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リオン編 救い
リオン編 救い1
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死の世界は、ただただ深い闇だった。
気がついたら僕はそこに居た。
指一本動かす事すら出来ない。声も出ない。
なのに『僕が』しゃべる言葉が聞こえる。
「離せ、人間」
凍てつくように冷たい、憎悪のこもった声。
いったい誰に向かって喋っているのだろうか?
「……リオン?」
今度は兄の声が聞こえた。
兄様は今、僕に向かって語りかけて下さっているようだ。
さっきみたいに恐怖の色をにじませているわけではなく、僕を心から心配し、嘆いて下さっていることがわかる声。
もう死んでしまったと言うのに、その声を聞いただけで心が激しく掻き乱れた。
兄様を残して逝ってしまうのは、本当はとても心残りだった。
けれど僕は、兄様が幸せだったらそれで良い。
たとえ自分が死ぬことになろうとも。
兄様……どうぞ、悲しまないで下さい。
そうしんみりしていたら、
「誰が『地魍霊』だ。失敬なっ!!! 我が名は魔獣ヴァティール。
強く気高く誇り高い生き物だッ!!」
という『僕の怒鳴り声』が聞こえた。
???
もちろん僕が喋っているわけではない。
僕の心はここにある。
では、あの声の主は……?
しばらく考えたあと、不意に気がついた。
ビックリしすぎて混乱してしまったけど、声の主は『魔獣』を名乗っていた気がする。
ああ……あれはきっと……僕の中で眠っていた『魔獣』だ。
魔獣が僕の体を使ってしゃべっているのだ。
なんということだ。
兄様は僕の中の魔獣に怯えていた。
だから僕の命ごと魔獣も仕留めたつもりだった。
でも、それは失敗していた。
魔獣が僕の口を使って、汚い言葉を吐き出していく。
そして高潔なるアースラ様を罵り――――――故国エルシオンが滅んだことを告げた。
気がついたら僕はそこに居た。
指一本動かす事すら出来ない。声も出ない。
なのに『僕が』しゃべる言葉が聞こえる。
「離せ、人間」
凍てつくように冷たい、憎悪のこもった声。
いったい誰に向かって喋っているのだろうか?
「……リオン?」
今度は兄の声が聞こえた。
兄様は今、僕に向かって語りかけて下さっているようだ。
さっきみたいに恐怖の色をにじませているわけではなく、僕を心から心配し、嘆いて下さっていることがわかる声。
もう死んでしまったと言うのに、その声を聞いただけで心が激しく掻き乱れた。
兄様を残して逝ってしまうのは、本当はとても心残りだった。
けれど僕は、兄様が幸せだったらそれで良い。
たとえ自分が死ぬことになろうとも。
兄様……どうぞ、悲しまないで下さい。
そうしんみりしていたら、
「誰が『地魍霊』だ。失敬なっ!!! 我が名は魔獣ヴァティール。
強く気高く誇り高い生き物だッ!!」
という『僕の怒鳴り声』が聞こえた。
???
もちろん僕が喋っているわけではない。
僕の心はここにある。
では、あの声の主は……?
しばらく考えたあと、不意に気がついた。
ビックリしすぎて混乱してしまったけど、声の主は『魔獣』を名乗っていた気がする。
ああ……あれはきっと……僕の中で眠っていた『魔獣』だ。
魔獣が僕の体を使ってしゃべっているのだ。
なんということだ。
兄様は僕の中の魔獣に怯えていた。
だから僕の命ごと魔獣も仕留めたつもりだった。
でも、それは失敗していた。
魔獣が僕の口を使って、汚い言葉を吐き出していく。
そして高潔なるアースラ様を罵り――――――故国エルシオンが滅んだことを告げた。
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