175 / 437
第22章 許し
8.許し
しおりを挟む
俺はあまりの内容の告白に言葉を失った。
「ヴァティール様だってそうよ。
エルだって本当はわかっているんじゃないの?
あの方は口は悪いけど、心は優しいわよ。
私が熱を出したときは……ずっと寝ないで看病して下さった。
額に置かれた手があんまり冷たくて、『ああこの方は本当に人間ではないんだ』って思ったけど……それでも嬉しさの方が勝ったわ。
エリス姫の事だって、誰が何を言おうとがんとして守った。
『アレス帝国が何をしようが子供のエリスには関係の無い話だ』……って。
私はあんな優しい方を見たことが無い。
ねえエル。
リオンはあの時死んだのよ。
あなたと国を守って死んだ。
呪いによって生き返るっていうのはわかったけど、そんな事は本当は『人間』にはあってはならないのよ。
だから、酷なようだけどもう諦めて。ね……?」
「……っリオンは死んでなんかいない……!!」
「死んだのよ!!」
「死んでない!! 死んでなんか……」
泣きたくないのに、涙があふれた。
否定しなくては。
リオンは生きている。
そう思うのに、心のどこかではアリシアの言葉を認める俺が居る。
『人間』ゆえにリオンは死んだのだ。
呪いから開放されたのだ。
あの地下神殿から出て以来、辛い目にばかり合ってきたリオン。
でも……もう弟は辛い目に合うことも、苦しい思いをすることも、俺のために人を殺すこともない。
それは残酷な形ではあったけれど、もしかしたら神がリオンに与えた『許し』なのかもしれない。
涙を流し続ける俺をアリシアは優しく抱きしめてくれた。
「ヴァティール様だってそうよ。
エルだって本当はわかっているんじゃないの?
あの方は口は悪いけど、心は優しいわよ。
私が熱を出したときは……ずっと寝ないで看病して下さった。
額に置かれた手があんまり冷たくて、『ああこの方は本当に人間ではないんだ』って思ったけど……それでも嬉しさの方が勝ったわ。
エリス姫の事だって、誰が何を言おうとがんとして守った。
『アレス帝国が何をしようが子供のエリスには関係の無い話だ』……って。
私はあんな優しい方を見たことが無い。
ねえエル。
リオンはあの時死んだのよ。
あなたと国を守って死んだ。
呪いによって生き返るっていうのはわかったけど、そんな事は本当は『人間』にはあってはならないのよ。
だから、酷なようだけどもう諦めて。ね……?」
「……っリオンは死んでなんかいない……!!」
「死んだのよ!!」
「死んでない!! 死んでなんか……」
泣きたくないのに、涙があふれた。
否定しなくては。
リオンは生きている。
そう思うのに、心のどこかではアリシアの言葉を認める俺が居る。
『人間』ゆえにリオンは死んだのだ。
呪いから開放されたのだ。
あの地下神殿から出て以来、辛い目にばかり合ってきたリオン。
でも……もう弟は辛い目に合うことも、苦しい思いをすることも、俺のために人を殺すこともない。
それは残酷な形ではあったけれど、もしかしたら神がリオンに与えた『許し』なのかもしれない。
涙を流し続ける俺をアリシアは優しく抱きしめてくれた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。


紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる