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リオン編 友達
リオン編 友達5
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贄は魔獣だけ……囚われているのは、汚き魔獣だけと信じていた。
しかし僕達クロス神官そのものが、国民にとって『贄』であり『虜』であった。
里で仲良くしてくれた皆だって、僕が国を守る『クロス神官』だと知ったなら、城に戻って、贄として暮らすことを望んだだろう。
王や王子だって、尊敬すべき対象でもなんでもない。
国の役に立たない王子なら、一方的に殴っていたぶってもかまわない。
なんなら殺してもかまわない。
自分達を守らせるために使う『ただの道具』だと国民は捉えていたのだ。
どれほど僕らが頑張っても、そこに彼らからの感謝など無い。
だからそれを知られぬよう王は、クロス神官を地下に閉じ込めねばならなかったのだ。
外の無邪気な悪意から守るために。
クロス神官たちを悲しませないように。
僕は代々のクロス神官が、どれだけその身を削ったのか知っている。
身を苛むような精度の高い祈りは、人であるクロス神官の心身を著しく傷つける。
でも敬愛する『王』と『守るべき臣民』のために、あの閉じた世界で僕らは人々の幸せだけを喜び祈り続けてきた。それなのに。
……憎かった。
確かに外の世界は恐ろしい。
エルシオンには『善なる人々』が住んでいるはずなのに、何故そんなに恐ろしいのか僕にはわからなかった。
外の世界は『善』であって『善』ではない。
臣民は、王やクロス神官を踏み台にして得た幸せを『当然の権利』と考えている。
そんなものが真の善なわけがない。
一見善であるように見えても――――それはただの偽善なのだ。
しかし僕達クロス神官そのものが、国民にとって『贄』であり『虜』であった。
里で仲良くしてくれた皆だって、僕が国を守る『クロス神官』だと知ったなら、城に戻って、贄として暮らすことを望んだだろう。
王や王子だって、尊敬すべき対象でもなんでもない。
国の役に立たない王子なら、一方的に殴っていたぶってもかまわない。
なんなら殺してもかまわない。
自分達を守らせるために使う『ただの道具』だと国民は捉えていたのだ。
どれほど僕らが頑張っても、そこに彼らからの感謝など無い。
だからそれを知られぬよう王は、クロス神官を地下に閉じ込めねばならなかったのだ。
外の無邪気な悪意から守るために。
クロス神官たちを悲しませないように。
僕は代々のクロス神官が、どれだけその身を削ったのか知っている。
身を苛むような精度の高い祈りは、人であるクロス神官の心身を著しく傷つける。
でも敬愛する『王』と『守るべき臣民』のために、あの閉じた世界で僕らは人々の幸せだけを喜び祈り続けてきた。それなのに。
……憎かった。
確かに外の世界は恐ろしい。
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外の世界は『善』であって『善』ではない。
臣民は、王やクロス神官を踏み台にして得た幸せを『当然の権利』と考えている。
そんなものが真の善なわけがない。
一見善であるように見えても――――それはただの偽善なのだ。
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