頼りにされることはほとんどない。
頼ろうにも、僕が馬鹿すぎて頼れないのだと思う。
悲しい。
しかし兄様は、とうとう僕を頼りにしてくださったのだッ!!
思わず「僕もアースラ様のようにお役に立てる機会が来たぞ~」と高笑いしそうになったが、それはあまりに下品というもの。
「わかりました。兄様の仰せのとおりに致します!」
満面の笑みを浮かべて、可愛らしくそう言った。
でも次の瞬間、我に返る。
そんなことしたって、あの子供たちはきっと兄様に感謝なんかしない。
むしろ逆恨みするかもしれない。
今までだってそうだった。
でも僕は兄様の望みなら、なんでもかなえて差し上げたい。
だからその言葉に従った。
出会う人間を次々と殺し、奴隷たちを解放してゆく。
建物には火を放った。
このやり方はアースラ様の教えと酷似している。
『国民を救ったら、すぐに敵施設は焼払え』
教本にはそうあった。
兄様が習ってきた戦術も、クロス神官が教わったものとそう変わらないのかもしれない。
それを知って少し安心する。
ただ今回助けたのは『善の結界下にいる自国民』ではない。
兄様は子供たちの売買契約書を燃やすことも出来て満足そうだったけど、僕にはあの子たちを助けたことが良かったのか悪かったのか、全くわからない。
ほとんどの子供は成長するに従って、虫や獣のようになるだろう。
でも出来るなら、アースラ様のように善なる道を求めて欲しい。
心からそう思った。
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