滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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第18章 戦火

8.戦火★

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 ひとしきり笑った後、ヴァティールは赤い瞳で俺の方を振り向いた。

「よう、エル。久しぶりだなァ! ずいぶん背が伸びたんじゃないか?」

 アリシアが座り込んだまま引きつって言う。

「……アレは一体なんなの? アレもあんたの弟なの?」

 答えられずに黙り込む俺の代わりに、魔獣が口を開いた。

「違うな女ァ。ワタシは人間などではない。
 そしてエルは、ワタシの主人だ。
 と言ってもろくに使いこなせもしない能無しだがなァ。
 糞餓鬼が死んで、やっと出て来れたぜッ!」

 そう言って伸びを一つする。

「糞餓鬼のかけてた『邪悪で陰湿な魔縛』もほとんど解けたし、久しぶりに伸び伸び出来て良い気分だ。
 おいエル。風呂の用意だ。それから新しい服もだ。
 女! 兵に命じて城門を開けさせろ。今すぐにだ!!」

 ヴァティールはがなりたてるが、アリシアも兵たちも足がすくんで動けなかった。

「ち。手間のかかる奴等だなァ」

 ヴァティールはあきれたように言いながら頭をかくと、手のひらを城門に向けた。


*おわび

先日分の「4.戦火」が抜けておりました。
申し訳ありません。
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