滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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リオン編   兄

リオン編   兄2

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 兄様と過ごす間にも僕は成長し、10歳の誕生日にはクロスⅦから『魔獣』を引継いだ。

『善の結界』を張る時は体への負担を減らすため、神殿内の祭壇を経由して魔獣の力使う。
 だから、僕が魔獣を引継いでもクロスⅦが結界を張る時困る……ということはない。

 神殿内であれば、どちらの体の中に魔獣がいても同じ。
 クロスⅦは、変わらず魔獣の力を使って『善の結界』を張る事ができるのだ。
 そのため基礎体力が出来た時点で、早めに後継者に魔獣を渡すこととなっている。

 ただ『善の結界』と違って、戦闘魔術の方はそうはいかない。
 祭壇を通して術を展開する事が出来ないのだ。

 それも、早めに魔獣を後継者に引き渡す理由の一つと聞いている。

 戦闘魔術は前述の理由により体への負担が『善の結界』よりはるかに高い。
 それゆえ徐々に慣らしながら、段階的に魔獣の力をコントロールする方法を学んでいかねばならない。
 もし結界が破られたときは『僕らクロス神官も』アースラ様のように外に出て、魔獣の力を使って敵と戦うからだ。

 だから、真剣に学ばねば。

 でも建国以来、僕ら神官が『外』へ行くほどの惨事は巡って来なかった。
 アースラ様の行き届いた配慮により、国は約300年間もうまく回っている。

 惨事と言えば―――――――あのひらべったい黒い虫が大発生した時ぐらいだったとクロスⅦに聞いている。(あれはあれでクロスⅦ的には大惨事だったらしい)

 ともあれ僕は、仮継承ではあったが晴れて『神官魔道士』となれた。
 本当に誇らしい。

 でも、兄様は僕を『クロスⅧ』と呼ぶことは一度も無い。
 僕に与えて下さった『リオン』という名で、いつも優しく呼んでくださる。

 あれ程クロスⅧと呼ばれる日を待ち望んでいたのに、今は兄様に『リオン』と呼んでいただけることが嬉しくてたまらない。

 話し込みすぎて課題を果たせずクロスⅦに仕置きされた事もあったが、アースラ様に施された加護のおかげで怪我なども早く治る。

 僕は兄様のためになら、どんなことでも耐えられた。
 つらいことなど僕に存在しない。

 兄様が会いに来て下さるから――――――――僕は、本当に『幸せ』だった。
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