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リオン編 異変
リオン編 異変3
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叫び声を上げてうずくまる兵士に気を取られている兄様の後ろから、別の兵士が襲い掛かった。
あれは兄様に避けられる距離ではない。
僕は一息に距離を詰め、兵士の首を切り落とした。
お優しいアースラ様の『お教え』の通りに。
気高きアースラ様のご遺文は、クロス神官を降りた僕であっても絶対に守らねばならない。
たとえ虫のごときアレス兵相手であってもだ。
一撃で殺すなら、首を落とすか心臓をつぶすのが一番適している。
僕は、品性のかけらも無い顔のついている首を落とすほうを選んだ。
あっても仕方ないと思ったからだ。
吹き上がる血飛沫の向こうに、兄様のお姿が見えた。
やっぱり兄様はお美しいなぁ。こんな時でさえそう思う。
しかし兄様は、まだ動こうとしない。
敵兵たちが迫ってきているというのに。
そこで僕はエラジーをひらめかせ、訓練の的を突くときの動きを思い出しながら人体の急所を次々と突き刺し、6人の兵士を殺した。
目隠しをしたまま狼たちを相手にすることを思えば、さしたる敵ではない。
でも、それだけでは終わらない。
僕の戦いを見た他の兵士たちが、数十人の単位で押し寄せてきたのだ。
さすがにこれだけの数の敵を相手としたことはない。
でも兄様を守るためなのだから、怯んだりしてはいけない。
僕はすっと背筋を伸ばし、多人数を相手にするのに最も効率的な構えを取った。
それからのことは、よくわからない。
なぜこうなったのかも、わからない。
覚えているのは、悪夢のような光景。
すべての敵を切り伏せて……僕は兄様に手を差し伸べた。
きっと褒めて下さるだろうと信じて。
それなのに、兄様は僕の手を振り払った。
そして、ただ一言、
「 離せ 」
…………とおっしゃたのだ。
兄様はまるで『化け物』でも見たかのような顔をして僕を見た。
胸がズキンと痛んだが、問いかける事は出来なかった。
新たな敵兵が現れたのだ。
僕はまた戦った。
兄様を守るために。兄様に褒めていただくために。
でも兄様は、褒めては下さらなかった。
ただ獣のように咆哮をあげ、そのまま意識を手放した。
あれは兄様に避けられる距離ではない。
僕は一息に距離を詰め、兵士の首を切り落とした。
お優しいアースラ様の『お教え』の通りに。
気高きアースラ様のご遺文は、クロス神官を降りた僕であっても絶対に守らねばならない。
たとえ虫のごときアレス兵相手であってもだ。
一撃で殺すなら、首を落とすか心臓をつぶすのが一番適している。
僕は、品性のかけらも無い顔のついている首を落とすほうを選んだ。
あっても仕方ないと思ったからだ。
吹き上がる血飛沫の向こうに、兄様のお姿が見えた。
やっぱり兄様はお美しいなぁ。こんな時でさえそう思う。
しかし兄様は、まだ動こうとしない。
敵兵たちが迫ってきているというのに。
そこで僕はエラジーをひらめかせ、訓練の的を突くときの動きを思い出しながら人体の急所を次々と突き刺し、6人の兵士を殺した。
目隠しをしたまま狼たちを相手にすることを思えば、さしたる敵ではない。
でも、それだけでは終わらない。
僕の戦いを見た他の兵士たちが、数十人の単位で押し寄せてきたのだ。
さすがにこれだけの数の敵を相手としたことはない。
でも兄様を守るためなのだから、怯んだりしてはいけない。
僕はすっと背筋を伸ばし、多人数を相手にするのに最も効率的な構えを取った。
それからのことは、よくわからない。
なぜこうなったのかも、わからない。
覚えているのは、悪夢のような光景。
すべての敵を切り伏せて……僕は兄様に手を差し伸べた。
きっと褒めて下さるだろうと信じて。
それなのに、兄様は僕の手を振り払った。
そして、ただ一言、
「 離せ 」
…………とおっしゃたのだ。
兄様はまるで『化け物』でも見たかのような顔をして僕を見た。
胸がズキンと痛んだが、問いかける事は出来なかった。
新たな敵兵が現れたのだ。
僕はまた戦った。
兄様を守るために。兄様に褒めていただくために。
でも兄様は、褒めては下さらなかった。
ただ獣のように咆哮をあげ、そのまま意識を手放した。
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