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リオン編 異変
リオン編 異変1
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季節が変わり、もうナツとなっている。
いつも冷やりとしていた地下神殿にいたので、暑いのは少し苦手だ。
けれど、そんなときはちょっぴりだけ冷気の魔法を使ってみる。
いや、私欲で使ってるわけじゃないから!!
兄様も暑そうだったし、快適な環境を提供するために、ちょびっと使っただけだからっ!
そうして過ごすうちに、兄様と一生懸命耕した畑で、村の名物農作物『シューサー』が小さな芽を出した。
ささやかなその出来事を兄様と一緒に喜んだ夜、異変は起こった。
夜中だというのに空がやけに赤い。
外に出てみると町が、城が燃えている。
もうもうと上がる煙は、数十キロル離れたこんなところまでたなびく勢いだ。
僕らは急いで、すぐ近くの里に行った。
不吉に夜空を染め上げる赤が、魔獣を体内に飼ってるわけでもない兄様の目でも識別出来るぐらいに道を照らす。
そうして風は、血の匂いを運んでくるのだ。
里には、覚えのある他国の兵士が居た。それも、かなりの人数だ。
特徴のあるその鎧の形状は、神殿にあった歴史書の挿絵のアレス兵にそっくり。
奴らはアレス帝国からやってきたに違いない。
アレス帝国は、始祖王シヴァ様と大魔道士アースラ様の『最大の敵』だった。
その国の兵達が、善良なるエルシオンの領民たちを殺している。
――――許せない。
かあっと体が熱くなる。
親切な里人たちをこんな風に無残に殺すこいつらは、アースラ様がお遺しになられた本に書いているとおり『害虫』だ。
早く『駆除』しなくては。
300年前、アースラ様達がお創りになられたエルシオン王国の民を『虫ケラ』呼ばわりし、虐殺したのは、憎きアレス帝国の方だった。
しかし彼らはアースラ様の前に敗れ、絶滅寸前にまで追い込まれた。
にも関わらず、害虫たちはどうやったのか生き延びて、再び国を拡大していったようだ。
増える前に、殺さなくては。
クロスⅦもそこが肝心と仰っていた。
地下神殿の完璧なる防御システムを突破して時々現れる、あの黒くて平べったい害虫と同じく早々に殺さなければならない。
ふと見ると、兄様が懐剣を抜いていた。
そしてアレス兵の大剣を軽くさばいたうえ、相手の利き手を蹴り上げ剣を弾き飛ばしていた。
さすが兄様! お強いっ!!
それに、戦う姿も綺麗だな~~。
あまりのお美しさに、ついうっかり見とれているうちに、兄様の剣は兵士の腕に食い込んだ。
アレ?
とどめを刺せるような場所でなくても良いのかな?
でも肉と腱が切れ、血が派手に飛び散ってゆく。
「ぐあああああ!!!」
兵士が叫び声を上げた。
贄の狼たちも概ねあのように死んでいくけれど、人間もどうやら同じようだ。
いつも冷やりとしていた地下神殿にいたので、暑いのは少し苦手だ。
けれど、そんなときはちょっぴりだけ冷気の魔法を使ってみる。
いや、私欲で使ってるわけじゃないから!!
兄様も暑そうだったし、快適な環境を提供するために、ちょびっと使っただけだからっ!
そうして過ごすうちに、兄様と一生懸命耕した畑で、村の名物農作物『シューサー』が小さな芽を出した。
ささやかなその出来事を兄様と一緒に喜んだ夜、異変は起こった。
夜中だというのに空がやけに赤い。
外に出てみると町が、城が燃えている。
もうもうと上がる煙は、数十キロル離れたこんなところまでたなびく勢いだ。
僕らは急いで、すぐ近くの里に行った。
不吉に夜空を染め上げる赤が、魔獣を体内に飼ってるわけでもない兄様の目でも識別出来るぐらいに道を照らす。
そうして風は、血の匂いを運んでくるのだ。
里には、覚えのある他国の兵士が居た。それも、かなりの人数だ。
特徴のあるその鎧の形状は、神殿にあった歴史書の挿絵のアレス兵にそっくり。
奴らはアレス帝国からやってきたに違いない。
アレス帝国は、始祖王シヴァ様と大魔道士アースラ様の『最大の敵』だった。
その国の兵達が、善良なるエルシオンの領民たちを殺している。
――――許せない。
かあっと体が熱くなる。
親切な里人たちをこんな風に無残に殺すこいつらは、アースラ様がお遺しになられた本に書いているとおり『害虫』だ。
早く『駆除』しなくては。
300年前、アースラ様達がお創りになられたエルシオン王国の民を『虫ケラ』呼ばわりし、虐殺したのは、憎きアレス帝国の方だった。
しかし彼らはアースラ様の前に敗れ、絶滅寸前にまで追い込まれた。
にも関わらず、害虫たちはどうやったのか生き延びて、再び国を拡大していったようだ。
増える前に、殺さなくては。
クロスⅦもそこが肝心と仰っていた。
地下神殿の完璧なる防御システムを突破して時々現れる、あの黒くて平べったい害虫と同じく早々に殺さなければならない。
ふと見ると、兄様が懐剣を抜いていた。
そしてアレス兵の大剣を軽くさばいたうえ、相手の利き手を蹴り上げ剣を弾き飛ばしていた。
さすが兄様! お強いっ!!
それに、戦う姿も綺麗だな~~。
あまりのお美しさに、ついうっかり見とれているうちに、兄様の剣は兵士の腕に食い込んだ。
アレ?
とどめを刺せるような場所でなくても良いのかな?
でも肉と腱が切れ、血が派手に飛び散ってゆく。
「ぐあああああ!!!」
兵士が叫び声を上げた。
贄の狼たちも概ねあのように死んでいくけれど、人間もどうやら同じようだ。
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