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リオン編 シリウスという国
リオン編 シリウスという国4
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「お、おいリオン、起きろ!!」
「ん……兄様……? もう朝ですか?」
兄様に起こされていつものように幸せに目覚めると、そこは見知らぬ場所だった。
薄暗くて、じめじめしている。
おばさんの宿の自分の部屋にいたはずなのに、いったいここはどこなのだろう?
起き上がろうとして、鎖のじゃらりという音に気がついた。
ギョッとして辺りを見渡すと、近くには数人の子供が鎖につながれたままうなだれていた。
「何だかよくわからないが、俺たち……さらわれて売られてしまったようなんだ」
「ええっ!!」
目覚めるなり衝撃の発言を聞いて、僕は思わず叫んだ。
以前、城の地下神殿に兄様が『すかぁと』を持ってきて下さったことがあった。
とても綺麗な色のついたお衣装だったけど、それを着て外の世界に行ったらさらわれる……とおっしゃったので渋々あきらめて『ずぼん』にはきかえた。
その後も兄様が『弟』であることを僕に望んでらっしゃったので、ずっと『ずぼん』で過ごし、昨日おばさんが下さったのもさらわれることを心配してか、やはり『ずぼん』だった。
なのに何故?
「……やっぱり外の世界は怖いです……どうして売られてしまったのですかぁ……?」
涙目になりながら兄様に問うと、
「……教えてやろうか?」
と牢の外から男の声がした。
長身の、見るからに下品な男だった。
「お前たちのいた宿の主人のミランダって奴はとんだ悪党でよ、身寄りの無い子供を騙してはこうやって売り飛ばすんだ。可哀想になァ」
男は僕らをからかうかのように言った。
「嘘だ!!
だっておばさんはいつも親切だったし、俺たちに服まで買ってくれたんだ!!
最初から売り飛ばすつもりなら、そんな事するはずが無い!!」
兄様は声を張り上げて叫んだ。
僕だってそう思う。おばさんはそんな人じゃない。
「それがあるんだよ。奴隷って言っても色々ランクがあって見栄えがするほうが高く売れるんだ。
だからやせっぽちの孤児を引き取ってはたらふく食わせ、最後の仕上げに子供に良く似合う服を買い与えて着せるんだ。
その頃にはガキはすっかりババアを信用しているから、与えた菓子に睡眠薬がたっぷり入っているなんて思いもしない。
事がある夜には泊り客にも睡眠薬入りの飲み物を振舞って、従業員が帰っている夜中に裏から袋詰めして運び出すんだ。
朝になったら従業員には『子供らは新しい養い親に貰われていった』と説明してるらしいぜ?」
男はこういうことには慣れているようで、よどみなく説明した。
「ん……兄様……? もう朝ですか?」
兄様に起こされていつものように幸せに目覚めると、そこは見知らぬ場所だった。
薄暗くて、じめじめしている。
おばさんの宿の自分の部屋にいたはずなのに、いったいここはどこなのだろう?
起き上がろうとして、鎖のじゃらりという音に気がついた。
ギョッとして辺りを見渡すと、近くには数人の子供が鎖につながれたままうなだれていた。
「何だかよくわからないが、俺たち……さらわれて売られてしまったようなんだ」
「ええっ!!」
目覚めるなり衝撃の発言を聞いて、僕は思わず叫んだ。
以前、城の地下神殿に兄様が『すかぁと』を持ってきて下さったことがあった。
とても綺麗な色のついたお衣装だったけど、それを着て外の世界に行ったらさらわれる……とおっしゃったので渋々あきらめて『ずぼん』にはきかえた。
その後も兄様が『弟』であることを僕に望んでらっしゃったので、ずっと『ずぼん』で過ごし、昨日おばさんが下さったのもさらわれることを心配してか、やはり『ずぼん』だった。
なのに何故?
「……やっぱり外の世界は怖いです……どうして売られてしまったのですかぁ……?」
涙目になりながら兄様に問うと、
「……教えてやろうか?」
と牢の外から男の声がした。
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「お前たちのいた宿の主人のミランダって奴はとんだ悪党でよ、身寄りの無い子供を騙してはこうやって売り飛ばすんだ。可哀想になァ」
男は僕らをからかうかのように言った。
「嘘だ!!
だっておばさんはいつも親切だったし、俺たちに服まで買ってくれたんだ!!
最初から売り飛ばすつもりなら、そんな事するはずが無い!!」
兄様は声を張り上げて叫んだ。
僕だってそう思う。おばさんはそんな人じゃない。
「それがあるんだよ。奴隷って言っても色々ランクがあって見栄えがするほうが高く売れるんだ。
だからやせっぽちの孤児を引き取ってはたらふく食わせ、最後の仕上げに子供に良く似合う服を買い与えて着せるんだ。
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事がある夜には泊り客にも睡眠薬入りの飲み物を振舞って、従業員が帰っている夜中に裏から袋詰めして運び出すんだ。
朝になったら従業員には『子供らは新しい養い親に貰われていった』と説明してるらしいぜ?」
男はこういうことには慣れているようで、よどみなく説明した。
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